第16話謝罪と反省

皆帰宅する時間だ。夕日が教室内を明るく照らす。


教室を出ていく生徒の足音が聞こえる。



くっそ、あゆみのやつ…自己中な癖に…痩せ我慢して、本当は助けに来て欲しいだろうに。


僕は大川に対する怒りとあゆみを救えない無力さで机を叩いた。


「あゆみを探してくる。場所は分からないけど、近くにいるかもしれないし。」



「辞めろ、そんなことしたら、お前が危ない。2つの意味でな。」


「滝川さんを助けたとしよう。そうしたら、絶対に滝川さんは、お前に執着するぞ。

お前は彼女いるんだから、その彼女も危険になる。」


「お前が大川にやられる可能性もある。ここは行くな。」


その優しさが、時には武器にもなるんだぞ。


「お前が優しいのは、分かった。妹が惚れるのも分かるよ。

だが、ここは警察に連絡するべきだ。」



「青木…そうだな。警察に連絡するよ。冷静だな、青木は頼りになる。」


「よせやい、お前が女じゃなくて良かったよ。間違いなく惚れてたろうからな。」


「まぁこんな時に冗談はさておき、妹もあの顔だろ? ストーカーに狙われた事あったからな。冷静なのは、その経験だ。」



「中学の頃の話だけどな。だからお前に中学の頃会いに行かなかったんだ。妹は、お前に身の危険が及ぶと思ってな。」


そうだったのか。今は大丈夫なのかな?


でも僕はその理由は、本当じゃないと思う…会いに来ない理由に思い当たる節がある。


青木が付き合わないかと何度も聞いて来たのは、僕が怖い、会いたくない。そう彼女に伝えた日から、会っていない。



僕は、あゆみに怖い思いをされたことで思い出した。



「妹ひぇ。」

中島さんがビクッと声を震わせて言った。


そういや、中島さんと、円香ちゃん幼馴染だったな。

何かされたのだろうか?



「私…桜に相談してみる。桜なら、大川さんの事止められるかもしれないし。」

中島さんが手を顎に当てて言う。



それを聞いて、安堵感が湧いて来た。それだけ綾瀬桜の悪知恵と言うか、そう言う目に見えないものに対する期待感からだ。


僕は警察に連絡し、事の経緯を説明した。意外にもきちんと聞いてくれた。


どうやら、誰かその前に、路上で大騒ぎしてる人がいたと通報があったようだ。


多分それが大川だろう。


僕は、何事もないことを願いつつ帰路に着く。


後日あゆみから連絡が来た。



「本当やばかった。けどパパに相談乗ってもらってしばらく入院して、ボディーガードつけてもらうことにした。」


さすが社長の娘。ボディーガードか。


「なるほど、それなら安全だな。」

僕は胸を撫で下ろした。


「まぁね。面会謝絶で、スマホも取り上げだから、西条にしばらく会えない。あいつが、いつ襲って来るか分からないからね。」


明るい声で言ってるけど…かなり事態は深刻そうだな。



「なんか桜がなんとかするって聞いたから、それまで身を隠す。会えるまで浮気しないでね。」


浮気…まだそんなこと言ってるのか。あんな被害にあったのに、少しも成長しないんだな。あゆみは。



「いや、もう僕彼女出来たから、浮気とかそんなの成立しないから。」



「それから、あゆみ気をつけてな。」




「…ふーん。もう? 中島?」



「いや、和田さん。」


「ふーん、なら良いや。どうせそのうち別れるでしょ。」


嫌なこと言うな。この子は。


まぁ入院してる間は、悪いけど、僕と和田さんの安全は保障された。


和田さんともきちんとデートも出来る。


「ごめんね、西条…心配かけて。それと色々迷惑かけた。今回のことでちょっと反省してる。」


あゆみが声を詰まらせながら謝罪した。

 

はは、成長してたか。良かった、まだあゆみは救いのある子だった。


「ほんとだよ、ちゃんと反省しろよ。」

僕は涙を目に溜めて言った。



「うん…ありがと。」



「でもなんで、中島さんは駄目で和田さんは良いの? そんなに和田さんと仲良いの?」


疑問に思い聞いた。そうだ! ついでになんで極端に考えるのかも聞きたい。



「両方駄目に決まってるでしょ! 西条に気を遣って言っただけよ、鈍感。」


あーそうゆうこと。


「そろそろ切るね。じゃあまたね。好きよ。」


そう言ってあゆみは電話を切った。


なんか急かされた声が聞こえたな。

理由は聞けず仕舞いだったけど。


それにしてもあゆみ…なんか…ツンデレになってない?




青木円香の視点



教室内の声が騒がしい。


「最近滝川先輩入院したらしいよ。なんか精神的にやられたって。」



「どこの病院か分からないんでしょ? 何があったんだろ?」


話し声が聞こえた。


私はそれを聞いて、滝川先輩に言い過ぎたのかと思った。


そんなに精神をやられるほど酷いこと言ったかな? 


その思いがある考えを持たせた。



私もしかして、滝川先輩を入院させるほどの事言ってたんだ。


これって…いじめ?


私いじめをした? 悪い想像が襲って来る。


円香、君あゆみをいじめたんだ? 最低だな、いじめするような子とは、思わなかったよ。


はぁぁ…西条先輩違うんです! そんなつもりなかったんです。


涙がポロポロ落ちて来る。


お見舞いに行こう。あーでも、入院先分からないや、友達私いないし。


まっいっか、西条先輩になにかあったわけじゃないし。


退院したら、謝ろう。



後日お兄ちゃんから、大川律って人から、ストーカーされて入院したと聞いた。


なんだ、私が原因じゃなかったのかー。


私はほっと胸を撫で下ろした。

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