第5話 同じ帰り道

冬野さんの誘いを断れず一緒に帰ることになったのだが....。


やばい....何も話せない。───というか冬野さんを見れない.....。


だんだん自分の言ったことが恥ずかしくなっており、彼女を直視できない。


ま、どこかの道で別れるだろう....。

この時の僕はそんな呑気な事を考えていた。


この道を右でここを左にってあれ?冬野さんもこっち何だ。


そう思い横目で冬野さんを見ているとその視線に気づいたのか彼女と目が合った。


お互いにハッとなり目を逸らす。


何なんだほんと....付き合いたてのカップルか!とツッコミをいれたくなる。


そうしてどの道を曲がっても全て彼女と被ってしまう。


だんだんと僕も彼女も驚きを隠せなくなりチラチラとお互いを見始める。


これどこまで一緒何だ.....。


そうして僕はマンションに住んでいるのだが少しづつ姿を現してくる。


そうして僕達は同じマンションの同じ号棟まで一緒だったのだ。


嘘だろ....こんな事るのか


僕と冬野さんはここまでの偶然に驚き少し見つめ合っていた。


「冬野さんてもしかして引っ越して来たの?」


中学に彼女がいればさすがに気づくからな。


「うん、今は一人暮らしをしてるの」


───っえ、一人暮らし?このマンションで。家族全員で住める広さがあるこのマンションで一人暮らし....。

───冬野さんの家絶対金持ちじゃん!


すんなりとんでもない事を言う冬野さんに僕は驚き固まってしまった。当の本人は不思議そうな顔をしている。


そうして僕と冬野さんはエレベーターに乗った。


「それじゃあまたね立花くん」と冬野さん。


一階違い....。


「う、うんまたね冬野さん」


そうしてエレベーターのドアが閉まり一つ上の階に登る。


ドアが空いた後僕は早歩きで家まで向かう。


冬野さんと同じマンション....それに一人暮らし....何なんだこの状況わぁぁ!僕は心の中でそう叫んだ。


そのままの勢いで家に入った。


「おぉ和樹おかえり」と女の声が聞こえた。


「姉さん...」


僕と同じ茶色の髪を一つにまとめぱっちりとした瞳をしている。名前は花楓(かえで)だ。姉さんは大学生で一人暮らしをしている。なのでたまにしか実家には帰ってこない。


「和樹帰るのこんな遅かったっけ部活でも入ったのか?」


「いや、入ってないけど」


そう言うと姉さんは顔をニヤリとさせた。

その時僕はまずいそう思った。


「じゃあ何で遅いんだぁ」と詰め寄ってくる姉さん。


「友達と遊んでたんだよ」僕は姉さんに顔を合わせずそう言った。


「和樹って友達と遊ぶタイプだっけぇー」とニヤリ顔の姉さんは僕と顔を合わせようと覗き込んできた。


「最近は遊ぶようになったんだ」


「ふーん」と言う姉さん。多分信じて無いよなぁ。


姉さんがこうなると厄介だ僕の嘘はまるで通じない。


「彼女出来たんじゃないのぉ」と姉さん。


「違うよ」


「なら好きな人?」


「だから違うって」


今日はやけにしつこいなぁ。


すると姉さんは人差し指を顎に当て悩む顔をする。


そろそろ家にあがらせて欲しいんだけどなぁ。姉さんのせいでさっきから玄関から動けずにいた。


すると姉さんは顔をハッとさせた。何か思いついた顔だ。


「そうだ!綾香ちゃんでしょ」と見当違いのことを言う姉さん。


「綾香?綾香はそんなんじゃないよ」これは普通に答えられた。


「えぇー違うんだぁ。高校で再会したからあると思ったのにぃ」とまた悩む顔をする姉さん。


「姉さんそろそろ退いてくれない?」


今日色々ありすぎて疲れてるんだよなぁ。


「じゃあ言うまで退かなぁい」と顔をニコッとさせる姉さん。


はぁーめんどくさいなぁ。


「姉さんしつこい」僕は姉さんを少し睨んだ。


「ごめん、ごめん冗談だって」と笑いながら言う姉さん。


やっと家に入れた。


おしゃべり好きの姉さんが帰ってくると家族は賑やかになる。親も姉さんとの話しに夢中になるので僕は自由でいれるのでそこそこありがたい。


たがこの時一つ思った事がある。冬野さんは同じマンションに住んでいるもし姉さんとばったり会ったりしたら....。考えるだけで全身が震えた。


明日には姉さんは帰るし今回は大丈夫だろう。



夜ご飯を食べ僕は部屋に戻る。


明日の用意でもしとくか。僕はカバンの中から今日使ったノートや教科書を出した。あれ?無い....。一時間目で使った教科書が見つからないのだ。


学校に忘れてきたのかぁ....。と僕は思ったがすぐにそれは無いと気づいた。帰る前に机の中を覗いて確認したんだから。


じゃあどこいったんだと僕は少し考えた後あることを思い出した。


あ、冬野さん!そうだ一時間目用意を忘れた冬野さんに教科書見せたんだった。冬野さん持ってるか確認しよ───って彼女の連絡先知らないじゃん。





朝いつものように学校へ向かう。教室には冬野さんが既に座っていた。


僕はの机の上に何かが乗っているのに気が付き近づく。


あ、昨日なかった教科書だ。


そうして教科書を手に取ると間から紙切れが落ちた。


何だろ....。僕はその紙を拾い開いた。


『立花くんの持って帰っちゃってたごめん』と書かれていた紙。


この字冬野さんだ。やっぱり冬野さんが持ってたんだ。


僕は席に座りその紙に『ありがとう』と書いてそっと渡した。


冬野さんはその紙を見て小さく微笑んだ。


今日はまた冬野さんの様子が変だ。あの時見たく授業中も僕を見つめてきている。


今度はどうしたんだろ。いつもより刺々しい冬野さん。


廊下で誰かに話しかけられていたが一言言って立ち去っていく。


一体どうしたんだろ冬野さん....。



--------------------

読んで頂きありがとうございます。


短いですが冬野視点もあげようと思っています。





  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る