第25話 覚醒―――深い眠りから目覚めたらーーー

「ーーー空良―――………!!!」


―――――はっ!?


その瞳孔は思いっきり開く。


「夢か……にしてもリアルな夢だったな…」


ここは……


ソファーに寝ていた僕はその身を起こす。

誰もいない……

なんだ!? この部屋は…


僕はソファーから足を下し、ゆっくりと腰を上げて立つ。


たくさんのショーケースがある。僕は辺りを見渡しながら足を進めて行った。



マネキンか? 人形? ロボット?


……いや、ロボットというか…やや、マネキンに近い…

それにしてもよくできている…。見た感じ人間みたいだ……。


ショーケースに入ったマネキンは中高生から40代前後のパターンが多く、

マネキンなのに、僕はなぜか、見られているような視線を感じていた。


「ホントによくできている…これで、しゃべったらな…」

ポロッと心の声が漏れた時だった。

「ようこそ、私の名前は佐々木優奈だよ。高校2年生、アイドルしてます」

「うっおおお…!? マジか…しゃべった…」

僕は声が裏返るほど驚いていた。足が竦み一歩、後ろへ下がる。

開いた目は瞬きさえ忘れていた。


そこは異様なほど、不思議な部屋だったーーー。


まだ夢でも見ているような感覚にとらわれていた僕は少しの間、

部屋に飾られた数えきれない程のショーケースを漠然と眺めてた。


ふと、僕の視線に見覚えのある女性が映り、僕はその女性が入る

ショーケースの前で足が止まる。

「この女性ひと …どこかで…」


僕の記憶は季節を巻き戻すように中学3年生まで蘇っていく―――ーーー。


そう…あれは防災訓練があった日のことだったーーー。

オドオドと泣き震えている僕の前に救世主が現れた。

―――それが、空良だったね、、、


ブーメランを窓ガラスに投げつけて、割れた窓ガラスから空良は僕を

救い出してくれた。僕はね、それがとても嬉しかったんだ……。


そして、僕と空良が初めて話をした日でもあった。


――なのに…先生達はろくに空良の話も聞こうとせずに、すぐに空良の保護者だけが学校に呼ばれてさ……

空良と保護者の女性は生活主任の猪上先生に注意を受けていたっけ……


「僕はてっきり空良のお母さんだと思っていたけど……」


あの時 ーーー確か、空良は……


『ああ…昨日、学校に来てた人? …お母さんじゃないよ』

『え?』

『私のお母さん今、病気してて療養中なの。愛子さんは私とお母さんのお世話を

してくれている人なの』

『愛子さんていうんだ…』

『うん…』


再び現状は―――、

たくさんのショーケースが置かれた歪んだ空間へと戻った僕は、目の前に映る

動かない女性に熟視していた。


「あの時の女性に似ている……」


そうだ! 愛子さんだ……


なんで、その人がこのショーケースに……


その時、僕は心を揺さぶるような胸騒ぎを感じていた。


「……!?」



そして、嫌な予感が僕の脳裏をかすめていったのだったーーー。

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