エピローグ 木漏れ日

『ペンはサメより強し』


「はぁ……いつか漫画家になりたいなあ」

 自宅アパートでくすぶっている。家賃と生活費を稼ぐためにバイトばっかりしている日々はもう飽きた。

「描きたいんだよぉ!」

 だけど、手が動いてくれない。

(駄目なのかなあ……)

 自分に才能はないのだろうか。

 才能のない人間が努力しちゃ駄目なんだろうか。

「へーい、ミキ! 今日もコミック描いてるー?」

「あ、おはよう。ナンシー」

 隣人の外国人。

 日本語堪能、漫画大好きナンシーだ。

「いつかミキの漫画を買って帰るのが夢ネ!」

「デビューまで何年かかるか分からないよぉ……」

 わたしが泣き言を言ったその時だった。

「洪水だぁあああああああああああああああああっ!!!」

『えぇええええええええええええええええええええええええええっ!?』

 凄まじいほどの土砂災害!

 何て事! どうしてなの! そう言えば聞いたことがある!

 地名というのはここで住んじゃ駄目というのを伝えるために悪い名前をつけるのだと。そしてそれだと土地が売れなくて困った人がキレイな名前に変えちゃうんだって。

 真善しんぜんおか。絶対やばい!

「ナンシー! 荷物持って避難!」

「いやー、流されるー! ミキ! これを受け取ってー!」

「これは……!」

 Gペンだった。デジタル作業のわたしは使わない。

「ネットオークションで落とした宝物ネ! ミキなら絶対に漫画家になれるって信じているノぉぉぉぉぉぉ…………!」

「ナンシーぃいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!」

 親友の姿は見る見る水に流されて消えて行った。

 

 +


 ナンシーの無念は必ず晴らす! そう。自分は生き延びるのだ!

 漫画家になる夢を果たすため!

 ミキの大脱出行が始まった。


 +


 鉄砲水だ! ゾンビの群れだ!

 真善美が丘は墓地だった! 墓からよみがえった死人の群れよ!

「ゾンビにも人権はあります! ゾンビ差別はヘイトスピーチだ!」

 街頭演説をする社会運動家がいる。おーっと、ゾンビに喰われたぞ!

「墓からよみがえったゾンビの皆様! この原黒はらぐろ権蔵ごんぞうに清き1票を……! ぐぎゃああああああああああああっ!?」

 ゾンビの票を取り込もうとするざとい政治家! しかし、ゾンビに喰われて命を終える!

 カオス! パニック!

 真善美が丘で死霊のパレードよいよいよいよい!

 激流! 濁流! 鉄砲水!

 生き延びるためにはボートが絶対に必要だ!

「てやんでい! こちとら3代前からのボート職人だ! 親父の仕事を馬鹿にして! 今更てめえらに売るボートはねえよ、けえったけえった!」

 ボート職人三太夫さんだゆう! しかし、人間不信で心を開いてくれない!

「あなたのお祖父さんたちの物語を漫画に描くわ!」

「てやんでい、いきな交渉じゃねえか! お代は要らねえ、好きなボートを持って行きな!」

 ミキはボートを手に入れた!

 泳ぐぞ、泳ぐぞ、ボートを漕ぐぞ! 氾濫した川でオールで漕ぐぞ!

「見つけたぞ! 抜け忍ミキ!」

「あなたたち……!」

 ニンジャ! ニンジャ! ニンジャ! 

 忍者の集団が現れた! そう、ミキは忍者の里の抜け忍だった! 真善美が丘のアパートに潜み、刺客に怯えながら漫画の勉強を一生懸命していた夢追いガール!

「ハラキリ!」

 掛け声とともに手裏剣が投げられる!

 うぉおおおおおおお! ここは身代わりの術しかない!


 +


 何てこった! ゾンビがニンジャ念波で操られたぞ!

 忍法ゾンビ操作の術! 全てがミキに狙いを定めた!

「ゾンビたちがあの子に狙いを定めているわ!」

「何だと!? まさかあの小娘が全ての元凶か? おのれ!」

 一般人ですらミキの敵! まさに決死の逃避行!


 +


「死ね! 死ね死ね死ね!」

 一般ピープルには手を出せない! まさに地獄の逃避行!


 +


「隠れ身の術!」

 その辺の洞穴に身を潜めただけだ!

「ぐるるるる……!」

 おーっと! 冬眠中のクマだ!

