第2話 え?かづくん?
「あれでしょ?寝坊したのって、またかづくんとかいうVtuberの配信遅くまで見てたんでしょ?」
「合ってるけど間違ってるよ。配信は配信でも誕生日配信だったの!見逃せないやつだったの!」
「で?額は?」
「今月ピンチだったから今回は3000円。」
「うわ。今回もかなり飛ばしてんね。」
「別にいいでしょ、私のマネーなんだから。」
私がかづくんにスパチャをしていることは家族全員が知っている。承諾も得ている。ただし、投げるスパチャは自分の財布から。ママは何も協力しない。そういう約束ならスパチャしてもいいと言われている。だから私はバイトを始めた。
バイトをしてから、今月はこんくらい使いたいから今日はこの額、とちゃんと限度を付けるようになった。まあ、金遣いは荒いのだけど。
「あ、そうそう。今日転校生来るっぽいね。」
「え、ガチ?どんな子?」
「私が聞いたところによると、そこそこイケメンの男の子らしいよ。歌が得意だって。」
「え、すごい。歌得意なのってほんと羨ましい。」
「柚木も上手いじゃん。」
「私はかづくんみたいにもっとうまくなりたいの!」
「はいはい、わかったよ。」
私はなんでもかづくんに結びつけたがる。食事もかづくんの好きなもの、ゲームもかづくんの、服装だってかづくん。これはもう、私の人生かづくんに振り回されていると言っても過言ではなかろう。
「柚木!遅刻する!走ろう!」
こうなったのも、私が遅くまで起きてたからですね…(泣)
***
「はぁ、はぁ、はぁ」
なんとか教室に5分前に着いた。かなり走った。オタクとは思えないくらいめっちゃ走った。明日足が筋肉痛になりそう。やっぱり運動しないと体力持たないよねぇ…
「ほらおまえらー席つけー」
この男はうちらの担任の
高身長で、彼女持ちだとかなんとか。結構女子から人気で彼女持ちをあーだこーだと言われていたが私は微塵も興味はない。
「もう噂が出回っているようだが、転校生が来た。入ってきていいぞー」
先生がそう言うと、ドアが開き、男の子が入ってきた。
あーなるほどね。確かにそこそこなイケメンだね。
でも、どこにでもいそうな顔してる。
「皆様初めまして。
私は高木奏都の声を聞いて、なにかが横切った。
え?今の声、すっごいかづくんに似てるんだけど…?
ま、まさかね。よくいるじゃないの、声が似てる人なんて。
自分に似てる人は世界で3人くらいいると言われているのだし、別におかしいことはないわ。
でも…ちょっと気になるよね。なんせ、かづくんを愛してやまない女ですもの。
「じゃあ高木、一番窓際にいる小林の隣が空いてるからとりあえずしばらくはそこに座ってくれ。」
「わかりました。」
え、ちょっとまってちょっとまって。それって私の隣という解釈でお間違いないですよね?やばいやばい。かづくんではないとはいえ、かづくんみたいな男の子が私の隣はまずいって!
「よろしくね、小林さん。」
「よ、よろしくおねがい…します、」
ああああなんで私はこういうときに限って相手を困らせちゃうような挨拶しかできないのよ…!本当にごめんなさい高木くん。そんなつもりは一切ございませんのでお気になさらずに…
でもやっぱり、高木くんの声、かづくんに似てるんだよなぁ…
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