第6話 間違えて持って帰ってた (冬野視点)

勇気を出して私は立花くんを一緒に帰ろと誘った。彼は渋々承諾し帰ることになったのだけど....。


私から誘ったのに立花くんに話しかけられないよぉー。


立花くんに「可愛い」と言われてから恥ずかしくて彼を直視する事ができない。


私は横目で立花くんをチラチラと見るが彼も恥ずかしいのか目が合わない。


やっぱり嫌だったよかなぁ....。


そんなことを思ってしまう。しばらく一緒に帰っていて思った、ものすごく帰り道が被る。少ししたら別れると思って彼を誘ったのにこんなに一緒だなんて....!


さすがに話しかけた方が良いかなぁ。私は立花くんの方を見た。


───っ!!立花くんと目が合ってしまった。


不意に私は視線を逸らす。


な、何で見てたの立花くん.....。頬が熱くなるのを感じ話しかける事が出来なくなった。


そうして驚く事に私の住むマンションまで立花くんと同じだったのだ。


立花くんが驚いた顔をする。


た、立花くんと同じマンション....。


「冬野さんてもしかして引っ越して来たの?」と立花くん。


「うん、今は一人暮らししてるの」


もっと小さい家で良かったのに親がそれを許してくれなかったんだよなぁ。


そうしてエレベーターに乗る。私は自分の降りる階のボタンを押した。すると立花くんも一つ上の階を押した。


一階違いなの....。


そうしてエレベーターが止まりドアが開く。


「それじゃあまたね立花くん」


「う、うんまたね冬野さん」


立花くんと同じ....同じマンション何だ....。恥ずかしくも少し嬉しいと思ってしまった。彼ともっと仲良くなれる気がしたから....。


家に入り電気をつける。どこか寂しさのある無駄に広い部屋。実家はこれ以上に広かったので私はこの部屋の方が気に入ってはいる。


家に帰って私は制服から部屋着に着替え、カバンの中を片付けているとある事に気がついた。


あれ....この教科書....今日忘れたはず。


教科書をひっくり返し気がついた。『立花 和樹』名前の欄にそう書いてあった。


あ、私間違えて持って帰ってきちゃった.....!ど、どうしよう一個上の階出し届けに行こうかな?でも今はタイミング悪いかもだし....。


私は頭を悩ませる。


こういう時連絡先知っていれば言えるのに....連絡先?....立花くんの連絡先....欲しい....。私はそんな欲が出てきてしまった。


いやいやダメだよ私、とりあえず明日学校で返そ...。

私は教科書に『立花くんの間違え持って帰っちゃってたごめん』と書いた紙を挟んだ。





朝、私は朝少し早くに学校に行き、立花くんの机に教科書を置いた。


しばらくして立花くんが来て机の上にある教科書を手に取った。私の挟んだ紙を彼は読んだ後何かを書き始めた。


そうして私の机の上にその紙を置いた。


私は紙を広げると『ありがとう』と書かれていた。


ほんと立花くんは優しいなぁ。私は小さく微笑んだと同時にまた思ってしまった。立花くんの連絡先が欲しいと───。


授業中も私はその事ばかり考えていた。


頼んだら教えてくれるかなぁ。


いつの間にか彼の方を見ていたことに私は気が付かなかった。


スマホを手に取り廊下を歩きながら考えいると知らない男が話しかけてきた。


「あの、冬野さんぼ、僕と連絡先交換してくれませんか?」


連絡先....。連絡先ぃ!と私は立花くんにそう言われたように思ってしまい期待に胸を膨らませ前を向いた。


.....誰この人。立花くんとは似ても似つかないような男がそこにいた。


「あなたと交換するわけないでしょ」と私はそう吐き捨てそいつから離れた。


何なのちょっと期待させないでよ....。私は今の男に少し腹が立ってしまった。


今日の放課後頑張って頼んでみよう....!


私はそう心に決めた。

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