28 夏焼 夏休み 過ごし方

夏休みって、つらいぜ? 

まず学校に行けない。これはもう俺にとっては死を意味する。だけど楽しい夏に死んでなんかいられないし、成績落としたらこれまでの成果が水の泡だから、俺は遊びの予定がない時は、トートバッグに荷物を詰めて図書館に通っていた。


 本を読んだりテスト対策をして日中の時間を潰すと、夜は札駅のステラプレイスに行ったり、地下街のフリースペースで涼んだりしていた。たまに叔父さんが働いている店に顔を出しにいったけど、最近は頻度を減らしている。


 叔父さんに迷惑かけたくないし、やっぱ学生が夜のススキノを歩き回るのって悪目立ちするからさ。今夜店に寄ったら、夏の間はもう行くの止めておこうと思ってたんだ。叔父さんの家に電話することだってできるし。


 俺はポールタウンをススキノ方面に真っ直ぐ向かって歩いた。地上は暑さが残っているせいか、ほとんどの人が地下を歩く。札幌人ってのはつまり地底人なんだな。それで狸小路四丁目の出口から地上にあがった。この時間でも暑かった。


 このあたりから外を歩くの、賑やかで好きなんだよな。もう少し南へ進んで、ススキノ交差点を渡る。南5条まで進んだところに、叔父さんが働く店がある。この辺までくると食べ物と人工物のニオイが重なり合って、ちょっと違う土地に来たみたいな感覚になるんだ。

 まるでアジアのどこかの国みたいだと思った。それがちょっと面白かった。

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