三人の彼女達


▲作者まえがき(追記)

いつも応援ありがとうございます。

なぜか夜の九時と朝の九時を間違えて、1日早く出ちゃってました。申し訳ないですorz

カクヨムコンテストのため、次回の更新は今日夕方頃を予定しています。







美咲視点




「そういえば~」

「なんだ?」


「なんで“あんなの”のとこ居たの~? 陽も翔馬も」

「……あの三人、“一応”クラスメイトだろ。ドリンクバーで見かけたから部屋で話してたんだよ」


「ふーん。変なの」

「翔馬。今日のお前ちょっと変だぞ」

「んなことねーよ」



カラオケから帰る時。

明らかに機嫌の悪い翔馬君が居て、陽君のあの言葉はより一層現実味を帯びた。



《――「もう俺、そっちのグループには入れないから」――》


《――「さっきのカラオケの件で、思いっきり翔馬から嫌われてさ」――》



思い出す。

本当にそうなら、やっぱり朝日君は――



「アイツ面白くねーわマジで」

「も~白けたよね~。なんか途中で居なくなったし!」

「そういえば何で居なくなったんだ?」


「なんかあの三人と仲良くなったらしいぜ」

「うわっ“あんなの”と?」

「おう。だからしばらく“こっち”には来ないってよ」



軽く笑ってそう言う翔馬君。

本当の事は、私は全部知ってるのに。



「まー私は美咲が居ればいいし~」

「……ほんとなの、翔馬君」


「! な、なんだよ美咲? そうだって」

「良いだろう陽の事は。他に仲良くなったヤツが出来たなら良いじゃないか」

「……」

「もーどうしたの美咲~」



……もうやだ。

平気で嘘を付く翔馬君にも、それを言えない自分も嫌いだ。


陽君も居ないし。

いっその事こんなグループ、抜けた方が良いかもしれない。



「なんでもないよ、皆。ごめんね」


「美咲ってたまに怖くなるから焦るよな」

「そういう時もあるさ、部活で疲れたんじゃないか」

「そうそう~やっぱりエース様は違うもんね~」


「あはは、うん。そんな感じかな」



嘘の笑顔を張り付けて。

明日からの学校が嫌になりながら、私は彼らと一緒に帰った。




現在へ




《——「あの子マジムリなんよね〜。ヘンじゃない?」——》



昼休み、クラスの……柳さん?

確かカラオケの時に居た、何を考えているか分からない女の子だ。


いつもずっと無口で、真由が気味悪いと言ってよく嫌がっていた子。

変わった髪色だなぁとは思っていたけどその程度。



「はっ、はっ……だ、大丈夫? 柳さん」



そんな彼女と、陽君が入り口で息を切らしながら入ってくる。

扉をガラッと開けて。授業開始1分前に。



「!」

「チッ。なんだアイツ……気持ちわりぃ」



隣席の翔馬君が呟く。

わざわざ口に出さなくても良いのに。


……あの二人、昼休みどこか行ってたのかな?



「ヒメっち!」

「もう何やってるのヒメちゃん!」


「はは……じゃあ俺はこれで」


「あっ」

「ってもう時間ヤバイで!」



そして、それを迎える……名前、何だったかな。

あっ思い出した。鈴宮さんと木原さんだ。

カラオケのときもそうだったけれど、この三人はよく一緒に居るよね。


……正直、陽君との接点が全くないと思うけれど。



「ね、翔馬君。陽君ってバーベキューの時誰と組んでたの?」

「! あぁ……あの三人だ。恥ずかしくねぇのかなアイツ」


「……そっか。やっぱりそうだったんだね」

「? おう」



《——「ちょっと陽から肉パチってくるわ」——》



バーベキューの時、止める間もなく彼は走っていった。

その後しばらくして戻って来た時、もの凄く不機嫌になっていたのを覚えている。


やっぱりあの時からなんだ。

陽君が、彼女達と仲良くなったのは。





「皆、ばいばい」


「おう」

「部活頑張ってね~!」

「また明日な、美咲」



HRが終わって、彼らに手を振る。

三人は、そのまま彼を素通りして帰っていった。


挨拶すらせず。

これまで、本当に友達と思っていたのかも疑わしいそれ。


ただ、これでようやく彼に声を掛けられる——そう思ったけれど。



「えっと、どうしたの?」

「……ほらヒメっち」

「黙っててもダメですよ」



気付けば、鈴宮さん達が彼のところに居た。



《——「なんかあの三人と仲良くなったらしいぜ」——》



小馬鹿にした様に笑う、翔馬の台詞を思い出す。

あながちそれは、間違いでもないのかもしれない。



「……そっか」



思わず呟く。


そこに居る陽君は、私達と居た時よりも――遥かに楽しそうで。

ずっと見れなかった、彼の表情を引き出す彼女達へ。



「っ」



こう思う資格なんて、私にあるわけ無いのに。


“羨ましい”――不意に出てきたその感情を、私は強引に仕舞い込んで席を立った。



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