 手裏剣投擲とうてき! 一撃必殺!

 熊の眉間を貫いたぁあああああああああああああああああっ!


 +


 腹が減っては戦は出来ぬ。熊鍋! 雄だったので子供の熊はいない。

 子供の前で親を食うとか罪悪感!

「ごちそうさま!」

 ぺろりと平らげた! 合掌!

 かたかたかたと! 骨が動き出したぞ!

 熊骸骨くまがいこつ! スケルトン! きょうこつ! がしゃどくろ!

「しまった!」

 骨のからだに手裏剣は効かない!

 熊の骨 VS 抜け忍ミキ


 +


「虚しい戦いだったわ……」

 カタカタカタ、と。

 それでもまだ骨は鳴る。

 ズバッと蹴散らした。

 さあ、風に舞え! 大気に還れ!

 さらば、強敵だった熊……。


 +


 変装の術!

 単にサングラスをかけただけ!

 真善美が丘を脱出するためにボートを取りに行くぞ!

 辺りは洪水の音が響いている。

 隠し場所にボートは……なかった。

(奪われた……)

 どさくさ紛れの略奪・虐殺!

 どしゃあああああああああっ!

 水増量。

 ボートが駄目ならスイミング! クロール!

 いや、無理だ。

 自分は抜け忍として狙われている。戦えなくてはどうしようもない!

 その時だった。

 サメがいた。

 忍法サメ操作の術!

 ほっぷすてっぷ!

 サメの背に乗ったミキは真善美が丘の脱出を開始した。


 +


 5分で追い付かれた!

「そのサングラスで分かりづらかったが……やはりミキか!」

「里に伝わるサメ操作の術……。我らが前で見せたのが運の尽きよ!」

「くっ!」

 敵もサメに乗っている。

 サメの背に乗り逃げるミキ。追って来る忍者たち!

 手裏剣投擲! 一斉いっせい斉射せいしゃ

 避ける! 避ける! 避ける!

 サメの背の上で身をよじり全ての攻撃回避した!

 反撃だ!

 手裏剣では勝てるか分からない!

 そう。

 ここは秘密兵器芋けんぴ! 投擲した芋けんぴが眉間に突き刺さり忍者の何人かは脱落だああああああああああああっ!

 しかし、何人かはガードした。

 ない

 忍者の里で開発された秘密超合金SASUKE!

「くっ……!」

「抜け忍ミキよ! 戻って来い! 貴様のその技術は忍者の里でこそ発揮されるのだ」

「嫌よ、おかしら! わたしは立派な漫画家になってナンシーの仇を討つんだから!」

 決戦!

 それは3日3晩に渡る激闘であった。

 サメは常に泳いでいた。

 投擲される手裏剣、手裏剣、手裏剣、手裏剣。迎撃する芋けんぴ。

 サメを狙えばいいと気付くまでに言い尽くせぬほどの攻防があった。芋けんぴがお頭の乗っていたサメに直撃。おかしらは溶鉱炉に落ちる殺人ロボットのように沈んで行った。


 +


 数年後。

 ミキは漫画家デビューした。

「苦しかったあの日々があったから今の人気があるんです。これからも精魂込めた作品を作って読者の皆様の生きる支えになれれば幸いです」

 ミキの仕事場にはサメの形をしたトロフィーが。

(ナンシー……わたし……)

 今でも悪夢にうなされる……。

 最愛の親友ナンシーがサメと融合したゾンビとしてよみがえり、彼女からもらったペンを泣きながら額に突き立てたあの瞬間を。


 HOW TO MAKE COMIC?

 PASSION AND TECHNIC!


 +


 サメ映画 サメ映画

 ここはどこのサメ映画 御用のない者サメ映画

 この子の7つのお祝いに お札を納めにサメ映画

 行きは良い良い 帰りは怖い

 怖いながらも サメ映画 サメ映画


 +


『野球部より優れたサメなど存在しねえ!』


 PLAY BALL! SQUARE BALL!

 SORRY TRIANGLE IS BEST


 私立あか怒羅どら高校が強豪でないことは知っていた。

 それを承知で俺は野球部に入った。

「この学校を甲子園に導きたいです!」

 入部した時に先輩たちの前で言ったよ。笑われた。

(ふん――!)

 だけど恥とは思わなかった。俺には夢がある。野望がある。

(いつかきっと!)

