反乱編あらすじと解説文


○「反乱編」あらすじ


 作戦直前にも関わらず、シェールたちは失踪したティロを探していた。倒れていたリィアの特務ノットから得た「ティロは先に首都へ向かった」という情報を信じ、予定通りシェールたちは首都へ進軍することになる。


 辿り着いた首都は未明からの軍本部の大規模な火災で混乱していた。リィア兵も反乱軍もなく消火と避難に追われている間に反乱軍の実行部隊が軍本部を掌握、反乱は達成される。


 その後代表者たちだけ集められ、極秘の会議が行われる。そこでリィアの第二王子が誘拐され、更にこの火災を引き起こした張本人がティロではないかという疑惑について話し合われた。シェールとシャスタはティロが亡命を企てるならかつて勤務していた山奥の関所から逃れるのではと推測を立てるが、そこでシャスタが未だにリィアの特務として潜伏していたことが発覚する。


 シャスタはティロと第二王子を追いかけて関所へ急行するが、既にティロは関所を抜けた後であった。知らせを受け取った首都では反乱軍の代表フォンティーアによりリィア王家とそれに連なる氏族の処刑が断行される。ティロと第二王子は死亡扱いすることが決まり、反乱は様々な疑問を残しつつ終了する。


 反乱が終わったリィアの首都で、シェールはフォンティーアから勧誘され、セラスも共に剣技の修行でリィアに残ることになる。シェールは元上級騎士隊筆頭代理のラディオからザミテスとティロの行方について問われ、ティロが重度の薬物中毒であったことを知る。シェールはラディオにティロが生きていることだけを告げ、ティロについての資料をもらうが本人の供述とは異なる不可解な点があった。


〇反乱編リンク

https://kakuyomu.jp/works/16817330656813658108/episodes/16817330661627755828


○キャラ動向


ティロ(24)

 消えました。そして第二王子を誘拐して再度亡命するという暴挙に出ました。そのせいで新リィア政府に公式に死亡したものとされました。


 そしてラディオ代理から明かされた、彼が睡眠薬だけでなく麻薬中毒であったという事実。これがひとつのティロが隠しておきたい秘密でした。彼を語る上で「薬」は欠かせない存在になります。この世界ではこういった薬物の使用が違法になっているわけではありませんが、やはり現実世界のアル中のように薬に溺れるというのは恥ずかしいという認識はあります。その恥よりも忘れたい何かが彼の中にあったようです。



シェール(27)

 とりあえず頑張って反乱軍の代表は務めきりました。しかしその後の進路を巡って大喧嘩。最終的にフォンティーアに身柄を引き渡され、補佐官としてこき使われることになります。彼自身は優秀なため仕事はできるのですが、どうにも対人関係や生活態度に問題があることが明らかになってきます。


 今回手先が器用で家事能力が異様に高い割に人間関係の距離感がおかしい、という面が見えました。そして会食を非常に苦手とするという属性も明らかになりました。ちなみに外でセラスが携帯食料を勧めていましたが、そのくらいなら人前で飲食も大丈夫みたいです。ついでに携帯食料は大嫌いみたいです。


 彼の全てに関してはセリオンからの手紙に書いてあるみたいですが、フォンティーアが読んで号泣するようなことが書いてあったみたいです。アルゲイオ兄妹にも「随分よくなった」と言われているくらいなので、昔の彼は相当酷かったみたいです。



シャスタ(24)

 リィア特務から逃げてきたと言いつつ、実はリィア特務の裏切り者でした。そして思いの外重い過去を背負っていたことが判明します。事件編では彼のことが書き切れないのでダイジェストみたいになってしまいましたが、彼もティロ並にかなり問題を抱えていました。


 現代日本でわかりやすく言えば、彼はカルト宗教二世といったところです。どこかの施設に隔離されて変な教義を叩き込まれて、その後保護されたけれど普通の社会では不適合を起こして予備隊にぶち込まれたというのが簡単な経緯です。そういうわけで作中では最も革命思想を憎んでいる人物のひとりです。


 そしてティロに執着する理由について「自分が一番不幸だと思っていたらもっと不幸そうな奴がいて、仲間だと思った」というような主旨のことを述べていました。リクが呆れるように彼は自分の素直な感情を言語化することを非常に苦手としています。その代わりあることないことに関しては自信満々に語ります。



