第13話  壁画の獣

アリシアたちは、洞窟の奥から聞こえる不気味な音に耳を澄ませた。音はだんだんと大きくなり、何かが彼らの方へ近づいてくるのがわかった。


「何が来てるの…?」

アリシアは緊張した声で囁いた。彼女の純白の衣装は、洞窟の暗闇の中で幽かに光を放っていた。


エドワードは剣を構え

「どんな敵でも、覚悟はできている」と言い、戦闘態勢に入った。

ガレスは古代の呪文をつぶやき、アリシアとクロウの周りに結界を出現させた。


すると、洞窟の闇の中から巨大な影が現れた。

それは、古代の壁画に描かれていた獣と酷似していた。

その獣は威嚇するように唸り、鋭い牙をむき出しにした。


「グルゥ、ガル、シュウ…」



「これが壁画に描かれていた獣…!」

アリシアは恐怖を感じつつも、勇気を奮い立たせた。


エドワードが先陣を切り、獣に向かって突進した。

彼の剣は光り輝き、獣に対する強烈な一撃を放った。

しかし、獣は驚異的な速さで動き、攻撃をかわした。


ガレスは支援の呪文を唱え、アリシアは状況を見極めながら、どこで力を発揮できるかを考えた。


獣は恐ろしい姿で彼らに向かって突進してきた。

エドワードは素早く反応し、剣で獣を迎撃したが、その攻撃は獣の厚い皮膚に弾かれた。


「くっ、硬い!」エドワードが叫ぶと、アリシアは「私の番ね!」と言い、密かに練習を重ねていた光の矢を放った。


しかし……!獣は巧みに避けた……。



「んもうっ!!めちゃくちゃ練習したのにぃぃっっ!!」

アリシアは駄々っ子の様に悔しがった。



ガレスは「この獣、普通の攻撃じゃ効かんわい!何か特別な手段が必要じゃ!」

と叫んだ。


アリシアは獣の前に飛び出していた。


「アリシア、危ない!」クロウが心配そうに叫んだが、アリシアは冷静に対処していた。



「お願い!」

アリシアが声に出した。


すると、アリシアの白い装束がまばゆい光を放ち、獣の体を覆った。



「ギュリュリュ、グゥ…」



獣の様子がおかしい。



「よし、今の隙に!」エドワードが再び獣に斬りかかり、ガレスが強化支援魔法をエドワードに付与した!


すると今度は剣が皮膚を切り裂いた。獣は激しくのたうち回ったあと、エドワードに向かって牙を剥いたがそれは最後の咆哮だった。


(ズシイィィン!!……パラパラ)

獣が倒れる音と小さながれきが落ちる音が響いた。


ついに獣は力尽き、倒れ込んだ。アリシアたちはホッとした表情を見せたが、同時に警戒を緩めなかった。



「皆、大丈夫?」アリシアは仲間たちを心配そうに見回した。


エドワードは「大丈夫だ。アリシア、君のおかげで助かったよ。」と感謝を述べた。



ガレス「ふむ。どうやら(光の巫女の力)が、あの獣が纏っていた結界の様なものを消し去ってくれたみたいじゃのぅ」


アリシアはふぅっとため息をつきながら

「何故かわからないけど、何か出来る気がしたの。ホントに良かった…」とつぶやいた。



クロウは「でも、この獣がなぜここに?何か裏があるのかもしれないわね…」と疑問を投げかけた。


ガレスは深く考え込み、「この獣は自然に生まれたものではない。何者かがこの地に放ったのかもしれない。我々の旅はまだ安全とは言えない。」と慎重な態度を示した。


アリシアたちは洞窟で一晩を明かし、再び騎士の城を目指して旅を続けるが、心の中には未知の危険への懸念が残っていた。



彼らの旅は、予想外の困難に満ちていた。


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