第10話

「さてと これからが お楽しみよ リーダー」


 素早く、リーダーの機体の後方へと回りこむ。

 そうすると、あたしの機体がリーダーからは全然見えなくなるわ。


『おい なにしている

機体トラブルか ??』


 視界から、あたしの機体が消えて動揺するリーダーだけど。

 お楽しみは、これからよ。


「えーっ」


 とぼけながら、リーダーの機体の真下にくっつくように飛行する。

 みんなは、絶対にマネしたらダメだからね。


『おい どこにいる? 姿を見せろ』


 呼吸が、荒くなるリーダー。


「はーい わかりました」


 一気に加速して、股下からコンニチワしてやったわ。

 ほんの1メートルもないくらいで、接触しそうなところから出て来られて、


『グガァーッ』


 思い切り、斜めに操縦桿を引くリーダー。


『ストール ストール ストール』


 電子音が、鳴り響くリーダーの機体。


『チッ

エンジンが2つとも………

再始動するッ』


 急激な操作に、機体が悲鳴をあげる。


『かかってくれ エンジン』


 その願いむなしく、急激に高度を落とす。


ピーッピーッピーッ


 電子音が、危機を伝えているがなす術なく海面が迫って来る。


『クッ

脱出する』


 斜めに、落下していく機体をなんとか水平にして両足の間にあるコックを引く。


『ヴッ』


 イスごと、勢いよく射出されるリーダー。


『あー参ったなぁ』


 リーダーの乗っていたF15は、ゆっくり回転しながら、ものすごいスピードで海へと消えて行った。

 パラシュートが、開かれ呼吸を整えるリーダー。


『あっ そうだ アンテに連絡とらないと』


 そう思っていた矢先、


「ねぇ リーダー」


 なんだか、しぶといリーダーだなぁ。


『おぉ アンテ

こっちは 墜落を回避できなくて脱出した

そっちは 無事か ??』


 あら、おやさしいことですわね。


「もちろん こっちは無事ですの」


 別に、機体を当ててもよかったけどリーダーが生き残るのも想定内なのよ。


『それはよか………

ぐわっ』


 リーダーの、パラシュート発見したわ。

 弾は、撃ったらバレるけどそれ以外にも殺りようがあるもの。

 すぐ、そばを飛んで当ててやるわ。


『おいっ

こっちに来るな !!』


 パラシュートに、吊られたままジタバタしているのって滑稽ねぇ。


「おかしいなー

機体にトラブルが 発生したみたいなの」


 トラブルが、発生しているのは機体じゃあなくてあたしだけどね。

 笑いすぎて、涙が出るわ。


『イイから そばを飛ぶんじゃない

離れろ』


 体を、くの字に曲げてアピールしてるけど面白いわ。


「うわーっ」


 なんとか、笑い声が聞こえないようにしていたけど、もう限界になっちゃったの。


『なんだ どうした ??』


 すごく動揺するリーダー。


「ねえ リーダー もう定期メンテナンスじゃあ あたしの おもらしは なおらないから リーダーの栓で オーバーホールして下さい」


『なに………

うわーーーッ』


 戦闘機の、翼でパラシュートのロープが切れて、海へと落下していくリーダー。


「これで 全部終わったのね」

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