第3話 しこしこしこしこしこしこしこしこしこ、醜男ォー
「なんだよ、これ。なんで寝取られてるんだよ。。。」
虎太郎は肩を上下にして、激しい呼吸をしながら、混乱しているようだった。
それもそのはずだ。
名前も知らない、顔も見たこともない、モデルかと疑うほどの美貌を持ちながらに、虎太郎の彼女の胸を揉み、そしてあんなことや、そんなことまで。
女がだ……
もう一体、なにがなんだか分からなくなる。
どうして小町はあんなに顔を赤くしている。
どうして、小町は虎太郎ではなく、見ず知らずの女とそういうことをしてしまっているのか。
「はぁ……はぁ……はぁ……」
虎太郎のいつもの、饒舌な舌は複雑に絡まり合い、うまく脳と連携してくれない。喋ろうと思っても、言いたいこと、言わなければならないことが伝達されず、行動ができない。
そして、あろうことか、小町に対して言ってはいけない言葉までをも、言ってしまっていた。
どうしてこうなってしまったのか、虎太郎自身も分からない。
正しいこと、間違っていること、普段は得意に語ることなんて、いくらでもできるのに、どうしてこういう切羽つまった時は、どうしようもなく自分の感情を優先してしまうのだろう。
自分の感情がどんなに間違っていると知っていても、どうして衝動は理性を吹っ切って、本能をむき出しにしてしまうんだろう。
どうして……
(俺だってまだ小町としたことなかったのに!!!!!)
と真っ先に思ってしまったのだろう。
「こ、こたろう……。わ、わたしね……違うよ。この人にむりや……」
「おいおいおいおいおいおいおいおいおいおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおいいいいいいいいいいいいいいいい!!!!!!!!なんだよなんだよなんなんだよぉぉぉおおおおおおぉぉお!!!!!」
突然、その大柄で美しい女が大声をあげた。いや、奇声をあげた。
耳をつんざくような、不快感のある声。
ここまで、人を不快にして怯えさせる声を虎太郎たちは初めて聞いたかもしれない。
「自分の彼女があぁぁぁぁぁぁぁぁ、女に襲われているところを見てえぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ、第一声が『なに寝取られてるんだよ?』」
彼女は小町から豪快に離れて、下半身をそのままにして虎太郎に近づく。
虎太郎はその気迫に押されて、後ずさる。
終いには、尻もちまでついてしまう。
「お前はなんて自己中心的で思いやりが皆無で、相手の気持ちの少しも汲み取ってやろうとしなくて、彼女が泣いているところを見ても、どうせ自分の初めてを取られたほうに心傷してしまって、そしてその挙げ句に、私に対してよりもかなりの大きな負の感情を彼女に対して言葉で表現してよぉおおおおおおおおお!!!!」
彼女はついに、虎太郎の胸ぐらを掴み、虎太郎を宙に浮かべた。
すごい力だった。普通の女性には不可能なその怪力。
これでは、男も太刀打ちできないであろう、そんな馬鹿げた力。
「お前はなぁああああああああああああ!!!!!!」
虎太郎の顔面に大量の唾が飛び散る。
「私が見てきたなかでも一番のクズだ。クソクソクソクソクソ男だ。もう救いようのない地獄に行ってもまだまだ死に足りないような、童貞クソ野郎だ。そうだろう、まだ童貞なんだろうぅああああ??彼女の様子を見てればわかったよ。あああ???」
苦しい。首が締まる。
苦しい。心が締め付けられる。
くるしいくるしいくるしいくるしいくるしいくるしいくるしいくるしいくるしいくるしいくるしいくるしいきもちいいくるしいくるしいくるしいくるしいくるしいくるしいくるしいくるしいくるしいくるしいくるしいくるしいくるしい
「どうせ、彼女がいるのに、勇気も出せずにずっと今までずるずると彼女にしょうもない日々の会話やらなんやらを強要してたんだろう?どうせ彼女から可愛がられてたんだろう?カッコ悪い男だなぁあああああああ!!!!!あああああ????」
気持ち悪い気持ち悪い。どうして俺がこんな目に合わないといけないんだ。どうして俺はこんなにも巡り合わせが悪いんだ。なんなんだ、こいつは!!!!どうして俺だけ。どうして俺だけ。。。
どうして俺だけ、こんなにも不幸なんだ!!!!!
「地味で冴えなくて、たったひとりの女を自分だけのものだと過信して、なんの進展も自ら望んでいなかったくせに、一丁前に性欲だしくさりやがってよぉぉぉぉぉぉ。お前みたいなやつはなぁ。一生、まっくらな自室のなかでちっちゃい画面みながら、幻想みたいに美しい官能をよぉ、見ながらよぉ。しこしこしこしこしこしこしこ……」
女の顔が快感で歪み始める。
「しこしこしこしこしこしこしこしこしこしこしこしこしこしこしこしこしこしこしこしこしこしこしこしこしこしこしこしこしこしこしこしこしこしこしこしこしこしこしこしこしこしこしこしこしこしこしこしこしこしこしこしこしこしこしこしこしこしこしこしこしこしこしこしこしこしこしこしこしこしこしこしこしこしこしこしこしこしこしこしこしこしこしこしこしこしこしこしこしこしこしこしこしこしこしこしこしこしこ」
大きな長い長いその舌がだらんと、下へ垂れた。
「しごいてればいいんだよぉおおおおおおおお、
【続く】
____________
一旦ここで切ります。
よろしくお願いいたします。
※この印象的な言葉はとある作品にあったものです。脳みそを震わせるよくも悪くも力の籠もった言葉を生み出し続けている作者さんを私はとても尊敬しております。
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