第13話 お弁当

「それでは。開けてもいいかな? 」


 体育館の端で美桜と横に並んで座りながら、大貴は尋ねる。


「うん。どうぞ」


 頭を縦に振る美桜。


 その仕草を認識し、大貴は弁当袋を丁寧に開ける。


 2段式の弁当箱を弁当袋から取り出し、体育館の床に優しく置く。


 弁当箱を2つに分け、それぞれの蓋を開ける。


「うわぁ~~。美味しそう~~」


 弁当箱の中身を目にし、大貴は思わず感嘆の声を漏らす。ただでさえ憧れのイベントにも関わらず、さらにテンションが上がった形だ。


 弁当の中身は定番であるソーセージに卵焼き。他にも、ひじきやきんぴらごぼうが入っていた。


ご飯は白米でなく、オムライスであった。オムライスの真ん中には程よくケチャップが載る。男子がテンションの上がる弁当である。


「食べてもいい? もう我慢できないよ!! いち早く食べたい!! 」


 弁当から美桜に視線を移し、大貴は興奮気味に美桜へ聞く。正直な欲求を口にした形だ。


「う、うん。どうぞ…」


 大貴の勢いに若干押され、美桜はぎこちない返事になる。少し身体は後方に退いていた。


「ありがとう。それじゃあ、いただきま~~す」


 しっかり両手を合わせ、軽く頭を下げながら、大貴は食事の挨拶を済ませる。そして、即座に箸を掴み、まずはメインのオムライスから手を付ける。


 箸を用いてオムライスを1口サイズ摘まみ、素早く口に運ぶ。


 モグモグ。


 口に運んだ後は、これでもかと早く咀嚼を始める。待ちきれなかったのが行動から伝わる。


(なにこれ。美味すぎる!! )


 あまりの美味しさの余り、思わず胸中で唸ってしまう大貴。オムライスは程よい卵の甘味にケチャップライスが絡、非常に美味しかった。噛めば噛むほど旨味が出る形だ。


店のオムライスよりも余裕で美味しかった。味の好みは有るのは否定できないが、大貴にとって美桜の作ったオムライスの方が好みであった。


「美味しい!! 美味しいよ!! 中山さん!! ご飯美味しい弁当を俺なんかに作ってくれてありがとう!!! 」


 ストンッと脳内に生まれた感謝を、美桜を見つめながら伝える大貴。それほど大貴の心は美桜の弁当に動かされた。


「へ…。それは良かったけど。そ、そんなに褒めてくれても、これ以上何も出ないよ~~」


 照れ隠しをするように、サッと大貴から目を逸らす美桜。頬は仄かに赤い。分かりやすい反応だ。


「そんなの必要ないよ。この中山さんの手作りのお弁当だけで十分すぎるよ!! 」


「そ、そんなことないと思うよ。多月君、大袈裟すぎるよ~~」


 未だに目を逸らし続ける美桜。大貴を直視できない状態だ。


 そこから箸は止まらず、おかずとオムライスを交互に食べる形となった。ずっと口内に旨味が残る形となった。それほど美桜の弁当は大貴にとって最高の物だった。

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