第14話 関わらないようにするのは関わる前提
サツキは携帯を片手に沢城と会話をしながら"ある場所"へと向かっていた。
「急に連絡なんてびっくりしましたよ」
「事件が起こってて放っておくわけないだろ。一応お前がここにいるからにはしっかりと働いてもらうからな」
そう。その"ある場所"というのは事件現場のことだ。サツキは特バツとして事件を調べるように指示されたため、現場へと向かっているのだった。
「連続殺人事件は見逃せないだろ」
「え!?待ってくださいよ!連続殺人!?」
サツキは思わずかなりの声量で驚いてしまった。普通の殺人事件だと思っていたのだが。
「知らないのか。1週間のうちに今回で3人も殺されているのに」
「三人!?一週間のうちに三人!?殺し屋じゃないんですかね」
「いや、殺し屋にしては殺し方が雑だ。それに猟奇的で愉快犯だと思われる」
「愉快犯ですか」
「一人目の被害者は幼稚園生の男の子。刺し傷が何十箇所もあり、しかもぐちゃぐちゃかき混ぜるかのような傷だった。二人目は小学生の少女。両手両足が切断されていた。検死の結果、恐ろしいことに死因は大量出血。切られたあとはしばらく生きていたまま放置されていたらしい」
「二人とも刃物で殺されている上に子供ですね」
「ああ、そうだ。自分より弱い人間を選んでいる傾向にあると思われる。だがこれからエスカレートするかもしれないから注意しろ」
サツキはため息をついた。またしても事件に遭遇したくないものだが仕事なので仕方ない。
「そういえば、、、。Aに関する進捗は?」
「ちょっと調べるのに時間かかっているらしくて、、、。ツツジは昨日自宅を出て行ってからずっと捜索中です。ポエム送られて来たんですけど読みます?」
「興味あるが時間の無駄だ」
沢城はポエムは好きだし、素人が作ったのを聞くのも好きだがツツジの書くであろう内容は大体察しはついている。
「すごい気持ち悪い内容なんですよこれが。怪文書っていうんですかね。縦読みとかも使っちゃってSNSの匂わせみたいで最悪ですよ、恋人でもないのに、、、」
「なんだ。お前らまだ付き合ってなかったのか?」
「いや、なんでそうなるんですか」
「ツツジはいいぞ。頭はいいし強いし、何しろ顔がいい。特バツの男どもからは姫扱いされてるくらいだ」
「うへぇ〜、何それキモすぎません?」
不快だというようにサツキは眉間に皺を寄せた。
「みんなアイツの本性を知らないんですよ!素手で人を絞め殺した日はいい夢が見れるとかいってるモノホンのサイコパスですよ?」
「ますますお似合いだな、お前も頭おかしいし」
「え、えぇ〜、、、。そりゃあんまりですよ」
そうこう話している間にサツキは殺人現場である公園に到着した。
「あ、着きましたので切りますね。失礼します」
電話を切ったすぐ後、警察がサツキが殺人現場に立ち入ろうとするのを止めようとしたが、特バツの手帳を見せたところすぐにその場から去っていった。
「うう、緊張する、、、」
警察は苦手だ。怖いし、強いし、何より特バツを嫌っている。
覚悟を決めるとサツキは羽織っているスタジャンを整えて、ブランコ周辺にいる二人の警察に近づいた。
「ったく、また猟奇事件かよ、、、」
「めんどくせえよな。さっさとその辺のやつ適当に吊るしちまうか?」
そのような話をしているに、二人はまだサツキには気づいていないようだ。
サツキは勇気を出して声をかけてみることにした。
「あっ、あの、、、。どどどどどうも!特バツなんだけど、、、」
「あ?なんだって?」
「え?!あっ。特バツって、、、。あっ。言ったんだよ。あっ、ごめん」
陰キャの特徴、言葉の最初に"あっ"が付く。
「そいつ誰?」
「特バツだってよ」
「なんで特バツが、、、?」
やはり警察は特バツが嫌いなようだ。二人の警察がサツキを睨んでくる。
「応援で警察の手伝いをしに、、、」
