第5話 もう一度会いたい



 翌日、エヴァンゼリンが目を覚ますと自分の部屋で眠っていた。

 しかし、手にはジェフリーの瞳と同じアメジストのブローチが輝いていた。


(ヴァンパイアに出会ったのは、夢ではなかったのね)


 それから、何度もジェフリーの家のあった場所を見つけようと、墓場を探して歩いたが、地下室の入り口らしいものはどこにもみつからなかった。


(ジェフリーが言ったことを信じて元気になろう。そうしたら、きっとまた会ってくれる)


 エヴァンゼリンは、嫌いだった肉も食べ、バラの苗をもらってきて庭に植えた。

 毎日、太陽の光を浴び、バラの世話をしているうちに次第に咳が出ることも減り楽になってきた。


 だからこそ、あのヴァンパイアのことが思い出されてならなった。


 お日様の下、自分が元気でいられるのはジェフリーのおかげだと思うと、どうしても彼に会いたかった。


 太陽に手をかざしながらも、思い出すのはやさしいアメジストの瞳をした青年のことばかり。



 墓地の地下で、ずっと一人で生きていたのだろうか?



 あの優しいヴァンパイアは……。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る