#04 接着決着⁈

《前回までのあらすじ》

・バカヤロ〜!


 「……そんな恐ろしいことが、私の寝ている間に」

 「悪い人じゃないんだけどね……」

 あれから一日、安藤はなんとか生還していた。

 相川が何故だか分かれ道まで登校中着いてきて、下校になるとどっかから生えてきて、

家まで着いて来させたのだ。

 「なんでバレてるんですか?」

 「通学路が同じ道だったらしくて、偶然立ち止まってたら俺が出てきたって、帰りも同様に」

 「なんの話したんですか?」

 「政治とか……」

 「貴方政治わかるんですか」

 「自民党ってなんだっけ」

 「そのレベル」

 「自慰民主党だっけ」

 「民主主義こわれた」

 

 とそんな中彼女の触覚が逆立つ。


 「これは……この悪魔は……レラジェ!」

 「どんなやつだい」

 「……会って説明した方が早いです」

 「そんなめんどくさいやつなの」

 「とにかく!行きますよ!」

 「待って待って疲れてる疲れてる」



 一方その少し前、例の大型ビルの例の部屋では。

 「いつもこのような方法で?」

 全治したフォカロル、相変わらず表情が全く変わらないバアル、そしてチャラめの大口開けて寝る男がそこにいた。

 フォカロルは何かあったのだろうか、格好が憑依される前の山川のものになっていた。

 「お前らなら完全に模倣できるだろう」

 「いえ、少しは報酬で身を投げ出すような人間にするなど、依代は絞った方が」

 「仕事に価値観を持ち込むな」

 「……はい」

 そしてバアルは右の手のひらをチャラ男の額にかざす。

 相変わらずの痙攣が起こり、そしてやたら手足をパントマイムのように、空中にひたひたくっつけるような仕草をとって目覚めた。

 「……バアル様に、フォカロル様?」

 「相変わらず、誰にでも様をつけるんですね、レラジェ」

 「私の術は他人ありきのものです。常に敬意を評しておかねばなりませんゆえ」

 「仕事、の前にグラシャ=ラボラスとダンタリオンを無力化しろ。そのあとしっかり仕事に励め」

 「えぇ?」

 「なるほど……中々重大な状況に思われますな。私めにお任せくださいませ」

 「よし行け」

 レラジェはパントマイムを崩さずに、部屋を出ていった。

 「マルコシアスはどうするのですか」

 「放っておけ」

 (……やはり、マルコシアスには失望しているのか)

 そう少し悲しさを覚えたフォカロルだったが、実際は。


 (あいつがいると、この部屋からあの高い音がする……なるべく近づけたくないものだ)


 思ったよりも彼は繊細なようだった。


 一方その少し後近くの公園。

 「悪魔は!どこだ!処す!」

 「昨日の会話はどこいったんですか」

 二人は悪魔の反応を待っていた。

 

 「どうもこんにちは」


 「なんかやたら大きな声が聞こえるぞ」

 「あっ!後ろ!後ろ!」

 「へ?」


 その背後にいたのは、何人もの人間がくっつきあってできている、へんな組体操のような集合体であった。

 その上にチャラ男の影が見える。


 「な、なんだ!これは!なにしてんだ!」

 「私レラジェと申します……グラシャ=ラボラス様に、ダンタリオン様ですね?」

 「チャラ男にしてはやたら上品だ」

 「相変わらずご丁寧ですね、レラジェ」

 「わたくし、使命を果たさなければならないのですが……その前に皆様の無力化を実行せよとの命を王から受けましたので」

 「王って誰だ!」

 「バアルのことです!」

 「あの野郎!なんてことを……」

 「私の使命は人々の接着による記憶の定着……忘れたいことを忘れさせないのが目的です」

 「くっ付いたら色々共有するってことか」

 「そうです」

 「それではいかせていただきます」


 すると組体操が一旦ほどけ、人々が手を繋いだ状態でばっと広がる!


