第17話 空中ブランコ

 ドラムロールのあと、上空にスポットライトが当たり右端の飛び台に立つアルフレッドの姿が照らし出される。白のレオタード姿のアルフレッドは、客席に爽やかな笑顔で両手を振って見せた。


 上空15Mの端と端に飛び台があり、その途中に2本のロープにぶら下がったバーが3本間隔を開けて設置されている。


 アルフレッドは最初飛び台を大きく2回振り子のように揺らして弾みをつけ、軽やかに宙に飛び出し1本目のバーに飛び移った。バーが弧を描いて右に振り切る前に両手を離し2本目のバーを掴む。観客は目と一緒に頭を動かしながら空を自在に飛び回る鳥人の如きアルフレッドの姿を追っていた。バーから手を離し飛び立った後今度は膝を抱え反時計回りに宙返りを2度して3本目のバーを掴むと、右端の飛び台に飛び乗った。最初は比較的難易度の低い技だが、徐々に難しい技に移行する。


 アルフレッドは次に、右の飛び台から1本目のバーに飛び移ると時計回りに宙返りを2回して2本目のバーに移り、手を離すと身体を縦にしてバレエのように空中で2度回転し3本目のバーを掴んだ。元の飛び台に帰ってきた彼を大きな拍手と歓声が包む。

 

 次にアルフレッドの代わりに右端の飛び台にミラーが現れた。ミラーは連続の宙返りでバーからバーに飛び移ったあと、3本目のバーに2本の脚で立ち跨いで座ったかと思うと、バーに足を掛けて逆さ吊りの体勢でブランコを揺らして見せる。


 観客から驚きの声が上がる。


「すごいね、二人とも」


 隣のケニーに声をかける。


「ああ、高いところの技は観ていて怖いけど引き込まれるな」


 ケニーも夢中で観ていたようだ。宙を自由に飛び交う二人は、まるで銀河の河原を飛び交う白鷺のようだ。


 次の技は最高難易度の目隠し空中ブランコだ。


 左の飛び台にフライヤー(飛び手)のアルフレッドが再登場し、黒い布を目に巻く。右の飛び台にキャッチャー(受け手)のミラーが待っている。


 やがてアルフレッドが飛び台から1本目のバーに飛び移り、2回の宙返りをして2本目のバーに飛び移る。タイミングを測り、ミラーが飛び台から近いバーに宙返りで飛び移り膝をバーにかけて逆さ吊りになると、ブランコを左側ーーアルフレッドが飛んでくる方向に動かして、2本目のバーから飛び立ったアルフレッドの両手を自分の両手でがっしり掴んだ。

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