ノット(22)

 リィア特務から新しいキャラが登場しました。今回さらっと流しましたが、シャスタの言葉通り彼は特務の中でも一、二を争う手練れです。リオが何故彼を呼んだのか、というのは後に明らかになります。



リク

 ビスキ代表の反乱の人。そして突然わけのわからない男から「お嬢さんをください!」をされて困った人。ちなみに娘のリノンはお母さんが内戦によって死んでいて、お父さんの男手ひとつで育てられてきたような感じで、そして反乱軍率いているお父さんのそばにいるので最低限自分の身は自分で守れるくらいの護身術を身につけているような普通の女の子です。



フォンティーア

 新リィア政府の中心となったシェールの新しい主人です。クルサ家の当主として長年監視の下軟禁生活を余儀なくされてきましたが、晴れて政権を奪取したことで新リィア政府の当面の代表として活動をしていくことになりました。


 長いこと軟禁状態にあった彼女は政治運営などの知識は豊富ですが、麻薬の知識などはないお嬢様育ちです。しかしやるときはやる意志の強い人で、自ら処刑で手を下すなど冷徹な面も持ち合わせています。そんな彼女が読んで号泣するセリオンからの手紙はどんなものだったのか、というのは後ほど明らかになります。



シャイア/ロドン

 反乱軍の代表の人。今回目立った動きをしていませんが、今後「この反乱とは一体何だったのか」という話題になると浮き上がってくると思います。



リード

 今回名前だけ出てきた親衛隊の最強と言われていた人。この時点で既に斬り殺された後なのですが、「あいつがやられたのか!!!」というインパクトだけで何度か名前が登場します。



ライラ(25)

 ティロが消えたので反乱をする動機の一切を失って「もうやだー! あたし帰る-!」と燃え尽きた人です。これを国家の一大事にやられたらたまったものではないのですが……。


 この話最大の謎として「何故ライラはこんなことを仕出かしたのか」というのがあります。シェールには何度も「だってティロが可哀想だったんだもん」しか言いませんし、彼女からはそれ以上の話は聞けそうにありません。彼女が何かを語ってくれそうな機会が来るのを待つしかなさそうです。



ラディオ

 元リィア軍上級騎士隊筆頭代理。ゼノスとザミテス、ティロについてある程度把握している人物として登場します。彼も叩き上げ組なので心情的にゼノスに近いところがあるためにティロに多少の肩入れをしていますが、ティロに謹慎処分を下すなど職務はきちんとこなす人です。


 基本的に合理的に仕事を進めたがるタイプの人なので、上級騎士内の忖度を面倒に思っていた節はあります。そのため忖度の世界で生きてきたザミテスとは何かと合わなかったようです。それでも帰ってこないザミテスのこと一応心配はしていたみたいです。



○内容解説


《第1話》


「ノットは油断したの?」

→ここで明らかになりませんが、ノットは特務で一二を争う剣技の腕の持ち主です。正直シャスタでも本気でやれば敵いません。そんな彼がティロと言えどもあっさりやられるのは一体どういうことなんだということなのですが、それはティロ視点で明らかになるでしょう……。



「戦勝祈願の馬」

→証書の偽造をしているシェールは手先が器用で、包み紙を利用して馬を作ったりできるようです。それを見てセラスが何かを思うところから、この紙の馬には何か特別な思い入れがあるみたいです。



「聖獅子騎士団」

→リクが震え上がる、リィアの特務よりも怖い過激派集団。サフィロが聖名と聞いて、リクはシャスタがこの聖獅子騎士団で育てられたことを察して思わず同情してしまうくらいの酷い集団です。この聖名を嫌っていること、そして予備隊時代にやりたいことがあると言っている辺りでシャスタは革命思想を異様に嫌っていることが窺えます。そしてあっさりとリクがシャスタの追求を緩めたのも、現代日本で例えると不本意にカルト教団で育った人に対して哀れむような感情に近いです。



「14の関所を暗記している」

→ティロも亡命をしてきましたが、どうやらシェールは亡命というものに敏感なようです。何故彼が亡命をしたがったのか、そして何故証書の偽造なんかやっているのかというのも全ては彼の生い立ちが関わっています。



