(9)

「悪いな……王宮では昼食は間食扱いだ。朝と晩に比べるとイマイチかも知れん」

 女騎士さんは、ボクとお嬢様の表情かおを見て、そう切り出した。

「具体的には、何をすればいいんですか?」

「とりあえず、『王女様』っぽく振舞えばいい。明日は、単に顔合せだけだ」

 ボクとお嬢様と女騎士さんは……昼食を取りながら打ち合わせ。

 薄くて丸いイースト無しパンで、肉や魚や野菜を巻いて食べる東方風の料理だ。

「まさか、『台本』とか何も無いんですか?」

 ボクは、女騎士さんに、そう訊いた。

「すまん。何とか……相手から破談を言い出すようにするつもりだが……」

「あ……あの……」

 お嬢様が、おどおどとした感じで手を上げる。

「何だ?」

「もし、本当に婚約したら……どうなるんですか?」

「難しいな……。下手をしたら、我が国と神聖王国は1つの連合王国になる可能性が有る。だが……」

「でも……私としては……えっと……」

「今より良い暮しは出来るかも知れないが……ややこしい事になるぞ。まず、こう云う場合、新しい首都は『文明国』の方になるが……困った事に、我が国と向こうの国は、どっちも自分の方が文明国だと思っている。そして、向こうの国の王都は……」

「行った事有るんですか?」

「有る……。完全に……地獄だ、奈落だ、悪夢の世界だ。我が国の国民の中には神聖王国の連中を醜豚鬼オーク扱いする者達も居るが……醜豚鬼オークの方が、まだ文明的だ。神聖王国の王都に比べれば醜豚鬼オークの巣の方がマシだ」

「そ……そんなに……」

「で、この王都が新しい連合王国の首都になった場合は……」

「場合は……?」

「君が偽物だとバレるのは時間の問題だ」

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