 出来ると信じた。

 夢は叶う日が来るんだと。

 ……時は流れる。

 俺は3年になった。キャプテンを務めている。最後の夏だ。

「ゲームセット! 勝者――」

 夢だと思った。

 目の前の光景が信じられなかった。

 ピッチャー渾身のストレート。今日までに死力を振り絞って来ただろう。

 疲れの残る身体での投球。

 それでも恐るべき速さでバッターボックスを通過してミットに納まっていた。

 判定は――ストライク。

「勝った……」

 3塁の守備をしていた俺は呆然と呟く。

「キャプテン……!」

「ああ……!」

 夢だと思った。

 目の前の光景が信じられなかった。

 しかし、勝った。勝ったんだ!

(うぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!)

 叫びたい気持ちが湧いて来る。

 しかし、対戦相手への敬意を忘れてはならない。

 一列に並んで礼をする。

 向こうの選手たちは泣いていた。

 それでようやく実感が湧いた。

 県大会の最終試合。

 俺たちは――甲子園への切符を勝ち取ったのだと。

「うぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!」

『キャプテン!』

 空に向かって俺は叫んだ。

 夢を叶えた。

 俺の……俺たちの夏は終わらなかった。

 そう。

 夏はこれからだ。

 甲子園の土を踏む。球児たちの憧れ。

「勝つぞ!」

『はい!』

 優勝? 無理かもな。無理だろうよ。

 だけど全力を尽くす。燃え尽きる程に。


 +


 対戦相手が決まった。

卯野うのっていっない高校だと! 去年ベスト4の強豪じゃねーか!」

 夏の試合の開幕は、あっという間にやって来た。


「ふぃー……」

 ホテルのシャワーでさっぱりしたぜ。

「どうした? さくらもり

 ホテルの無線に繋いでパソコンを見ている。

「まずいな……。明日の試合でサメが降るかも知れない」

「は? 何だよ、サメって……」

「知らないのか。宇宙ザメのことを」

 画像検索で出て来た結果に俺は息を呑んだ――

「コラだろ……? それかクソ映画」

「現実だ。宇宙ザメは時に大気圏に突入して、落下地点に被害をもたらす。ほとんどは燃え尽きるが、稀に耐え抜く個体もいるんだ」

 素早く次の文言をタイプする桜森。

 俺の知らないニュースが続々と出て来た。

「餌とかはどうしてるんだ……」

「生態はまったくの未知だな。調査隊も派遣されたが、ほとんどが船ごと喰われた」

「……それが降って来るって?」

「ああ。サメの群れが試合時刻に、甲子園球場のちょうど真上に来るそうだ。最悪の事態が起きるかも知れない」

「何てこった……」

 卯野手炒手内高校との対戦はどうなるだろうか。


 +


「うわああああああああああああああああああっ!?」

「桜森ぃいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!」

 桜森が! 桜森がサメに喰われている!

「試合を中断してくれ、すぐに!」

「駄目なんだよ……。たった今、高野連の会長から何があっても試合を中断するなという通達があった」

「何だって!?」

 何を考えてるんだ、会長は!

 こんな、こんな風に空からサメが降って来る中でまともな野球の試合が出来るか!

「ぐわああああああああっ!?」

「あんた……!」

 卯野手炒手内高校の選手が噛まれた。

「補欠がいるだろう……?」

「そういう問題か! このままじゃあんたたちだって……!」

「ぐわああああああああああっ!?」

「言わんこっちゃない!」

 3塁の審判が噛まれていた。

(どういうことなんだ……)

 俺は高野連会長の内心を推測することが出来なかった。


 +


「ええで、ええで! 視聴率はうなぎのぼりや! 今年の甲子園は盛り上がるでぇえええええええええっ!」

 高野連会長・三団原さんだんばらポンは、地下500メートルにある特殊シェルターの内部で試合の様子を観戦していた。名前とは裏腹に、ぴっちりとしたオーダーメイドのスーツの似合う細身で野性味の溢れる中年男だ。

 ブランデー片手に、膝には黒猫を乗せている。

「しかし、このままでは球児たちが……ぐわっ!」

 進言した黒服でサングラスの部下の顔に、ポン太は高価なブランデーを浴びせかける。

「分かっとらんな。球児を何だと思ってるんや」

「未来の球界の宝であります、会長!」

「違う! あいつらは見世物小屋の猿や! あいつらの学生レベルの珍プレーを、みんなげらげら笑いながら観に来とるんや!」

 ポン太の語調には確信があった。

「あいつらはな? 笑いものにされることで初めて価値があるんや。誰もあいつらに野球の腕なんて期待しておらんのや。一生懸命練習して県大会を勝ち抜いて、ようやっとの思いで甲子園の土を踏んで善戦すら出来ずに強豪校に踏み潰される。そんな無様な負け犬の姿が最大のエンタメなんや」

