第24話 失った翼
お昼前、エンゼル・エンパイアの大きな公園で集合することになった御伽の夜光団。皆は昨日精霊に見せられた不思議な景色の影響で、目が冴えているみたいだった。カヨは目をこすりながらライに話しかける。
「おはよう、ライ。何か私…昨日おかしな夢を見て…」
「やっぱり皆見ていたんだね」
「へ?」
「あれから七つの属性の精霊に会って…彼らは人間の姿に変身したんですよ!色々話を聞いて住処に案内してくれて…あと…」
ライはウキウキした気持ちで精霊に会ったことを団員達に熱を込めて話した。魔法の源となる七つの属性の精霊の住む自然に囲まれた庭園を見つけることができたのだから、それはもうワクワクが止まらない。
「アタシも一時的だけだったけどそこへ行ったのよ。そりゃあ綺麗な景色だったわ〜!」
ローラもライと同じく庭園を訪れていて、現実とは思えない場所に感動した様子だった。
自由時間にどこへ行っていたか、どんなことが起きたか、団員達の話を聞いていたジョージィ。彼らの話を聞き終えたあと、次のことについて皆に説明した。
「なるほどな、本当に広いようだなこの国は。そう言えば、女王がこちらに来て欲しいと言っていたから…また王宮へ向かうぞ」
式以来に王宮へ向かいレラと会うことになった団員達。彼女は入口前で待ってくれていたようで御伽の夜光団の姿が見えると、手を振ってくれた。
「おはようございます。あの時はすみません…あれからクララとお話をして彼女の方も前向きに考えるようになれたので、私達は大丈夫です!」
レラは式が中止になってしまったことを改めてお詫びをして、娘のクララと話をしたことも伝えた。今日は御伽の夜光団が国に滞在できる期間があと一日しかないことを理解し、最終日ということで王宮へ招いた。
「確か明日の朝にここを出るんでしたよね?寂しいですね…本当はもっと居てもらいたいのですが………
いえ、貴方達には次の目的があるんですよね。でも…もしお願いできるのであれば、時々こちらへ遊びに来てくれませんか?どうかご検討いただけますと幸いです」
「もちろんです女王様!私からも是非お願いします…!」
少し寂しそうな表情のレラ。今後の彼らの活躍のために今はその気持ちを抑え動向を見守ることに。そこで彼女は小さなお願いとして、時々国へ遊びに来て欲しいと団員達に頼んだ。夜桜は頼みを聞き、笑顔で賛成した。
「私も色々な国を行き来してみたいものです…」
「女王様は…他の国へ行ったことはありますか?」
各地を巡る御伽の夜光団にレラは羨ましそうに手を後ろで組む。その発言が気になったライが彼女に聞いてみると…
「…私は、ここから出ることは出来ません。見ての通り…私には翼がありません。正確に言うと失ったんです」
レラは自分の肩を指差して天使でありながら翼がないということを告げた。そして以前夜桜が感じた違和感が判明する。
「それと…黒兵派との戦いで受けた呪いによって肉体が貴方達と同じくらいになってしまいました。私は翼を失い体も小さくなってしまった…力が弱まった今、残されたこの癒しの力を使って国を守っていかなくてはなりません」
数年前、黒兵派との激しい戦いにより翼を失い少女の姿に戻され現在に至る。
「青空が綺麗で平和な国…私は好きです。だから守り続けていかないと」
「…」
ダンッッ!!!!!
いきなり大きなドアの開く音がした。ガブリエルが慌てた様子でレラに呼びかける。
「レラ女王様!エンゼル・エンパイア入口前にて異常を知らせる通報がありました!」
「え!?」
ガブリエルからの知らせを聞いて、レラは急いで国の入口方面へと向かった。御伽の夜光団の団員達もその後を追う。
___数分後、
「こ、これは…!」
国の入口に到着すると、門番の男性と住人の天使達が意識を失い倒れていたのだ。レラはすぐに彼らのところへ駆け寄り、状態を確認する。
「…脈はありますが意識がないですね…」
「女王様、よく見てください。彼らの翼の一部が黒くなっています…それと、ちぎられたような跡がついていて……何者かに襲われた可能性があります」
彼らの天使の翼にそっと触れるガブリエル。そこには翼の一部が黒くなっており、更には若干ちぎられたような跡があった。周辺を見渡すと、黒い煙のようなものが見える。
元々入国する為には、門番の審査を受け許可された者だけがこの国に入ることを許されるのだが、彼の審査を拒否し物理的に襲撃して突破したものだと考えられる。
ということは……
「その何者かが国に侵入しているかもしれません!ガブリエル、今すぐに国民達に避難命令を!!」
「了解いたしました、女王様!」
「御伽の夜光団の皆様…すみません。私達に力を貸していただけないでしょうか」
「……お前ら、敵の襲撃だ!準備をしろ!!」
「了解!!」
国を救ってほしいと必死な顔で心からお願いするレラ。彼女の頼みにジョージィは首を縦に振り、団員達に戦闘の準備をするよう命じた。
一方国民を避難させるようにレラに命じられたガブリエルは街中を飛び回り皆を安全な場所へ誘導させる。
「皆さん、慌てず落ち着いて移動してください」
一報を聞いたユミリカとレーチェルも到着し、彼に加担する。
「聞きましたよ、まさか侵入者がいるなんて…」
「紛れ込んでいるか、まだ姿を現していないか…どちらかね」
「とにかく、御伽の夜光団も一緒に戦ってくれるとのことなので我々も任務を務めましょう!」
三人の従者は、国民を安全な建物に避難させレラの次の指示を待つ。
___
御伽の夜光団の団員達は、敵がいつ来ても対応できるように静かに待ち構える。と、何かに気づいたロロは大きく目を見開く。
「見て!…あれは何?」
彼の視線の先にいたものとは………
黒い翼が生えており、目は赤く手足の長く鋭い爪の怪物が空を飛んでいる。しかも一体だけではなく複数体存在する。その姿は闇に堕ちた天使のようにも見える。
清々しい青空が灰色のくすんだ空へと変化していく…
「見たことない奴らね。一気に殲滅させないとまずいわよこれ…!」
夜桜はベルト部分に携帯してる二丁拳銃を取り出して黒い翼の怪物を撃ち落としていく。攻撃を喰らった彼らは灰となり消えていくが、まだまだ数は多い。
「敵の数が多すぎてキリがないわね!」
「夜桜、これは私達全員一斉に攻撃した方が良さそうだ!」
「それもそうね。皆…行くわよ!!」
「了解!」
夜桜の掛け声で団員達は武器を取り、怪物達に対抗していく。本格的に戦いへと入るライは、長い湾刀に魔力を集める。
(俺も皆の力に…っ!)
今の自分の気持ちをコントロールして、魔力を集めてるほんのわずかな間にライは自身の今まで見てきたものを思い出す。自分は何をしたいか、何を見てきたか…幼い頃から夢である冒険の最中で見た個性的な魔法使いが使う武器…
彼は閃いた。そしてパッと目を開く…
「武器が…変化した……!」
ライが持っていた湾刀は柄が長いハンマーへと形を変えた。彼は様々な武器へと形を変形させる魔法の力を手に入れたのだ。他の団員達が魔法を使っているところを見て発想を得たようだ。そしてライは気合いを入れて敵に立ち向かう。
「…よし、やるぞ!!」
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