27 冬川 夏休みの前に

 夏のテストが終わった。

 夏焼は今回も上位者に名前を張り出され、いつも通り隣の席で喧しく過ごして。

 クラスのギャル高岡は雅也に告白したけど撃沈したみたいで。

 女子達の関心がそっちに向いたおかげで、僕への当たりは無くなっていった。


 僕たちは試験終了祝いにボウリングに行った。僕、山本くん、田口青葉、雅也と梢ちゃん、夏焼の六人で勝負した。

 山本くんがストライクを連発し、ハイスコアをたたき出す一方で、田口青葉がガーターを連発し舌打ちをしていた。その姿は学校のマドンナっていうより、普通のクラスメイトって感じで、そんな一面が見れて僕はとても嬉しかった。


 夕方になって、狸小路のびっくりドンキーにいってご飯を食べた。僕は梢ちゃんに勧められて初めてイカの箱舟を食べた。焦げたソースが美味しかった。雅也と夏焼はバンドの話で盛り上がっていたし、田口さんと山本くんは映画を見に行きたいね、って言っていた。青春かよ、と僕は思った。


 店を出て大通駅まで歩いて、そこで解散した。僕は夏焼がまたススキノの方へ行くんじゃないかって思ったけど、あいつは東豊線の乗り場へ歩いて行った。凄く名残惜しそうに手を振っていた。僕と目が合うと、あいつはニカッと笑ったけど、どこか寂しげに見えた。


 こうして夏休みになった。


 僕は山本くんくらいしか連絡をとってなかったし、テスト結果を見かねた親に「さすがにもう少し勉強した方が、霜介のためになる。ちょっとでいいから頑張ってみなさい」と言われて机に向かう時間を増やした。それでも集中力が途切れる僕に、姉が「友達呼んで勉強会でもすれば?」と提案してきた。


「こないだスーパーの前であった子とか。ねぇ。おかあさん、そーすけね、学校で友達増えたみたいよ」

 姉が嬉しそうに母さんに言った。母さんの顔も明るくなる。

「やだぁ、いいじゃない。連れてきなさいよ-」

 僕は「いやだ」と言った。


 あいつ、今ごろ何してるんだろ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る