第12話 かづくんの配信③

今日は金曜日。そう、スペシャル配信日だ。


「よし。V準備して…ライブ配信ボタンを…ポチッとな」


―ライブ配信が開始しました―


ライブ配信をしてたった10秒で約300人のファンがライブに来た。


――かづくん、やっと会えた!

――今日も今日とて推しが生きてる…ぐふ…

――今日なにするのー?

――もう体調は万全?

――うわ!もう1000人来てるじゃん!早ぁ

――今日もかぞくが通常運転ですな


いつも以上にコメントが流れてくる。流石に、早すぎて一つ一つしか読めない。

それぐらいみんなが楽しみにしてくれていたということだから僕にとっては嬉しいことだ。


「みんなやっほー。とうとうこの日が来ちゃったね。早かったな。今日はね、雑談しようと思うよ。あとは、オフ会についての質問も受け付けるよ〜」


――オフ会のグッズ紹介して〜

――あれやないの?アクスタやないの?

――キーホルダーはないん?

――メモ帳は?

――なぜにメモ帳?使えないやん

――メモ帳なんやから使えなきゃおかしいやろ

――いやそうじゃなくて、かづくんの顔面が印刷されとるんやで?

――推しを汚せるわけないってか?

――そゆことや


なるほど。みんな、グッズの詳細を知りたいのか。あれ、概要欄に貼らなかったっけ?まあいいや。前回忙しくてこれていない人も中にはいるだろうし。


「わかった!グッズ紹介するね!えっと、まずは、ハンドタオル、で、アクスタ、ボールペン、シャーペン、キーホルダー、マウス、マウスパッド、カレンダー…だね。これで以上かな。」


――気になるお値段は?!

――テレビショッピングかよ

――オークション

――は?


「ハンドタオル500円、アクスタ2000円、ボールペン700円、シャーペン500円、キーホルダー900円、マウス3000円、マウスパッド2500円、カレンダー2500円って感じ。」


――ちょっと待ってちょっと待って

――メモ追いつかない

――もっとゆっくり喋って

――多すぎて何がなんだかわからん


「ああ、大丈夫だよ。概要欄に貼っておくから。エースにも載せておくから安心して。そうだよね。僕も言われたらわかんなくなっちゃうよ。」


――ちゃんとかづくんも人間だった

――親密感

――そりゃ喋ってんだから人間だろ

――もしかしたら異世界から転生してきたのかも…?

――まあ、あんたらのご想像におまかせするよ


月宮<かづくん!お久しぶりにわたしの名前を呼んでくれませんか!>


――かづくーん!古参のつきみやっちがコメントしてるよ〜!

――うわあ、私も呼ばれたいぃぃ…

――かづくん!私のことも呼んで!


少し水分補給している間になにかすごいことが起こっていたようだ。


「あ!月宮さん!あ、これはもう呼んだっていうカウントになる?もう一回言っとこうか。月宮さん!いつもありがとう!」


――うわあ2回も呼んでもらえるとか

――みほのことも呼んでよ〜

――月宮さんやっぱ古参なだけあってすごいな

――名前呼んでくれるのもまじで好き


「あ、そうだ。みんなに聞きたいんだけど」


――おお、久しぶりにかづくんからのご質問

――どうぞどうぞ遠慮なく

――かづくんがとことん話す場なんだからね


「みんなってさ、揚げ物好き?」


――全然好き

――むしろ揚げ物ないと生きてられない

――デブ活の開幕だよ

――油使ってる食品ってほんと美味しいよね

――罪な食材

――食材は決して罪ではない


「僕さ、揚げ物は好きなんだけど、2日連続で食べれなくて。」


――え、なんで?

――胃もたれとかそういう関係?


「そうそう。胃もたれしちゃってさ。あとはなんか、油ものが胃にこびりつくという感覚があるっていうか…」


――あーwなんとなくわかるようなわからないような

――うん、言いたいことはわかる。


「だから、好きだけどちょっと受け付けないみたいな。」


――なるほどね〜

――じゃあ彼女さんは気をつけないとね?


「え?彼女?いないよ?」


――冗談だよ冗談

――逆に怪しい

――やべ、バレちまったか

――お前誰だよ

――バナナ食べてるチンパンジーです

――きも

――流石に悪口がすぎる


「まあ…取り敢えず今日は終了します!みんな風邪引かないようにね!じゃあね!」


僕はみんなからの別れの言葉を見届けてから、ライブ終了ボタンを押した。

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