第5話  アリシアの決意。

チュンチュン…… 


チチチチッ……


(ガチャ、キイ…、バタン)





「…せーの」

「おっっはよーー!!」




「うぅ…あと5秒寝かせて……」

「巫女さまぁぁ!起きてよぉぉ!」









「起きなさいアリシアァァ!!!!!」


「ひぁぁぁぃぃぃぃ!!!」


クロウと村の子供たち二人が笑っていた。


「もぅ…、ビックリするじゃぁん(泣)(泣)」


クロウが少しため息がちに言った。

「あなたが時間通りに起きないからでしょ?」


「巫女様ぁ、今日はキルトの丘に一緒にピクニックに行くって約束したじゃん!」



(ハッッ!!そうだった!)


「ごめーん!ホントごめん!すぐ準備するからね!あ、お弁当作らなきゃ(汗)」



「ほらねっ」

男の子と女の子が顔を見合ってクスクス笑っている。


「ん?どうしたの?何で笑ってんの?」

アリシアは「ほらね」の意味が分からなかった。



兄のカイが言った

「お母さんが言ってたんだ。巫女様は可愛くて魔法も使えるすごい人だけど、

少しドジなとこがあるって。だから、お弁当は持って行きなさいって。」


カイが大きなバスケットを誇らしげに見せてくれた。


妹のサシャも

「お母さんがね、巫女様はいつも村の事を考えていっぱい助けてくれてるの。

だから少しでも恩返ししたいんだ」って。

水筒をこちらに見せながら

「巫女さまの大好きなぶどうジュースだよ」


アリシアの胸が温かくなった。

「うぅ。泣いちゃう。」

「いっぱい迷惑かけてるのにぃぃ」


「さぁ!早く顔を洗いなさい、行くわよ」

クロウが洗面台の方へ顔を向けながらせかした。


「そうだった!すぐ準備しまぁすっ!」






アリシアと二人の子供と一匹はキルトの丘へと歩き出した。


「ねえ巫女さまぁ、、」


「待って、巫女様じゃなくてアリシアって呼んでよ」

アリシアは問いかけたサシャの前に座り込み目線を合わせて言った。



「え?いいの?」

少し不安そうなサシャ。


「もっちろん!その方が私はうれしいな」

小さな子供が心から安心出来る様な、そんな笑顔をアリシアはするのだった。



「じゃあアリシア姉ちゃん!」


「はーい!」

手を挙げながらアリシアは無邪気に笑った。


手を繋いで一時間ほどゆっくりと歩くとキルトの丘の上に着いた。

周りには高い山は少なく、綺麗な畑の様子が遠くまでよく見えた。


カイとサシャのお母さんが作ってくれたお弁当を広げた。

「わぁ!美味しそうなサンドイッチ!」

クロウの分もちゃんと用意されていた。

同じものだが、食べやすい様にしっかりと猫用のサイズにカットされていた。


(猫缶じゃないんだ……。)




三人と一匹で。

「いっただきまぁぁす!」


元々サンドイッチは大好物だったが、このサンドイッチは特別美味しかった。


「美味しいぃぃぃ!!」


目をつむりながらサンドイッチを頬張るアリシアを見てカイとサシャは誇らしげだった。


お昼ごはんを食べ終わると、サシャとクロウが丘の草原で追いかけっこをしていた。


アリシアとカイが並んでそれを見ていた。

「ねえアリシア姉ちゃん。」

カイも呼び方を変えてくれていた。


「なあに?」

嬉しそうに答えた。


「姉ちゃんたちはもうすぐ村を出て行くんでしょ?」


「………うん。」


「私ね、違う世界から来たの。」


「違う世界?」


「うん、ガーディアナと似てるとこもいっぱいあるけど、私の元の世界には魔法とか勇者とか、喋る猫とかは居ないの。」


「カイはこの景色好き?」


「うん!大好きだよ。夕方の畑のキラキラしてるとことか」


「そか!」アリシアはカイの頭をポンと撫でてから続けた。


「お姉ちゃんの世界にもね、ここみたいな綺麗で大好きな所がいっぱいあるの。

それに仲良しの友達、大好きな食べ物。」


「それと……、とっても大切な家族」


「こっちの世界に来た時になんかエライ人なのかな。その人に言われたの」

「こっちの世界がなんか危険らしいの。私がそれを救えるんだって。」


「私だけの特別な力があるって。向こうの世界では普通の女の子だったんだよ。」

「そんな私に、この世界が救えるなら……。絶対救いたい。」


「で……、救えたら元の世界に帰れるんじゃないかってね。」


「だからね、一緒にこの世界を救える仲間を早く見つけないといけないんだ。」


「わたしも、」

「姉ちゃん!!」

カイがさえぎる様に話し始めた。


「姉ちゃんならきっと大丈夫!」

「この村だって、姉ちゃんが来てから急にみんな明るくなってすごく楽しいんだ。」

「姉ちゃん来てからすぐだよ?」

「だから姉ちゃんなら絶対大丈夫!」



「そか、ありがとう、カイ…。」



「アリシア姉ちゃあぁぁん」

サシャとクロウが走って戻ってきた。








「さ、帰ろっか!」


村への帰り道も三人で手を繋いで帰った。








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