第1話 ギャンブル依存症の母と、娘。_7

母は朝4時に起きて

父の朝ごはんとお弁当をつくり、

6時前に父を仕事に送りだす。


その後は、スポーツ新聞の切り抜きをして、

レース表の馬の名前だけをノートに貼る。


聞き流しのミニドラマをYouTubeで流しながら、

馬の名前と向き合う時間がはじまる。


夕方に父が家に帰る少し前に

夕飯の準備をするまでは、

洗濯や、庭先の水やりはするが、

それ以外はずっと椅子に座っている。

ここ2年ぐらいは、ずっとこの生活を送っている


わたしはYouTubeで誰かが配信している、

「スカッと系」のミニドラマがあまり好きではない。

家族、友人、会社の人間関係のトラブルについて、

誰かが悪者で、その悪者を退治するという筋書きだ。

母は朝起きてから寝るまで、そして寝ている間も

YouTubeを消さずにこのタイプのミニドラマを流し続けている。


また、日本を褒めたたえている動画もよく見ている。

他国を貶めて日本を上げるタイプの動画だ。

おすすめに上がってくるままに、それらを流している。

日本が褒められると、とても機嫌がよくなり、

私が通りかかると、これを見ろと言ってくる。

また、わたしがたしなめたりすると

さらに日本と日本人を褒め、

他国については国名を聞くだけで機嫌が悪くなる。


愛国心は悪いことではない。

わたしも日本はとても好きだし、

日本人は誰からも尊敬される言動と生き方であって欲しい。

ただ、母は(家の中だけでだとは思うが)

すこし、物事を客観的に捉えることや、

他者の気持ちに対する想像力が欠けているところがある。


以前はここまで極端に、

日本と他国のことで感情的になる人ではなかったのだが、

最近、ちょっと変だ。


わたしがここで書いているのは、

人種や国家間の問題ではない。

母が日本に生まれ、日本人であること。

そこから通じる母自身のアイデンティティについて、

褒められること

貶されること

比較されること

それに、とても敏感だということなのだ。


自分に対する他者の言動に敏感で、

固執するところがある。

それは、次回整理してみたい。

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