第10話 夜明け

 三人で砂浜で焚火を囲み他愛無い話をした。トオルは高ニの夜バイクで隣町まで走った時のことを覚えていた。


 俺は二輪免許を取った日の夜トオルを家まで迎えに行き、後ろに乗れと言った。


 走っているうちにハイになって、


「ユーラシアまで行こうぜ!」


 と叫んだ俺にトオルが「ユーラシアは国じゃないよ!」と突っ込んだのと、ネオンの輝く街を夜風を切って走り抜けたことだけ、やけに鮮明に覚えている。


「いいなあ、ロマンチック」


 砂に木の枝で絵を描きながらサトルが茶化す。「そんなんじゃないから」とトオルが返す。


 そう、俺たちはそんなんじゃない。それが、そうだからよかったんだ、ずっと。


「自首するわ、俺」


 きっとサトルが弁護してくれる。有罪になっても、塀の中で生き抜く。それしか俺には残されていない。


 水平線には朝陽が昇っていた。


 

                   了

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私達は朝が来るのを待たない たらこ飴 @taraco-candy

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