第26話 作戦決行!
黒い翼の怪物達との戦いを繰り広げている御伽の夜光団。そこに羽を広げて飛んできた三人の従者達。レーチェルが彼らに作戦の協力をお願いしてきた。
「ねぇ、私から提案があるんだけど…聞いてもらえる?」
「いきなり何?奴らを倒す方法でもあるの…?」
「あるわ。ただし確証は持てないけどね」
夜桜が頬杖をつきレーチェルの作戦というものに疑問を抱く。その周りでは七つの属性の精霊が飛び回っていて、この七体も一緒になって協力してくれるみたいだ。皆不安ではあるが、それでもレーチェルは焦らず話を続ける。
「いい?よく聞いて。見ればわかると思うけど、相手はとんでもなく数が多い。長期戦は不利よ…だから敵をなるべく一箇所にまとめて短期決戦にしたいの。じゃないとあんた達の体力がもたないでしょ?国の被害も抑えたいし、女王様にも負担がかかってしまうわ」
彼女は本気だ。被害を最小限に抑えるためにはどうしたらいいかずっと頭の中で考えていたのだ。団員達を必死に説得して了承を得ようとしている。
「それで…私達は何をすればいいのかしら?」
「私とユミリカとガブリエルは国から離れた場所に敵を誘導する。そうしたらあんた達が一斉に攻撃をして」
「でも空は飛べないわ」
「心配いらないわ、ユミリカが空中でも移動できるようにするから」
具体的な内容をしっかりと聞いた夜桜は、レーチェルに言われたことを団員達に伝言する形で伝える。流れを把握したジョージィは…
「ほぉ…意外と大胆なことを考えるもんだな、あの従者は」
「そういう訳で、これが大まかな流れです」
「わかったよ」
___いよいよ作戦決行
七つの属性の精霊はそれぞれの属性の魔法を使い敵を囲む。そして七色の硬い障壁を作り出し敵の動きを制限する。脱出させないように、一体も目を離さず攻撃するチャンスを伺う。
一方、御伽の夜光団はユミリカのかけた魔法により空中でも移動することが可能になった。頭上からフェアリーパウダーをかけて効果が切れるまでの間は空を自由に飛べる。
「今かけた粉は空を飛ぶことができますが、制限時間があるので注意してくださいね!」
限りある時間を使って、敵を全滅させる。レーチェルが剣に絡みついている茨を操り体に巻きつけ動けなくしたり、薔薇の棘で敵を刺して攻撃する。
「ローズソーンズ」
敵の数を全体の三分の一まで削ることに成功した。それでもまだ多いが、作戦を続行する。
「こっちへ来たか…!」
カヨが建物の上をジャンプしながら次々と襲いかかってくる敵を斬りつける。彼らは口から黒い霧を吐き出し視界を遮ろうとしてきた。
「う…っ!前が見えない……」
「…あと数分でフェアリーパウダーの効果が切れてしまいます、急ぎましょう!」
空中からガブリエルが飛んできてカヨの手を掴む。フェアリーパウダーの効果がもう少しで切れてしまうので、急いでこの戦いを終わらせたいところだ。その動きで、黒い翼の怪物達も二人の方へと向かってくる。
「こちらへ来ている、やはり複数人で来た方向へ追いかけてくる特徴があるみたいだ」
彼らは発見した相手を複数体で追跡するという習性があると理解したカヨは、それを利用して国の端の方へと進んでいく。
「もうすぐで国の外へ引き連れることができる!時間がない…早く!」
タイムリミットが迫っている…早く急げと自分に言い聞かせるカヨ。しかも雲の上であるため国の外というものは地面がないのでフェアリーパウダーの効果が切れてしまえば奈落の底だ。その前になんとか終わらせようと皆は必死の形相をしていた。
「…ここまで来たら…準備は整った」
黒い翼の怪物達を国の外まで追い込み、出られないように御伽の夜光団、レラの三人の従者達、七つの属性の精霊がその周りを包囲する。
「かかってきなさい、気持ち悪いバケモン!このアタシがやっつけてやるわ!!」
ローラが大声で叫び、その合図で全員が魔力を放出し同時に攻撃魔法を喰らわせる。すると武器が輝きだして、それぞれの魔法が繋がり一つの大きな魔法へと変わっていく。それは色が交互に変化して、太い光の光線になった。
「魔法が…ひとつになった!?」
「ま、眩しい…お前ら全員目を閉じろ!!」
あまりの眩しさに直接肉眼で見てしまったらまずいと判断し、ジョージィが目を閉じるよう指示をした。団員達は強く目を閉じる……
「…も、もう目を開けて平気ですか?」
「ああ」
光が消えたので、そっと目を開くライ。黒い翼の怪物達は塵となって消えおりようやく倒すことが出来たのだ。
「やった!勝ったんだ!!
……あれ?何か落ちるような感覚が……」
「うわぁぁぁっ!!!」
ちょうどユミリカのフェアリーパウダーの効果が切れ、空から落下してしまう御伽の夜光団。
…とふわふわの雲がクッションとなりなんとか助かった。雲の下からレラの声が。
「間に合いました…皆様お怪我はありませんでしたか?」
「女王様!」
レラが雲の上に上がってきて戦いを終えた御伽の夜光団に駆け寄り杖を使い傷ついた身体を回復させる。
「ありがとうございます」
「こちらこそ我が国を救っていただき感謝しかありません…!なんとお礼を言ったらいいか…」
エンゼル・エンパイアの危機を救ってくれた御伽の夜光団に何度もお辞儀をするレラ。これで問題は解決したようだ。
…と思っていた時だった…
「!?」
突然景色が変わり、そこは無数の扉がある場所に飛ばされる御伽の夜光団とレラ達。辺りは暗くなっており、部屋の中がうっすら見える。その中から姿が見えてきて黒いローブを羽織った、暁が見た者と同じだ。皆は宙に浮いていて、何もすることができない。体が全く動かなかったのだ。
「うそ…体が……動かない?」
「夜桜、これは一体…?」
「カヨにも同じものが見えているの?と言うことはここにいる全員にも……」
「ただ宙に浮いているだけで声を出せるけどそれ以外は何も…」
誰かが動きを封じて幻覚を見せているのか、それとも…
「もしかして、私達の居場所がすでに黒兵派に気づかれているのか…!」
黒いローブということからこの場所は黒兵派の住処なのか。とにかく早くここから出なくては…皆は脱出しようと必死にもがく。それに気づいたのか、黒いローブを羽織った人物の一人がこちらを振り向く。手を出してきて、襲われる…!
「はっ!?」
目を開けると、元の場所に戻っていた。やはり幻覚だったみたいだ。全員目を覚まし起き上がる。ロロはびっくりしたのか思い切り飛び上がった。
「びっくりした…僕変な夢でも見たのかと思ったよ」
「いいや、夢じゃないぞ。俺も少し前に似たようなものを見た。同じ奴らをな」
「ええっ?」
暁は戦闘中に黒いローブの人物の幻覚を見たと話す。正体はわからないが、黒い翼の怪物も黒兵派の一員だということがわかる。
「目をつけられている可能性は充分あります。彼らは黒兵派が送り込んだ刺客でしょう… 気をつけた方がいいですよ。
話は変わりますがもうすぐここを出るんですよね?その前に話したいことが…」
ついに明日、エンゼル・エンパイアを出発する。レラが団員達に話したいこととは…
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