第1話 ギャンブル依存症の母と、娘。_8

人との関わりでも、関係の深さにはレベルがある。


 まったくの他人

 店の店員や駅員など、公共や街の人

 近所の人

 親戚

 家族

 両親

 子ども

 夫

 など


人と接するうえで

自分にとって気持ちのいいことや

ポジティブに感じられることをしてもらったとき、

誰に対してでも、笑顔で返したり、褒めたり、感謝を述べたりすることができる。

それは、誰もがそうだろうと思う。


しかし、困ったことや嫌なことをされたとき、

人間関係によって態度が変わってくるだろう。

お客様であれば我慢をするし、

知人であれば一時的に受け止めて、考えることもある。

家族や両親であれば、反論をしたり、怒ったりするかもしれない。


母は基本的には人に対する分別をわきまえている。

家族以外の人に対して、失礼な態度を取ることはない。

また、どちらかというと我慢強い人だと思う。

「仕事で嫌なことがあっても、家族のために我慢する」

そう、よく言ってくれていたし

実際に長く働くことができていたのは、

忍耐力があるからだ。


ここ数年のことなのだが、

ちいさなことで臍を曲げてしまうことが多くなってきた。


 〇〇さんから電話連絡がこない。

 〇〇さんに荷物を送ったのにお礼がこない。

 〇〇さんから、勧誘まがいの書類が届く。

 など


 きちんと説明をして相手に直してもらう

 こちらの事情を伝えて改善してもらう

 双方の誤解があるかを確認しあう

 など


ほんの少しの努力で済みそうなことを

自らすることが苦手のようなのだ。


こういうことが起こると

「嫌い」

「会いたくない」

「〇〇さんが悪い」

と言ったあと、心を閉ざしてしまう。

心を閉ざしてしまった後は、

母の前でその人の名前を出すこともはばかられるようになる。


名前を出すだけで

「いや」

「もういい」

という調子になってしまうのだ。


わたしは母の態度について

年齢的なものだと考えていた

高齢者特有のわがままだから

その程度のことは誰にでもありえるのではないか。


しかし、素人判断でいたことが

ことの本質を見誤ることになってしまっていた。





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