5 温泉旅館特有の謎スペース
「中々良い部屋だね。見ろ白瀬君。温泉旅館特有の謎スペースからの眺めも良い」
旅館のチェックインを済ませた後、部屋に入り荷物を置いた所で、少しテンション高めに霞は言う。
このところずっと元気がなかったので、早速そういう反応をしてくれたのを見るとどこか安心できる。
やはり温泉に限らず、旅は良いものだなと思う。
「ほんとですね。お、この椅子いい感じ。広縁結構好きなんでありがたいですね」
後場合によってはこっちで眠ろうとも思っているので、椅子が座りやすいのはありがたい。
(……というかやっぱ駄目だろ同室で一緒に寝たら。勿論襲ったりはしねえけど)
……もしかしたらこういうケースに対処する為に、広緑はあるのかもしれない。
「広緑……その椅子にそんな名称があるのかい?」
「いやいや椅子じゃなくてこのスペースですよこのスペース」
「はえーこの謎スペースそんな名前あったんだ。というか良く知ってるね。日本人全体でも1%位しかこの謎スペースの名前知らないだろう」
「いやいや多分三割位は知ってますよ」
「いやいやいや、三割も絶対無いね。ぜぇったいに無いね」
「なんでそんなムキになってるんですか」
「いや三割も知ってて私が知らなかったら、なんか負けた気になるだろう」
「いや誰にですか」
「とにかく此処は折衷案で一割と行こうじゃあないか」
「一割なら良いんですね……」
その感覚が良く分からない。
とまあそんなやり取りを交わした後、備え付けのお茶とお菓子で一息付き、それから行動を開始した。
旅行であり仕事でもあるこの旅において、どちらにも必要になってくる事をやりにいく。
「じゃあ何か分かった事とかあったら、後で教えてくれ」
「ええ。でもまあ難しい事考えずにゆっくりしましょう。では」
そう言って霞と一時的に別れを告げ男湯の脱衣所へ。
森崎の言っていた、異常に元気になる温泉。
……その詳細をこれから調べに行く。
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