第4話 かづくんがチラつく

昨日の配信も楽しかったなぁ。

昨日は1000円しかスパチャできなかった。

1000円もしてるじゃん、と思うかもしれないが、私にとっては

うめぇ棒を1、2個あげた感覚だ。


今週はまじで稼がなくちゃ。金曜日には3000円貢ぎたい。

言ってなかったけど、一応私<月宮つきみや>って名前でかづくんに認知されております。


「あの…小林さん」

「は、はい?!」


いきなり、かづくんに…いや、高木くんに声をかけられた。

喉まで出かかった「かづくん?!」という言葉を飲んで、あの返事となってしまった。


「あの、もしよければ、教科書見せてくれない?僕、まだ十分に教科書買えてなくて。」

「ぜんっぜん平気だよ。むしろ大歓迎。あ、ごめん。大歓迎は嘘ではないけど大げさすぎた。」

「ふふふ。小林さんって面白いね。」


ぐは。かづくんの声に似ている高木くんに「小林さん」って言われたよね。

でも、かづくんじゃないからだめだね(?)


というか、逆に高木くんのことをかづくんだと思ってみちゃう?


「机、くっつけてもいい?」

「あ、うん。いいよ。」


高木くんが自分の机を動かして、私の机と並行させた。

同時に、高木くんが私の方に近づく。もし、高木くんがかづくんだとしたら、

相当イケメンだぞこりゃ。こんな人がVtuberという形で配信しても良いのか?

顔出して配信した方が人気度爆上がりじゃない?


「小林さんって、国語好き?」


突然そんな質問をされて驚いたが私は答えた。


「うーんまあ、嫌いってわけじゃないけど好きってわけでもないかな。高木くんは?」

「こんな質問をした俺が言うのもあれなんだけど、国語あんまり好きじゃないんだよね。俺はどちらかというと英語が好きかな。」


ちょっと待って。英語が好きだっていうのはわかったんだけど、今、「俺」って言った?いつもは「僕」なのに?


なんでこんなにもかづくんと被る要素があるんだろう。


「今、高木くん、俺って言ったね。」

「あれ、また僕、俺って言ってた?なんか、たまに自然に出ちゃうんだよね。」


自然に出る。かづくんもそうだ。かづくんも自然に出ちゃって、それが視聴者の中ではかなりの萌え要素となっている。


なんでだろう。かづくんじゃないのに、かづくんと会話しているみたい。

推しが目の前にいるみたい。そんなはずないのに。


高木くんが真剣に授業に臨んでいる中、私は高木くんの横顔を眺める。

横顔もイケメンだなぁ…。かづくんもこんな感じなのかな…。

いやいやだから!!!かづくんじゃないんだって!


でもなんでだろう…ずっと見ていられる…



「…さん。小林さん…!!!」


ん…誰か私の名前呼んだ…?


「小林さん起きて!」


起きて…?なにが…?ここは…学校だ!!!


「は、はい!!」

「小林さん、先生に指名されてるよ」

「え、あ、すみません!寝てました!」

『相変わらず、小林は正直だな。寝てたんじゃ、ここの問題わからんか。』

「すみません…わかりません…」

『じゃあ、隣の高木に答えてもらおう。高木、わかるか?』

「今となっては昔のことだが、竹取の翁という者がいた。野山に分け入って竹を取っては、様々なことに使っていたそうである。です。」

『ありがとう。完璧だ。』


すごいなぁ…。私とは相反して、すごい真面目だよね…かづくんもすごい真面目なんだよね。なんだろうな。高木くんがかづくんに見えてくる。かづくんが毎回どこかでチラつくんだよなぁ〜

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