第10話 かづくんを身近で感じてるような…?

「ねえ、茉音。私は決めたよ。かづくんのオフ会に行くよ。」


私は登校途中に突然言う。


「え、逆に行かないつもりだったの?」

「いやさ、茉音が高木くんはかづくんなんじゃないの〜?って言ったせいでそれが本当のように思えてもやもやしてたんよ。」

「え、それは普通にごめん。そっか、柚木って冗談通じないタイプの人間だっけ?」

「そうだよ、多分ね。どんな冗談を言われても真に受けるタイプかも。」


茉音がまじか〜ごめんとまた謝ってしまった。いや、謝られるつもりじゃなかったんだけどな。


そういえば、明後日に迫っているのだ。例のあの配信が。

あぁ…やっと…やっとかづくんに会えるのだね…!!

明後日のためにどんどんお金稼がないとだよね!

あぁ…早く会いたいなぁ…


***


『柚木さん、俺、柚木さんのことが好きです。付き合ってください!』

『本当に私でいいの?!かづくん、こんな私と付き合っちゃってもいいの?』

『ずっと柚木さんみたいな可愛らしい女の子に出会いたかったんです。柚木さんだからいいんです!お願いします!』


「柚木さん…!先生に指名されてるy…」

「こちらこそお願いします!」

「…え?」


私は自分の言った寝言で起きた。あたりを見回すと、クラスメイト全員が私の方を見ている。え、え、何が起きてる?


「小林さん、もしかして寝言言いましたか?授業中ですよ。この三角形の、角度をsinθ《サインシータ》で表すとどのような答えになりますか?」

「え、えっと…」

「2/3《2分の3》だよ(小声)」

「に、二分の三です。」

「正解。後半もちゃんと聞いてくださいね。」


ああああ。今日も今日とて恥をかいてしまった…

私とかづくんが付き合うなんてできるはずないのに。

でもなぁ…夢に出てきたかづくん、高木くんそっくりだったんだよね…

もうやだなぁ…私どんだけ高木くんのこと意識してるんだよ…?


***


「ゆーずきさんっ!一緒にお昼食べませんか?」


いきなり高木くんが私のところへ来て、顔を伺ってきた。


「いいけど…いきなりどうしたの?」

「まあまあいいからいいから。一緒に食べること滅多にないですよね。一緒に世間話しましょうよ。」


さあさあ、行きましょうと私を促すので私は行くが、今の時代男子が女子に向かって世間話しようなんぞ言うか?女子同士でも言わんぞそんなこと。


そうして私達が来たのはラウンジ。誰もいない。ちょっとドキドキするこの雰囲気。


高木くんは椅子を引いて、こちらへどうぞと言う。私は仕方なくそこに座る。

一瞬だけ高木くんの手に触れて少しドキッとしてしまった。


「じゃあ食べましょうか。いただきます。」


高木くんは手を合わせてそう言うと、お箸を持ち食べる。

私は高木くんに聞きたいことがあった。


「ねえ、高木くん。」


高木くんは口にあるものを全て食べ終えてから、私の目を見て、はい?と言う。


「高木くんはなんで私に対して敬語なの?そして、なんで「柚木さん」って呼ぶの?」


私が一気に質問すると、高木くんは、ではまず最初の質問に答えますと言って続ける。


「敬語の理由は、柚木さんに憧れているからです。柚木さんって本当に熱心で、お友達にも優しくて、授業中は眠ってしまいますけど、そんな柚木さんも可愛いなとか思ってます。」


高木くんの真剣で優しい目で「可愛い」と言われるととてもドキッと来る。

顔、赤くなっていないだろうか。


「2つ目の質問ですが、小林、と呼ぶと僕の身分が高いみたいに思うし、小林さんだと距離が遠いように思うし、柚木と呼ぶと、なんだか彼氏のような近い距離すぎるなぁと思い、行き着いた先が「柚木さん」だったんです。」


話の途中と言えど、「柚木」と呼ばれてまたドキッとしてしまった。

胸がドキドキ言っている。なんなのこの気持ち…?

なんだか、かづくんに「柚木」と言われたような感覚…?


「柚木さん?」

「え?」

「ボーっとしてますけど…お弁当食べないんですか?」

「え?あ、ああ食べるよ。いただきます。」


私達は黙々と食べる。黙々と食べているというよりかは、私が全然話せない状況だからだ。なにを話していいのかわからない。


「柚木さん、好き…」


高木くんがそう言うと、いきなり咳き込んだ。

うぇ?!好き?!高木くんに告白されたんだけど?!

私が戸惑っていると高木くんは続ける。


「すみません、あの、柚木さん、好きな人っていますか?」


なんだよ、好きな人かよ。今話してる人って言ったらどんな反応するんでしょうねぇ!!?


「いませんよ。」


うわあああめっっっちゃ嘘付いたぁぁぁぁぁ


「そうなんですね。安心しました。」

「え?安心しました?」

「え?あ、ああ、いや、それはそういう意味ではなく、いや、そういう意味かもしれません。なんかすみません変なこと言って。なんでもないです。」


高木くんは何事もなかったかのように食べ続けた。

そういう意味なの?!そうじゃないの?どっちなの?そういう意味だとだいぶ話が変わってくるんだけど?


気になりはしたが、ひとまず気にしていない素振りを見せて昼食タイムは終わった。

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