「は?特バツのままごとに付き合ってられねえんだが」
今にも殴りかかってきそうな警察だ。
「まあ落ち着けよ」
「あ?」
もう一人の警察は仲間の方に手を置いた。
「いいじゃねえか、面白そうだし」
そう言って宥められたことにより、サツキは何とか助かった。
「えっと、、、。それで、何があったのかな」
「被害者は子供。頭と胴体でから離されて見せ物のようにブランコに乗せられていた。最近、殺人鬼が暴れているのを知っているか?おそらくそいつの仕業だ」
「被害者三人目かぁ、、、」
「なあ、鑑識に回そうとしてたが、これ見るか?」
渡されたものは赤いペンで書かれた手紙だった。
『警察の皆さん私と死の遊びをしましょう。私は三人殺しました、ですがこれは練習に過ぎないことです。私はもっと殺したい。私を止めたければ止めればいい。ですが、その時はあなた達が次の標的となるでしょう』
ヨレヨレの素材の手紙にはそう書かれてあった。
警察に脅しをかけ、なおかつ殺人に関する快楽を感じている異常さが伝わる手紙だ。
だが、サツキは読んでも特に恐怖はしなかった。
「ふふっ、、、」
むしろ笑いが込み上げてくる。
「お前何笑ってんの?」
警察がサツキを睨んだ。
「え!?あ、笑ってないよ!!?」
「笑ってたろうが。何が面白えんだよ」
「いやまあ、、、。文章痛いなぁ〜って。こんな痛い文章書くあたり犯人は中学生だなぁ。ていうか、こんなの誰かに読み上げられたりしたら自分なら死にたくなるって普通。ひひっ、、、」
「は?」
「あ!いや!ごめんなさい!普通じゃないからこういう恥ずかしいの平気で書けるんだよね!?悪いやつで犯罪者だからね!」
「なんだお前」
これは警察を怒らせてしまったのではなかろうか。サツキは必死に頭の中で話を何とか逸らそうとした。
「えええっと。あ!いや、それにしても大変そうだよね!警察って!だってこれから長い作業が始まるんでしょ?」
「あ?」
「いやだってほら!とりあえず事件を追ってますって言って、ある程度たったら事件性なしってことで報告しなきゃいけないんだもんね。大変だよね!世間が納得いってなかったら嘘の真相を作り上げたりもしないといけないし!」
「、、、は?」
本当にバカな奴だ。必死になったせいでサツキはどう聞いても煽っているようなことを口走ってしまった。
「何お前、喧嘩売ってんの?」
「え!?あ、いや!売ってないから!ただ俺は警察って頑張っているフリをするのがうまくてすごいなって!!」
サツキの舐めた口についに堪忍袋の尾が切れた警察は彼に向かって右ストレートを打った。
「ふんっ!!」
だが一応サツキは戦闘経験は豊富である。
「あぶなっ!」
サツキは反射的に拳を避けれた。
「あ!?なんだコイツ!」
何度殴りかかってもサツキに簡単に避けられる。
「おい、止まれ!」
警察からそう言われサツキはバカなことに素直に避けるのをやめた。
「え?どうしたの?」
次の瞬間、当然ながらサツキは顔面をぶん殴られてその勢いで地面に叩きつけられた。
「いってぇ、、、」
自身の頬をさする。今のはかなり痛いところに入った。
「スカッとしたわ」
警察はサツキを見下ろして鼻で笑った。
「おい特バツ」
「は、はい」
「この事件、もし勝手に犯人捕まえたりしたらよ、、、。マジ殺すから」
ズイと警察は顔を近づけて来たことでその迫力に思わずサツキは固まった。
「はいぃ、、、」
「よし。じゃ、仲良くやろーぜ!ギャハハハハ!!」
地面に座り込むサツキを置いて警察はその場を去っていった。
彼らの背中を見送りながら、サツキは携帯を取り出すと沢城に電話をかけた。
「沢城さん、、、」
「どうした」
「その、、、。出動しましたけど、俺はいらないそうです」
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