第4話 ロビン

 ロビンと話したのは、エチカの電話から一週間後のことだった。コロナ禍を理由にBeemというテレビ電話での会議だった。俺とエチカの他に、アキオというニキビ面の太った眼鏡男も参加した。PCでの作業の殆どは彼の仕事だという。


 日英ハーフで金髪碧眼のロビンは、俺とは全く違う種類の人間だった。彼は俺に二時間かけてビジネスの説明をした。要は死にたがっている人間を安らかに逝かせる手助けをする仕事で、死にたい人間をサイトで募り、応募者とcollegueカレギューというメッセージアプリで連絡を取り合う。安楽死に使うのは紙コップ一杯の液体の薬。名前も、どこから手に入れた物かも分からない。


 ロビンは嫌いな類の人間だった。人の話を聞かず喋りたいことを喋る。自分に酔っているようにすら見えた。だがその話し方やリズムと声音には、相手を陶酔させる何かがあった。


 彼は安楽死によって人を、世の中を救うのだと言った。違和感こそあったが、死を自ら選択する考え方には賛同できた。


 応募者を選定するためのカウンセリングは、青山という医師が電話で行う。選定する上で重要なのは、その人間が日常生活で耐え難い苦痛を感じているか、心の底から死にたいという意思があるかどうか。カウンセリングをクリアしたら、診断書の提出などが求められる。


 俺の仕事は、「クライアントの思い出づくり」だった。死ぬ最後の日に願いを叶えてやること。それ以外の情報はなかった。俺は悩みもせずに了承した。とにかくお袋に送る金が欲しかった。それと、他の理由もーー。

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