 黒猫を撫でる。

「こんな笑えるエンタメ中断したらスポンサーに申し訳立たんわ。サメ様々やなあ! 赤怒羅高校と卯野手炒手内高校やったか? せいぜい無様な姿を晒して、お客さんたちを笑わせてもらおうかー?」

 地下500メートルのシェルターにいる自分が安全であることを彼は疑っていなかった。


 +


「ストライク、バッターアウト!」

(くそ……!)

 5回裏。打順は俺で終わっていた。両校ともに無得点。コールドゲームにすらなれない。

(献上すべきだったのか、得点を……?)

 後悔が渦巻いている。負けたくない。その思いで必死に闘う。卯野手炒手内高校も心は同じだろう。俺たちは……何のために戦っている?

 どうしてこんな……。

 こんなサメの降り注ぐ中で戦わなきゃならない!?


「視聴率がうなぎのぼりや! 金や金やー!」

 スリーアウト。守備が終わった。

 俺は腕に包帯に巻いて次の打順を待つことにした。


 +


「会長……。これ以上は……」

「何を言うとるんや、こんな面白い見世物他にあるかい! 酒を持って来んかい、酒を!」

 それは天罰であった。

 高野連会長、三団原ポン太の潜む地下シェルターのはるか上空。

 大気圏のはるか上から1匹のサメが地球の重力に引かれて落下して来た。

 大きさは甲子園に降り注ぐサメの数倍をゆうに超える。人など一呑みに出来そうな巨大サメだ。地上への落下速度は文字通り加速度的に増していく。さらにスピンを加えて総エネルギーは1兆6000億シャークパワーだ!

 地面に激突! しかし、サメは砕けない。

 えぐり取っていく地面を。

 地下500メートルに到達したぞ! シェルターの分厚い壁面に当たってもその勢いは衰えない。ドリルの要領で、ついにシェルターを破壊した!

「な、何や!?」

 三団原ポン太は立ち上がった。黒猫は逃げた。

「何しとるんや、お前たち! かからんかい!」

 黒服たちが動いた。しかし、一瞬でサメに蹴散らされた。

「役立たずどもめ! てーい!」

 ポン太の目からビーム! そう、彼は若い頃の負傷で肉体を機械に改造していた。彼が人の心を失ったのは、サイボーグ化していたことが原因かも知れない。

 ビームの直撃を受け宇宙ザメは怯んだ。しかしすぐに三団原ポン太に襲い掛かる!

「来るなら来んかーい!」

 機械化した手が外れると手からビームの刃が出現した。2刀流! サメと斬り結ぶ、斬り結ぶ、ちゃんちゃんばらばら!

「ば、馬鹿な……! このワイが……サメごときに……ぐふっ!」

 高野連会長・三団原ポン太死亡。

 サメもまたしばらくして事切れた。

 戦いは終わった。

 しかし、それは同時にゲーム中断の命令を下す者がいなくなったことを意味していた。


 +


 9回裏。

 ツーアウトランナーなし。両校ともに無得点。

 これで――最後だ。

「ストライク!」

(くっ!)

 チャンスは1回。サメが降る。

 今のこの瞬間もサメが降る。

 しかし、どんな奇跡だろう。

 絶好球!

 俺は渾身のスイングで……!


 ――俺たちの夏は終わった。


 数年後。

 俺は宇宙飛行士として宇宙のサメを除去する仕事に就いていた。

 あの夏。

 俺の打ち返した球はセンター真正面にぐいぐい飛んで行った。あのままだったならホームランは余裕だっただろう。

 しかし何たる不運であろうか。フェンス直前で落下してきたサメにぶつかり跳ね返った白球はセンターのミットに納まっていた。そのセンター? 無論喰われた。

 観客の被害も甚大だった。それが俺たちの夏の終わり。

 高野連会長はどこに消えた……。

 今日も宇宙に出てサメたちとの戦いが始まるぜ! シャークシャークシャークシャーク、シャークシャークシャーク!


