第47話 和泉は
海岸には男子高校生一人と、女子高生と思われる三人が戯れているとしか見えない。併設の駐車場で、それを見ていた和泉灯は愛用の軽自動車に乗り込んだ。エアコンもかけていないが、汗が滴ることはない。
「気体の生命体、正解だ。龍宮」
助手席のバッグからおもむろにスマホを取り出し、ダイヤルをした。
「私だ」
先方が出たのだろう。
「そうか。大目にはできんか。一人の娘をつかまえておいて。ちゃんと秩序は守ったというのに。私が細工した上で送信しておいただろ。より詳細なデータを。それだけでもこちらで何をしていたのかも綿密に知れようものだろうがな。情状酌量の資料としては十分過ぎるだろ」
シートに座り直し、頭を預けた。
「なら、自宅謹慎一か月ってのはどうだ? こっちか? それなら安心しろ。連中は私の生徒だ」
和泉は海岸の方に横眼を流してから、
「それに、よい監視役もいることだしな」
先方が納得したのか、柔和に何度か応答してから和泉はスマホをバッグに放った。その脇には新発見と書かれたシールを張った標本瓶がある。その中にはド派手なウミウシがいた。
「んじゃ、後は若者らしく青々とな」
音もなくエンジンのかかった軽自動車は、ビッグウェーブに乗ったボードのようにして進んで行った。
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