第43話 浜で待つ謙吾が見たサワの本当の姿

 もう日は山に沈んでいく。陰が至る所を染めていく。浜に上がったずぶ濡れの謙吾は、四つん這いで、肩で息をしながらも、海をにらんでいた。

「雪花……」

 波打つ海面が一際弾けた。

「ケンゴ! ユキカを!」

 サワだった。胸の下まで姿を出している。

「にゃろぅ」

 力を振り絞って、海に再び身を沈めて行く。腹まで海水に浸かり、サワを見やった。

「ユキカはここにいる」

 脇にイルカがいた。

「ここに入っている。しばらくすれば回復するから。このまま浜に上げておけ。いいな」

「おい、サワ」

「あやつが追っている。私も向かう」

「お前……その姿って……」

「じゃあな、ケンゴ」

 謙吾の言葉を聞き入れようともせず、フウと一つ笑ってサワは海中へ消えて行った。

 上半身はティシャツを着ておらず、群青色のビキニトップのような衣類を纏い、その下半身は、魚の尾だった。

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