第3話 かづくんの配信①<かづくん視点>

19時半。この時間は、いつもの配信時間だ。


いつもの、といっても月曜日と金曜日と日曜日しか配信はしていないのだけど。


なぜその曜日なのか。それは、学生さんだけじゃなく、僕の配信は社会人の方も見てくれている。だから、一週間の始まりで憂鬱な月曜日の夜に配信をすることで僕に癒やされてほしい、そして金曜日はみんなでお疲れ様会、日曜日は僕に癒やされながら明日から頑張ろうという感じ。


「ヘッドホンの準備オーケーと。Vの準備もオーケー。よし、配信するか。」


僕は、パソコンの「ライブ開始」ボタンを押す。


――かづくん、待ってたよ〜!

――今日もかづくんに癒やされに来ました!

――今日は何するの〜?


チャットに次々とコメントが来る。僕の視聴者は女性が多い。いつの間にか僕は、「癒やされ系Vtuber」になっていたらしい。ついこの間、ネットに僕の話題が載っかっていた。高校生なのにこんなに広まって平気なのかと少し不安ではあるが、お金は稼げるし、一石二鳥であろう。


「みんなこんばんわ〜かづでーす。今日はね、ほぼフリートークな感じです。だから、コメントでじゃんじゃん僕に話題振ってね〜」


――かづくんって何歳なの?

――かづくんのオフ会とかないの〜?

――コラボ予定とかありますか!

――コラボするなら優里のんちゃんとしてほしい〜

――確かに!最近有名になってきてるよね〜


たくさんコメントが流れてくる。


「年齢は言えないかな〜。オフ会はね、今のところ開く予定はないかも。みんなに会いたい気持ちは山々なんだけどね〜。コラボは本当にしてみたい!優里ゆりのんさんか〜今度DMしてみようかな!」


僕はそう一気に話す。視聴者の言う通り、最近優里のんという新人Vtuberが有名になっているらしい。元々優里のんは、Vtuberではなく、Vtuberの絵を描く仕事?をしていたらしい。だが、とある日に自分もVtuberになろうと思い立ったらしく始めたとのこと。最初は絵師だということは伝えずにやっていたらしいが、どこかで「優里のんはあの天才絵師だ」と誰かが呟き、噂になり今に至る、ということ。


――かづくん今日何食べた?

――私は今日はハンバーグ食べた!

――いやあんたには聞いてないのよ

――わかってるけど一応ね

――需要なさすぎて草


「今日?夜ご飯ってこと?えっと、肉じゃがうどん!まじであれ美味いんだよ。肉じゃがをうどんにかけるだけ。俺すげえ好きなんだよね。」


――あ!今俺って言った!すっごい貴重!

――いつもは僕って言うけどたまに出てくる俺の破壊力半端ないよね

――がちそれな

――推しててよかったって思うもん

――共感の嵐


僕は普段は「僕」というのだが、たまに自然と「俺」と出てくるのだ。

それがファンの間では「萌え」になっているらしい。


――月宮さんが¥1000のスパチャをしました

――お!ナイスパ!

――ナイスパです!


「え!月宮さん、毎回スパチャしてくれるよね。ありがとうございます!」


月宮さんは、所謂古参だ。僕がVtuberデビューをして初めて来た視聴者さんだ。

月宮さんにはいつも感謝している。月宮さんは、自身のSNSで僕のことを拡散してくれている。歌詞動画もたくさん作ってくれるし、グッズも買ってくれる。

こんな素敵なリスナーさんは大事にしなきゃ。


「あ、ごめん。もうそろそろ時間だから配信終わるね。また金曜日に会おうね!」


――もうそんな時間かぁ〜時が経つのは早いなぁ〜

――またね〜かづくん!

――金曜日も楽しみにしてるね!

――もう既に会いたいw

――今のうちに堪能しとけ〜


「じゃあみんなばいばーい」


僕はそう言って、ライブ終了ボタンを押した。

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