第10話「父と母に」

この命にどれだけの価値があるか

どれだけの風を受けて来たか

母から受けた恩恵を

父が残したまなざしを

ただ強く感じ


だけど今の僕は

自立して道を失い

路頭に迷っている

この先数百と出会う運命に宿敵に

果たして自身の器が壊れないか

そう靡いてしまう


あの教わった優しさ

感じたぬくもり

僕は愛されていた

だから外の風に吹かれて

こんなにも守られていたんだと

知って


一人じゃどうしようもないんだと

夢に破れた


もういっそ過去に戻って

もう一度母と父の言葉を聞きたいと思ったが


もう家族は居ない

僕は一人で生きる他ない

この冷たい雨風に打たれ

震え上がる現実をさも強く

生きねばいけない


ああ。本当に苦しい

涙だって痛い

ごめんね

知ったようになって息まいて


ぼくってこんなにも小さかったんだ

世界ってこんなにも大きかったんだ


今、この身に降りしきる無力感が

僕を殺そうとする

だけど生きるよ


生きて、誇って見せる

父と母が教えてくれた

幸せを掴めるまで


僕は諦めないよ

それじゃ、行ってくる。


行ってきます。

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