　特訓から２週間が経過した。徐々に特訓の成果が現れ始める。少しずつだが、体育の授業で美桜が活躍する姿が増える。得点力は皆無だが、アシストがちらほら見られるようになった。

ドリブルにも少しだけ余裕が出来て、コートを出来るだけ広く見えるように成長している。これだけ出来れば素人の集まりの体育のバスケで活躍できる。そのため、少しずつだが、体育で美桜は目立つ存在になった。

一方、大貴は相変わらず、バスケ部のエースの田嶋と同じくらい目立っている。もしかしたら大貴の方が上かもしれない。それほど大貴のパスカットとアシストは優れている。

今日も昼休みの時間に体育館で特訓を続ける。

いつもと同じように、美桜がドリブルを突き、動く大貴に向けて正確にパスを出す練習だ。

慣れたおかげで以前よりもパスの精度は格段に上がり、ボールに遊ばれることも結構減った。完全に減ったわけではない。そこで美桜の運動神経の悪さが明瞭に浮き出る。

ゴール下に走り込んだ大貴に、ゆっくりだが美桜からの正確なパスが通る。

「ねぇ！ねぇ！私の今日の体育でのアシスト見た？今のようなアシストだったよね？」

　美桜が体育の授業で活躍したエピソードを嬉しそうに語る。自分が出来たプレーが忘れられないのだろう。満面の笑みだ。

「うん。見てたよ」

「パスが通った時すごい気持ちよかった！！パスを受け取ってくれた子もシュートを決めてくれたし！！どうだった？あのパスはナイスアシストだった？」

　興奮して饒舌な美桜が評価を求めるような問いを口にする。

（これは褒め言葉を待ってるよな）

「あのパスは良かったよ。ナイスアシストだった」

　嘘偽りのない正直な気持ちで評価を下す大貴。

　美桜のバスケの下手ぶりを初めて目にした時は、どうなるかと今後が不安だったが、想像以上に特訓の成果が現れている。美桜は運動神経は壊滅的だが、素直なため大貴の指示を全て素直に受け入れる。その結果が体育の授業でも現れている。

「そ、そうだよね！！師匠の多月君に褒められると、何だかすごい嬉しいな～～」

　仄かに染める両頬に両手を当て、満面の笑みを浮かべる美桜。気持ちが表に出て、左右に身体も揺らす。

「よ～～し！！もっと体育で活躍するために、特訓がんばろ～～」

　今日もキリの良いところまで特訓は続く。

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