第5話 騒がしい妖精王 爆誕
「ちょっとー!魔王様!!あたしのご飯が用意されてないんですけど!」
「今、ヴァンが持ってくるから少し待てよ」
「嫌だ!嫌だ!待てない待てないー!お腹空いた!!」
今、テーブルの上で駄々をこねているちっこい生物は、2時間前に、レジェンド
「あなたは少し落ち着きなさい、ほら、交鳥のダシから取ったスープとアポンの実です」
交鳥は、家畜として育てられる鳥だ。
元は、野生の鳥だったのだが、人間の品種改良によって家畜として生み出された鳥、こいつらは飛ぶことのできないので、自然界では生きていけない生物だ。
アポンの実は、柑橘類の果物だ。
「もう!遅いのよ!このなんちゃって執事!」
「ぺったんこ妖精に言われたく無いですな」
ぺったんこか、確かにぺったんこだな。
俺の掌サイズの体格に、金色の髪、ロシアンブルーな瞳に、妖精の象徴ともいえる羽。
魔法に特化しているのか、魔力量が大きい彼女は、世にも珍しい妖精なのだ。
「誰がぺったんこよ!ぺったんこなのは魔王様のイメージ力が悪かったからでしょう!」
「主を侮辱するなど!無法千万ですぞ!」
ヴァンとフィーは相性が悪く、生真面目なヴァンと比べて、フィーは能力が長けているのだが知能が低い。
誕生してから2時間立ってるが、しょっちゅう喧嘩している。
そのうち、戦闘にでもなったら、俺で止められるかどうか。
「二人ともいい加減飯を食え、それと、食べながらでいいから、フィー、迷宮の大森林は管理出来そうか教えてくれ」
俺の叱責にようやく喧嘩をやめ、食事に手を付ける。
ヴァンの料理がお気に召したのか、フィーはスープをガブガブ飲み込んだ。
「そうねー、まぁ、他の精霊ちゃんたちに呼びかければ、何とか管理は出来そうね~」
あの規模を管理できるのか、ダメもとで創ってみたが、やはりレジェンド
「そうか、それと一つ疑問なのだが、精霊と妖精って何が違うんだ?」
「うーんとね、まぁ、精霊は実態の持たない存在で、妖精はそれの進化先かな~、まぁあたしレベルになると、すべての精霊を意のままに操れるんだけどね!ワッハッハッハ!」
頬に、肉片が付いているせいで、あまり締まらないな。
生物創造で生み出されたフィーは、俺が知らない知識を持っている事に意外だった。
改めて、鑑定しておくか。
「鑑定」
名前 フィー
種族
スキル『植物操作』『生命吸収』『生命譲渡』『精神支配』『幻影魔法』
称号 妖精王・・すべての精霊を支配下におけ、任意のタイミングで召喚。
「あー!魔王様勝手に鑑定している!エッチ!」
「すまん、少し気になってな」
そして、俺が気になったスキルは、この幻影魔法というもの。
これは、対象物に魔法をかけて、姿形を変え惑わせるもの。
熟練度が上がり進化すると、幻影で見せられた剣でも切れるのだとか。
そして俺の予想が正しければ、あれができる。
「なぁ、フィー幻影魔法でこの魔王城をこのままの形で見せることは出来るか?」
「どういうこと―?」
俺の指示に補足するように、ヴァンが説明する。
「ごほん、ご主人様は魔王が復活したことを極力隠したいのです。なので、ご主人様のスキルで魔王城を綺麗に戻された後に、あなたの幻影魔法で半壊した状態に見えるようにしてほしいのですよ」
さすが、有能執事、俺が説明するまでもなかった。
宙の上で浮遊し、横で腕を組んでいるフィーは、俺の鼻先まで近寄ってきた。
「ふーん、なるほどねー、別にできるよ~」
「ではさっそくしてほしいが」
「でも、魔王様何でそんなコソコソしてんの?私だったら、人間の王国ぐらい、滅ぼせるのに」
俺が創造した生物は、何故か人間の事を甘く見ている傾向がある。
それは俺自身がそう思っているからなのか、どうなのかはわからないが、こいつらには人間がどれだけ狡猾な生き物か知っておくべきのようだ。
「フィーあまり人間を舐めない方がいい」
「えーでも実際脆弱何でしょう~、ヴァンが言ってたわよ」
全くこいつら……ならば、少し試してやろうか。
「おい、ヴァン、コップを二つ、そして水を別に用意してくれ」
「え、何するの?」
「少し待て」
◇
俺の指示に従い、ヴァンは、空いたコップを二つ、水が入ったボトルを持ってくる。
俺はそれを受け取り、フィーとヴァンに見られないよう軽く細工する。
