第9話

「なぁ ちょっとイイか ?」


 リーダーは、ランニングに行ってあたしのところに出樫さんが来て話しかける。


「どうしたんですか 出樫班長

リーダーと なに話をしてたんですか ??」


「それがさぁ

ちょっと 落ち着いて聞いてよ」


 なによ、やたらニヤニヤして。


「えっ

あたしは常に 落ち着いていますよ」


 首を、かしげる。


「いやー

そういう意味じゃあなくて」


 なんか、手振りして真剣な顔になったけど。


「はい なんでしょう ??」


 ズバっと言えないのかな。


「あのー」


ビーーーーッ


 出樫さんが、本題を話す途中にブザー音が鳴り響く基地。


「あっ 出樫さん すいません

緊急スクランブルです」


 なんだか、タイミングの悪い人だね。


「んなことは 言われなくたってわかるよ」


 地団駄を、踏む出樫班長。


「お話のつづきは 帰還してからでイイですよね ??」


 悠長に、お話をしている場合ではないのよ。


「ああ ちゃんと話し合いしに来てくれよ

わすれずに」


 なんだろ。

 そんなに、重要な話だったのだろうか。


「わすれるわけがないでしょ」


 記憶力で、人間に負けるわけないもの。


「あぁ そうだった

どうも 普通の人間と話している感覚になっちゃって参ったね」


 頭に手をやり、苦笑いする出樫。


「その話も あとにしてください

それでは 行ってまいります」


 ビシッと、敬礼して見せる。


「あっ はいー」


 気の、ぬけた敬礼をする出樫。


「ハシゴ使いますか ??」


 走って格納庫に入ると、声をかけられる。

 気分次第で、ハシゴも使うんだけど、


「いえ 大丈夫よ

ありがとう」


 そう言って、ふわりとコックピットに乗り込む。


「はいッ」


 ハシゴを、押して去っていく隊員。


『どうした? 遅いぞ』


 リーダーから、無線が入る。

 もう、準備万端のようだ。


「すいません リーダー」


 エンジンを、かけて正常かチェックする。


『なにか トラブルか ??』


 出樫さんと、話をしていたことを伏せる。


「いいえ オールグリーンです」


『了解

出るぞ』


「了解」


 2機が、並んで離陸して一気に高度1万メートルまで上昇する。


「さあ リーダー

これが ラストフライトよ」


 つい、ニヤリと笑ってしまうわ。


『目標

目視出来るか ??』


 いきなり、リーダーが聞いてくる。


「あっはぁ

まだ見えません」


 一応、人間の3倍は遠くまで見えるけどまだ視界には入ってないよ。


『どうした? 考え事をしているのか ??』


 鋭い、つっこみを入れるリーダー。


「いえ すいませんリーダー」


 変に、あやしまれてもヤバいからとりあえず謝っておくわ。


『了解』


 淡々と、返事するリーダー。

 とりあえず、バレてはいないようね。


「はい………

あっ」


 異物を、確認したわ。


『どうした ??』


 さらに、緊張感が走る。


「目視できました

2時の方向です」


 リーダーに、報告する。


『了解 向かうぞ』


「了解」


 近付くと、戦闘機が飛んでいる。


『ただちに 引き返しなさい』


 ターゲットは、外国籍と思われる飛行機2機。

 さっそく、警告を発するリーダー。


『このエリアは 我々に権利がある』


『どこの所属か言いなさい』


『ここは 我々興産党の空だ』


『キミたちが このまま進むなら 撃ち落とすことも出来るぞ』


『面白い』


『やるか』


『………いや

本国から帰還命令が出た』


『では お引き取りねがおう』


『では』


 向きを変えて、飛び去っていく飛行機。


『こちら異常なし

アンテの方はどうか ??』


 確認してくるリーダー。


「こちらも異常なし」


 機体には、異常はないけどあたしは正常じゃあなくなってるのよリーダー。


『了解 これより帰還する』


「了解」


 邪魔者は、いなくなったしそろそろね。


「フフフ」

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