第15話ヤンデレの恐怖


大川律の独白



何故? 急に連絡を断たれた。滝川さん…いや、あゆみと、西条と言う彼氏のいざこざの後に急に彼女は、変わった。



どう言うことだ? 意味が分からない。

計画は、完璧なはずだった。彼女と寝たんだ。


良い感じだった。もう完全に僕のモノになっていたはず。


それが…何故? 毎日…毎日彼女に捨てられた理由を考えている。


いつしかずっと一日中彼女のことしか考えられなくなった。



最初は単に彼女を復讐の相手としか見てなかった。それが


いつの間にか彼女の微笑んだ顔、彼女の声が僕の心を支配していた。



僕の日常が彼女なしには考えられないほど、僕は狂い始めている。


彼女への愛が強迫観念へと変わり、全てを彼女に捧げることしかしか考えられなくなっていたのだ。



それもそうだ。親子揃って捨てられた。親には、捨てられる理由がはっきりあっても、僕が捨てられる理由なんて、何もない。


彼氏を見たが、僕の方が全て優ってるいるはず。桜に聞いたら、まだあゆみは、彼氏に夢中だと言った。


現実的にあり得ないだろう。


彼女に捨てられたくない。嫌だ。


あゆみに会いたい。


そうだ、僕はあゆみの彼氏なんだから、会いに行くのは当たり前だった。

 




あゆみの視点


「あゆみなんで、連絡くれないの?」

気味の悪い顔で大川が学校の門の前で待ち伏せしていた。


周りは、あの人かっこいいと騒ぎ立ていた。

滝川さんの彼氏かな? と言う声まで聞こえた。



「なによあんた。全く合コン連中みんなしつこいわね。やっぱり参加しなきゃ良かった。」



「ああ、連絡しない理由? 好きだったけど、冷めたから、捨てたの。納得した?」

私は説明して言った。




「好きだから、連絡しないのか。そうか、僕に会いに来て欲しいからか。あゆみも意地悪なところあるな。」


不気味表情をして大川は言った。



「はぁ? あんた話し通じてる? ちゃんと言葉分かりますか? ってか、あゆみって呼ばないでくれる? 気持ち悪いから。」

 



「分かるよ。あゆみの言葉。心で通じ合ってるからね。さて、今日どこに遊びに行く? 僕が決めて良いかな?」


何言ってるのこいつ? 最近変なのにばっかり絡まれる。それに比例する様に西条に絡まれなくなった。


どういうこと? 何が起きてるの?


「行かないわよ。じゃ。」


そう言って帰ろうとすると、大川が防いだ。



「邪魔なんだけど?」


「あゆみ勝手に行くのはずるいよ。手を繋いで行かなきゃ。」


ひぇ、こいつほんと何言ってんの?

私が気づいてきた、イメージが、周りの反応が。


西条以外どうでもいいけど、西条の耳に入るのは嫌だな。



「分かったわよ。話し合えばいいんでしょ? その代わり人通り多いとこにしてちょうだいね。」


そう言って私は、学校から少し離れた、人通りの多い路上に行った。

人通り少ないとこだと、こいつ何するか心配だから。


途中手を触ってきたので、触んなって、手を振り払った。


「で? 何をして欲しいわけ? 慰謝料? あんた演劇部だから演技でもかましてるの?」

私は本題に入った。お金で解決。これが一番早い。



「お金なんて、僕は質素に暮らしてたからね。それにあゆみと結婚すれば、お金もある程度入ってくるじゃないか。


「無理でも、あゆみとだったら、金なんて特に必要ないよ。」

澄まし顔で大川は言った。


結婚なんてするわけないじゃん。あんたと結婚するイメージしたこと、今じゃ後悔してる。


こんなやつに体を許すなんて、バカだった自分は。



「あのね? あんたに抱かれたこと凄い後悔してる。なんで結婚なんてあり得ないの。」

私は理路整然と言った。



「抱かれたことしっかり覚えてくれてるんだ。僕も覚えてるよ。凄い気持ちよさそうな表情で僕を見つめていたね。」



おえっ、最悪…


「あんた頭おかしいじゃない? 私は後悔してるって言ったの。もう話通じないようだから、帰るわ。」

そう言うと腕を掴まれた。


「あゆみ〜捨てないでくれよ。頼むよ、あゆみ〜。」

そう言って彼は泣きながら言った。


「やだ、捨てる」


「あゆみ〜なんでだよー。あゆみ〜。」


こいつさっきから私の名前連呼しまくってる。


表情を見ると、鬼の様に見えた。


目が完全に逝っちゃってる。

 

「あゆみ〜なんで分かってくれないの? あゆみ〜!」


ちびりそう。



それは、彼のポケットの膨らみに気がついたからだ。

それがもしかしたらナイフかもと、想像させた。



西条からだ。私は無我夢中でスマホの電話ボタンを押した。



「あゆみ? あのさ、前にあった大川って人がなんか変な風になってるって、友達聞いて、気をつけた方がいいよって忠告でかけた。」



「うん、今そいつがここにいる。怖い。」

そう言言うと、大川が私のスマホを奪いに来た。


「誰と話してるんだ、寄越せ。」



「放せ、触んな!」



「大丈夫か?! 今からそっちに行く。今いる場所分かる?」

西条が助けに来てくれる。私は嬉し泣きが止まらなかった。


「好き好き好き好き好き好き」

私は何度も西条に言った。



「ありがとう。西条、でも来たら、西条殺されちゃう。ここは、私がなんとかするから。

心配して電話してくれてありがとう、切るね。」

そう言って私は、このクソ野郎を見据えた。


「西条? そいつにまだ熱あげてるのか、浮気しやがって、そいつ殺すわ。」

聞かれてた。西条の名前を言ったばかりに、彼に危険が及ぶ。



「はぁ? 西条に別れの電話してただけだし、浮気じゃねーし。彼とは、もう2度と会わない。

私は必死に誤魔化した。



「なんだそうか、安心したよ。じゃあ僕と付き合うってことだよね。」

安堵した表情で大川が言った。


「そういうことね。」


私は大川に話を合わせた。  


でも体に触れてごらんなさい。騒いでやる。


こいつを今すぐ、警察に突き出したいのは、山々だけど、まだ大川は、何もしてないから、警察は動かない。


それに警察だと、報復が怖いから。


ふう…パパに話してこいつなんとかしてもらおう。

私はそう決意して、今日だけは、我慢して大川を宥めてやった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る