「さて、ここに二つのコップがある、ここに水をそそぐ、まずは、ヴァン飲んでみろ」
「承知しました、では、ご主人様から頂いたこの清らかな水を僭越ながら」
「早く飲め」
「では、……うむ水ですな」
そして次に、水が入ったもう一つのコップをフィーの方に置く。
「フィー飲んでみろ」
「う、うん……普通の水……いやちょっとだけ酸っぱい?」
「そうだ、お前の方には毒を盛ったからな」
「えー!!!!」
毒を盛られたと知り、フィーは、空中を猛スピードで飛び回る。
一方でヴァンは、今の一連の流れに推測していた。
「ひどい!!何でそんなことするの!魔王様!!」
「落ち着け、毒は嘘だ」
「……え?嘘?」
「そうだ、大事な戦力を俺が潰すわけないだろ」
俺の意図が全く分かっていないのか、フィーは、キョトンと目を見開いていた。
「これを使ったんだよ」
「アポンの実!!でも入っていなかったよ」
「そうだ、お前のコップの淵にだけ、アポンの実の果汁を塗ったんだよ」
「えー、何でそんなことしたのよ?」
俺が解説しようとすると、ヴァンが軽く咳払いをした。
「おっほん、フィー、あなたそれが毒だったら今頃死んでいましたよ」
どうやらヴァンは先に俺の目論見に気が付いたようだ。
「フィー、お前は、ヴァンが同じ水を飲んだことで、安心して警戒することなくそれを飲んでしまった。魔法を使わずとも、人間の知恵だけでお前を殺せたんだ」
「あ……」
ようやく気付いたか。
随分、遠回しなやり方に思えるが、フィーの性格上、経験しないと学ばないタイプだったから、このやり方で伝える必要があった。
「人間は狡猾で野蛮なんだよ、自分の利のためなら仲間をも裏切る、そんな哀れで醜い生き物だ、だからこそ俺達は驕ってはいけない」
そう、もう卑怯な手で俺の仲間たちは殺させない、絶対に。
「うーんわかったわよ、これからは気を付ける」
「俺も付き合わせて悪かったな」
これがきっかけでフィーには考える力が身に付けば良いのだがな。
◇
フィーに、手筈通り魔王城全体に幻影魔法をかけてもらい、俺は、
瓦礫の撤去をしてもらっていたゴーレムたちには、魔王城周辺で湧いていた魔物たちが、城に侵入できないように、警備をしてもらうことになった。
次に、迷宮の大森林についてだが、今現在ダンジョンが2つ見つかっており、そこから湧き出る魔物を随時、精霊たちの力を借り、駆除してもらっている。
その際にドロップするアイテムと素材を随時俺の所まで届けてもらう手筈になった。
「魔王様、ダンジョンの近くの洞穴に住み着いている、獣人の群れはどうすればいい?配下にすればいい?」
「そうだな、どちらにせよ、ダンジョンには素材を集めに向かう、そのついでにその場所に行く予定だ」
今俺の手持ちにある素材は、キングランクどまり、戦闘面の仲間がほしいため、レジェンドランク以上の素材が必要なのだ。
フィーとヴァンでも既に十分な気がするが彼らには、魔王城における支援や人間の国への調査をお願いしている。
3カ月後の、クテリア国とレグシップ国との戦争に向けて戦力を増強したい。
それとこれは、憶測だが、魔王が復活した今、きっと人間の勇者も誕生しているはず、こちらの存在に気が付かれる前に準備を整える必要がある。
「そうですな、できれば、この城の召使いも増やしたところ」
「そんなの適当な素材でいいじゃん」
「ある程度の知識がなければ従者は難しいのですよ」
「あんたの眷属は?」
「女がいないのですよ」
「はあ?」
「私はメイドがほしいのです、今魔王城に足りないのは華聯な花ですぞ!唯一の女性もこのぺったんこと、一匹だけですからなー」
「ねぇ、このエロ執事、解雇しない?」
「キュンキュン!」
三人と一匹いるだけで、かなり騒がしくなるものだな。
さて、獣人の群れか、こいつらが何故迷宮の大森林にいるかは謎だが、上手くいけば魔王の配下として雇うこともできる。
獣人は人間と比べ、身体能力に長けており、多種多様な種族に分けられている。
もし、そんな部族と戦闘になったとしても、今のメンバーならば、何ら問題はないはず。
「お前ら、騒いでないで行くぞ」
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