 「あれに触れたらあそこに入れられますよ!」

 「マルチかカルトみたいだ、クソ」

 グラシャ=ラボラスの力を使い、逃げる方法を頭の中で考え、実行する。

 なんとかその広がる人々の輪からは逃げられるものの、全く反撃の手立てがない。

 「初めて冷や汗をかいてんぜ」

 「レラジェを叩けば問題ありません」

 「よし!」

 レラジェのところに移動することを考える———その瞬間。


 目の前に、女子中学生の集団が、手を繋いだ状態で現れた。


 「あ、あぁ……」

 路線変更して安藤は突っ込んだ!

 「何してんの!」

 「(JCには勝てなかったよ……)」

 「心の声が!漏れてる!」

 元の組体操のような形に戻っていく。

 JCがおしくらまんじゅうしている中、彼が中心にいるような形になってしまった。

 「あぁ……いい匂いだ」

 「気持ち悪っ」

 スマホがここ最近で一番震えた。

 「おやおや……やはりオーバーロードは私の能力の影響を受けないようですね」

 「もう好きにしろ!俺はこのまま寝る!」

 「未成年の添い寝リフレはグレーですよ!」

 「では、そうさせていただきますね……」

 と、そのまま組体操が再び移動しようとしていた中。


 燃える炎が、組体操を襲った!


 十字型のその炎は、組体操を何等分にか分離させていく!


 そして、———かちゃん、と日本刀を鞘に収める音が辺りに届いた。


 「あんたは!」

 「まさか!」

 

 「———助けに来たぞ、安藤」


 相川陽奈その人だった。


 「アスモデウス……自由自在の炎です。温度や燃やすものを選択できるので、今のは能力そのものを燃やして切った。刀も作ったものですので同様です」

 「説明ありがたい」

 「いや待て!」

 組体操がバラバラになったせいで人々がぼとぼと落ちていく。

 なんとか安藤は拾おうとするが……。


 「私の能力は、この程度で解けるほど脆弱ではございません」


 人々はトランポリンのような形で固まって着地した!


 「骨折とかしないのかよ!」

 「私の能力では一時的に力を注ぎ込んでいるので、そうなることはございません。安心してください」

 「そっか!じゃいい夢見たから帰るな!」

 「おばか」

 その横で相川は刀を前に出して鞘から少しだけ覗かせていた。

 「安藤に害をなす悪魔……攻撃してもよろしいな?」

 「どうしよう」

 「あんた何を話してあそこまでしたんですか」

 「今度遊びに行く話とか」

 「それをさっき言えよ」

 

 「切るぞ!切るぞ!いいのか!安藤!なんとか言ってくれ!私は怖い!」


 やたらと青ざめて汗を流して相川は叫ぶ。

 「ダチョウ倶楽部?」

 「死なない程度に切ってくれ!バアルにレターパックで送る」

 「犯罪なのかわかんないなこれ」

 「よし……」

 

 すると相川の刀に炎が燃え盛っていく。


 「獄門豪炎斬!」


 恐ろしいほどの炎の塊がレラジェと組体操の方に飛んでいく!


 「こ、ここまでの火力は、私にも対応不可能……申し訳ございません!王ーーーーー!」

 

 爆炎が公園を燃え上がらせる!


 「そんな熱くないですね」

 「風呂くらい」

 二人は普通に佇んでいた!


 爆炎が燃え尽きて、辺りには散らばる組体操の人々、そしてなんか真っ赤なレラジェが仰向けにぐったりと倒れていた。


 「能力を燃やし、奴には熱湯ほどの熱を神経にのみ与えておいた……まぁ火傷ではない。死にはしないだろう」

 「もう全部あいつ一人でいいんじゃないかな」

 「言ったらだめです」

 すると相川がどこか情けない足取りで安藤に近づいた。

 「それで……どうだ?私、正義だよな?正義だよな?」

 「正義だよ。君は、立派に……」


 「なんか白々しいですよ!顔が!」

 

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