第8話 やっぱり…?

――柚木さんって可愛いよね


この言葉がここ一週間頭から離れなかった。

高木くんは隣の席だが、隣の席に来るたびに、胸がドキドキする。

高木くんはそういうつもりはないのだろうが、私にとってはとても大きなことであった。


「おはよう、柚木さん。」

「あ、お、おはよう…!!」


高木くんは私の顔を見て挨拶してくれただろうに、私は昨日のこともあって、高木くんの顔を直視できなかった。


「そうそう。俺、柚木さんにプレゼントが…あ、俺のと・も・だ・ちからのプレゼントがあるんだけど、受け取ってくれる?」


ええええ?!昨日あんな事があったのにまだ私をキュンキュンさせるおつもりなのですか?!


「うん。う、受け取るよ…!」


高木くんは、よかった、と言い私にとある小さい紙袋を渡してきた。


「チョコクッキーとアールグレイティークッキーが入ってるよ。あと、この紙は、手紙だってさ。」


へえ。かづくんってお菓子作りも得意なんだ?


中身を見ると、私の見覚えのあるクッキーだった。確か…駄菓子屋さん?


いや、誰もなんて言ってない。何を期待してんだか。


「ありがとう。」

「友達に伝えておくね。」


そう言うと、高木くんは教室を後にした。



****



「ぁ゙ぁ゙ぁ゙ぁ゙あ゙」


放課後。誰もいない教室の隅っこで一人、自分の席で伸びをしながら怪獣のような声を出す。


「なんちゅう声出してんのよ」


いきなり声がしたと思えば茉音まのんであった。


「びっくりした。いつの間にそこに?」

「だって、いつもは帰りのHR終わったら誰よりも早く私のクラス来るじゃん。そんな柚木が今日は一段と遅いなんて、ちょっと心配しちゃうでしょうよ。そして、私から行こうとしたらこの様よ。私になんちゅう声聞かせてんだか。」

「そんなこと言って、私が無事だったことに安堵してるくせにぃ〜!」

「うるさいなぁ…」


私達がそう話していると、茉音のいるドアとは逆の後ろのドアから男の子が入ってきた。高木くんだった。


「あ、ごめん。お取り込み中でしたか。」

「そんな、お取り込み中もなんも、そんなんないから安心して。」

「よかった。」

「ははーん?さては、私より先にboyfriend作りやがったな?」

「無駄に発音いいのやめて?」

「彼氏じゃないですよ。ただのクラスメイト。まあ強いて言うなら、僕の友達を知っている友達かな?」


茉音は、友達?なんぞや?みたいな顔をしている。皆さんはお気づきかと思うが、かづくんのことであろう。


「そうなんよ。高木くんのお友達のファンでさ、高木くん経由でお友達とちょっとやりとりしてんのよ。」

「え、それって、Vtuberかづくんのこと?柚木がリアコな。」

「その通りなのさよ!でもね、不思議なんだけどね、高木くん、すごいかづくんに似てるんだよね〜」

「そうなんだ?じゃあもう、高木くんはかづくんでいいんじゃない?(笑)」

「私は半分そう思ってる(笑)」


私達が笑っていると、高木くんは、僕はじゃあこれで、と言って教室を出ていってしまった。


「え、もしかして私悪いことしちゃったかな?」

「柚木はなんもしてないと思うよ。かといって、私も何もしてない気はする。」

「まあ、いいや。帰ろ。」

「うん。帰ろ。今日さ、百均行っていい?買いたいものあるんさ。」

「いいとも、我が友よ。ともだけに。」

「うん。おもんない。」

「辛辣っ」


そんな会話をしながら学校を出た。茉音が言っていたように、やっぱり高木くんはかづくんなのかな…?

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