 SPACESHIP!

 I LOVE YOU BUT YOU LOVE FUN●SSHY


 +


 武ON武ON武ON武ON、武ON武ON武ON

 奴らが町にやって来る バイクで町にやって来る

 我が名は野球番長だ ドラフト1位の天才だ

 白球打って 拾いに行って 年俸数億マジ薄給

 白いタマタマ投げてます 棒で打ち返すのが仕事です

 これが番長の生きる道 俺らの青春は売り物だ

 気付けば俺もアラフォーだ それでも番長やっている

 野球部より優れたサメなど存在しねえ


 +


 ふぅ。面白い映画だった。

 やっぱりサメ映画はいいな。

 俺は冬林りゅう

 母は日本舞踊部の部長だった梨村なしむらアリス。

 ウィル能力者のみに一夫多妻が認められてもう何年だろう。


 冬林飛竜 母アリス 兄弟姉妹多数

【セブン=ブリッジ】

 既出。

【木漏れ日】

 こんにちはと挨拶すると相手の食欲が増す。さようならと挨拶すると減退する。累積する。


「こんにちは。いいお天気ですね」


「こんにちは。奥様も」


「こんにちは。お嬢さんがいらっしゃったのですね」


「こんにちは」「こんにちは」「こんにちは」


 これをターゲットに繰り返す。

 およそ20日。


「頃合いか。フォアグラフォアグラ」

 1日5000円以上、食費に使っているはずだ。

 だけど、飢えは収まらない。

 とどめ。


 必要な物。

 新聞紙。もしくは週刊誌。

 ハサミ。のり。

 紙。

 便箋びんせん

 切手。

 手袋。

 指紋をつけないようにだ。

 ピンセットも。

 念のため2駅くらい離れたポストから匿名の手紙を送る。


 こんなのを。


「お」「前」「の」「む」「す」「め」「の」「肉」「を」「く」「え」「ば」

「そ」「の」「う」「え」「は」「お」「さ」「ま」「る」「よ」


 これが我の奥義【餓鬼道】である。

 もちろん内容は嘘。

 解除は「さようなら」×該当回数である。

 あの元帥め。

 退学者たちが書類上、学校にいることにしていた。

 ウィル能力を消して泣き寝入りするようにしておいて。

 分かるか?

 年間約200万円の生活補助金×人数分だ。

 殺したけどな。

 鶴賀先生が。

 あー。今は関ヶ原か。あの文芸部部長。

 処刑命令書を偽造して。

 財産は国庫に没収が当然なのだが。

 息子が善意の第3者を主張した。

 よろしい。

 このゴミを始末するために、我はヤマト国に転生した。

 ふふふふふ。

【カンフル】か。

 父上の第2能力だ。

 ワクチンでウィルスを殺されて消滅したウィル能力を復活させる能力である。

 第2能力も覚えられる。

【クリスタライズ】は、俺の母親違いの兄の能力。

 双子の姉がいるのだが、秘密にさせてもらう。

 この2人の母親は手芸部のももヶ瀬がせももと言った。

【フェアネス&カインドネス】は、弓乃義母ははうえの産んだ姉、未来みくの夫。


 +


 冬林にげさる 母おだまき

【ビースト・ハンター】

 素手で倒した動物を血抜きする。

【吸血絵日記】

 嘘をついて100万円以上の利益を得た者を脳溢血のういっけつで死亡させる。


 冬林空間くうかん 母弓乃(フォルトゥーナの妹)

【コットン・ケープ】

 1人で歩いている未婚女子に加護を贈る。自動発動。彼女に近寄った変質者が不能になる。

【勝負師生活】

 博打の負けを踏み倒した者を永遠に奴隷にする。


 雪浦ゆきうら未来

【プライマル=エモーション】

 相手は正気に返る。どんなアホでも戦闘をやめる。

【ザ=ワード】

 相手に愚痴を言わせる。気まずくて二度と攻撃して来ない。


 うん。

【死四詩ボム】のクリスタルで敵を一掃して、巻き込んだ被害者を【プライマル=エモーション】で鬱病治療する。

 これが能力バトルの最適解。

 殺すな。殴るな。痛めつけるな。

 捕縛するだけにしておきなさい。

 後は警察と裁判所の仕事だ。

 君たちはじゅんぽう精神を持ってくれ。(完)

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はもくれ アレクラルク=ネレイア=CMC @alecralk_n_cmc

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