第30話 パソコンにハマる

母さんは僕のメッセージを読んでくれたみたいだった。


あれで意味は伝わっただろうか? 


僕はたったのあの十文字を打つだけで、一時間ぐらいかかってしまった。先が思いやられるな……


でも、僕は文章による表現を絶対に諦めないと決めている。


今回は初めてだったから、僕にとってはなかなか難易度が高かったんだと思う。話し言葉では理解していたけれど、いざ文字にしようと思うと上手くできないものだ。これは慣れるしかないのかもしれないな。


ひらがなはギリギリ全部読める。漢字もよく出てくるものは読める。


もう少し真面目に勉強していれば良かったな、とちょっとだけ思った。というか、全身麻痺で言葉も喋れないし、ほとんど反応のない僕に勉強なんて理解できるはずがないというのがほとんど人の見方だったから、勉強する機会もほぼ無かったのだけど。


母に絵本を読み聞かせしてもらっていたことが、すごく役に立っている気がする。小さい時から、小学校を卒業するぐらいまで毎日寝る前に読んでもらっていた。反応がなくて理解しているかもわからないような僕にそこまでしてくれたことに、本当に感謝しているんだ。


そんな感じで、最近の僕は空いている時間にパソコンばかりやっていた。色々な情報に触れることが楽しくてしかたなかった。


僕があんまりにもパソコンにハマっていたから、母さんは心配して僕に色々忠告するようになってきた。


『ネット依存』なんて言葉を急に言ってきた。ちょっと前には考えられないことだよね。僕はおかしくて心の中で笑ってしまった。そんな言葉は、僕とはあまりにも関係がない、と思うけど、母さんが僕を心配しているということだけはよくわかった。


僕だって、世の中の人がどんなことに興味があるのかなという好奇心はあるから、少しはネットの情報を見てみたいと思ったんだ。でもそれはやりたいことのメインではない。


基本的な目的は最初から変わらない。僕は自分の言葉で自分の想いや考えを伝えたいのだ。

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