1-4-b 仕事の話をしませんか?
星、に見えたそれらは、ヒラヒラと
自分のメタルフレームの眼鏡越しに光の群れを凝視していて、雀夜は息を飲む。
深海にいるような気分ではいたが、まさかそれらしいものが流れてくるとは思っていなかった。
丸い頭と、足のない細い身体。それに小さなツノと、翼のような対のヒレ。
半透明の体の内側には、青く輝く光点がある。中には光点が金色をした個体もいる。
クリオネだった。そのシルエットは。水族館でもめずらしい流氷の妖精。
ただ、雀夜はその遠近感に言葉を失っていた。クリオネたちはまっすぐ向かってきているわけではなく、
「あれが天界の住人ども。要するに、天使だ」
クリオネが親指ふたつほどの大きさに見えてきたところで、ヨサクが言った。
「魔法少女の仕事は、ひとことで言やぁ、あいつらを喜ばせる」
星の群れに釘づけになっていた雀夜に、ヨサクはどこかおどかすように言った。「おっと、いかがわしい意味じゃないぜ?」「先輩、怒りますよ?」ユウキにたしなめられれば、てひひっ、とあこぎなごまかし笑いを
「天使どもは、戦争が終わった途端に、戦争に興味をなくした。元々
水のない海を泳ぐ天使たちは、確かにただの動物のようだった。
「だから、心置きなく
「話が長いですわ」
氷柱が鳴る。
そう感じられるくらい、不意に空気すべてが振動した。眼下にそびえる巨大な柱、その表面から伝ったように。
こだまする声に呼ばれ、つぼみの先がほころぶ。
氷柱の
まるで脈動。最初は自分の心音とも混同しかけるようなささやかな音。しかし次第に、大きく、速くなっていく。次第に、順調に、急激に、突然に。
打音が単純さを捨てる。反復する
音が熱を持つようにふくれあがったそのとき、爆発する竜巻のように激しく、花弁はひらききった。
共に、重くのびやかなる音色が深海を貫く。
花弁の内からまろび出たのは、金色の管を巻いてひねって風を迷路に誘いこむ
両わきには、らせんにねじれたまま伸び縮みする
半球状の
浮遊する奇形の楽器たち。思い思いに音を鳴らすその真ん中に、彼女はいた。
肌に貼りつくような薄く白い衣をまとい、
咲ききった黄色と白の花びらは、
「ヒェー」ヨサクの浮かれた声がした。「さっすが《
「ルカッ!」薄緑色の小さなキッカも叫ぶ。「軽くなさい! エリア外で
「
オレンジのルージュ。その薄い唇がほころび、空気をゆらした。楽器たちのかき乱す中を、
レモンイエローのマスカラ。その閉じたまぶたもまた、そろりと切なくひらきだす。
「
空気に触れる首もとには、吸いつくように飾られた、
「お喜びを。これが最初と、
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