第1話 ギャンブル依存症の母と、娘。_6
人は、変わるか、変わらないか。
自堕落な性格の人が、勤勉になるか。
浮気性の人が、浮気をしなくなるか。
浪費家の人が、倹約清貧になるか。
または、その逆。
依存症は、性格とは違うので、
自らの意思だけで変わるものではない。
母の発言にフォーカスして、
振り返ってみると、
競馬をはじめて30年の間に、
人生にとって
彼女のなかでいくつかの
転換期があったと想像される。
例えば、以前母は
「500万円は貯めて息子に渡したい」
と、言っていた。
弟が20歳の頃には家を出て自活しているので、
せめて店を出すときのために
貯金をして渡したいと言っていた。
しかし、いつからか、弟へのそうした気持ちは消えてしまっていた。
最近、ある時そのことを尋ねると、
「なんで? あり得ない」
と、返ってきた。
今まで、母と弟の間に
なにかトラブルがあったわけではない。
それでも、長い年月のなかで
親子の心の距離が離れてしまうような
日常の辛さや、悲しさがあったのかも知れない。
お互い知らず知らずのうちに。
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