第11話

「無事に帰還したんですねリーダー」


 出樫班長が、教えてくれたけどこっちは無線を傍受できるからわかっているけどね。


「あのなぁ 今度 飲み会するからそれまで待てって言ったよなぁ ??」


 あきれたように言う出樫班長。


「そうでしたね

でも リーダーったら あたしの告白の言葉も忘れちゃってて 引きましたわ」


「あいつに 聞いたんだよ

最近 どうなんだって」


 やっぱり、聞いてくれてたんだね。


「はい それで ??」


「この前 あいつの仲のイイ同期が

墜落死しただろう」


 ベテランでも、条件次第でF35を墜落させてしまうこともある。


「あー

そんなこと ありましたね

あたしは ロボットだからって葬式には呼んでもらえませんでしたが」


 あの頃か、リーダーの様子に変化があったのよ。


「大変だったんだから

大泣きして」


「えっ リーダーが 泣いていたんですか ??」


 珍しいこともあるんだね。


「そう

その同期に 娘さんがいて 以前から交流があったそうなんだよ」


「えっ

そんなの聞いたことないですけど」


 そんな素振りは、一切見せなかったよ。


「心配させないようにしたんだろう

男手ひとつで 娘さんを育てて」


「ご主人だけ? 奥さんは ??」


 なにが、あったのだろう。


「病気で3年前くらいに 亡くなったそうだよ」


「それじゃあ」


「あんなに若いのに 両親をなくして

父親の実家が ラブホテルやってるそうだからそこに 引き取られて行ったって」


「えっ

実家のラブホ………」


「それで かわいそうだからって 誕生日プレゼントを渡したとか言ってたよ」


「それって まさか………」


 気付いてしまった。


「えっ なに ??」


「あたし リーダーに 謝らなくちゃ」


 誤解してた。

 不倫していたんじゃあなかったんだ。


「ダメだよ

もう会いに行ったら

オレが なんの為に来てると思ってるの ??」


 半笑いの出樫班長。


「あの それじゃあ軍法会議にかけて」


 なんとか、リーダーに会いたい。


「それがさ ロボは裁判に かけないってさ」


「え………

それって 無罪放免ですか」


「んなわけないでしょ

キミも 望んでいたでしょ

フォーマット」


「………そっか

あんなに 望んでいたのにな」


 不思議なものよね。


「そりゃあ いざとなればコワくなるけど

一瞬で終わるから 心配いらないよ」


「………いやだと言ったら ??」


 なんとか、最期足掻いてみる。


「上が決めたことなんでね

オレは エンターキーを押すだけだよ

すまないね」


 ニヤニヤしながら、人差し指をキーボードに近付ける出樫。


「ぃゃいゃちょっと待って」


「大丈夫

そういう感情とか もろもろ全部 忘れちゃうから 安心して」


 サッと、エンターキーを押す出樫。

 電源が、落ちる音が鳴りハードディスクのシーク音がむなしく鳴り響く。


「………」

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