《第2話》


「何故シェールはセイムに怒っているの?」

→後で明らかになるシェールの詳細を知ると、このセイムの言葉全般はかなりシェールをムカつかせるものになっています。ただ彼の言うとおり、彼らは「兄」という属性が共通していることだけははっきりしていることです。



「革命思想と反リィア思想」

→ティロがライラに語っているところがありましたが、この二つは明確に異なります。革命思想にも様々あるようで、リクが言うとおり聖獅子騎士団の思想はかなり偏ったものだったそうです。



「聖名持ち」

→聖獅子騎士団という過激派組織に在籍していたことへの蔑称。ろくでもない思想を子供に押しつけていたみたいです。



「俺もあいつも同じ」

→シャスタの言いたいことをまとめると、予備隊で出会ったティロと自分を重ねているためにティロの身に起こることは自身のことであると思ってしまうとのことです。ところでティロはシャスタのことをどう思っているんでしょう。その辺はまた後ほど。



「顔見知りに酒に睡眠薬」

→そう言えばティロはザミテスにも一服盛っていました。彼と睡眠薬の関係はなかなか切れないものみたいです。事件編ではどうしてもティロ視点にはならないために「不眠で辛そうだ」くらいしか皆思えないのですが、相当深刻なものだそうです。



「ヴァシロ・ラコス・リィア」

→シェールは「シェール・オルド・アルフェッカ」を名乗り、リィアの王子は「セイム・リィア・ラコス」「フォルス・リィア・ラコス」なのですが何故王様の彼はリィアが後ろに来るのかというと、これは作中の王族の決まりで「王族は王経験者から二親等まで認識する」「一親等の王族は王家の名が先、二親等の王族と血族以外(婚姻含む)は王家の名が後」という決まりがあります。わかりやすく言えば言わば王子王女と呼ばれる存在は前、それ以外の孫とか婚姻関係にある者は後ということです。ヴァシロはダイア・ラコスの息子としてリィアの王女と結婚して王になっています。そのため彼は婚姻したものとして元からのラコス家の名前が先に来ています。この設定は今後かなり重要になってきます。例えば御家騒動を抱えた人がいましたよね……?



「銃あったの?」

→今まで話の中で出てこなかったのですが、一応この世界にも銃はあります。ティロも予備隊で銃の扱いについては習っていると言っています。ただ高価で実用性に乏しいというのと、単にこの世界の人たちが異様に剣技が好きなので専ら剣が使用されているだけです。現状で銃を扱っているのはティロのような特殊な教育を受けた人か、狩猟などで至近距離で獲物を仕留めるときくらいです。そのため市井の人からは「野蛮な田舎者の道具」として認識されているところもあります。処刑など至近距離から即死を狙うのであれば、銃は効果的ですね。誇り高き剣士などなら「鉛玉などで死にたくない、潔く首を落としてくれ」と頼まれることもあるとかないとか。ちなみに大砲などは存在し、海戦などではバンバンやってます。トリアス山では大砲が使える地形が少なく、あまり活躍しなかったようです。



「自決では意味がないんだ」

→大悪人は裁かれるべきであり、自決は罪を逃れるパフォーマンスと取られてもおかしくないというヴァシロの考えです。ただ父親の罪を被って代わりに処刑されるというのはどうなのかというのは今後突き詰められていく問題です。



「今際のヴァシロの言葉」

→この時点ではヴァシロのどの言葉がシェールに刺さったのかはわからないと思うのですが、彼もオルド国王だった父親をリィア軍によって処刑されているのです。もしかするとヴァシロの存在そのものがシェールにとっては何かを思い起こさせるものだったのかもしれません。



「やっぱりそうなのか?」

→シェールがどうも面倒くさい存在であることはロドンの耳にも入っているようです。それにしても皆シェールがどう面倒くさいのかは明言したがりません。つまり、そういう意味で面倒くさいのです。何で明言しないかって? そりゃ、明言したくないですからね……。



「オルドの王妃様……?」

→オルド侵攻の際処刑されずにその後リィア軍により連れて行かれて行方がわかっていないようです。作中で出ている情報を整理すると、彼女はシェールの継母にあたるようですが何か彼について重要なことを知っているかもしれません。



「アルゲイオ家の使命とは?」

→セイフとセラスがシェールの元にいたのはこの「アルゲイオ家の使命」とやらがあるからという話ですが、これが具体的にどんな使命だったのか、そして上にいたはずの兄三人と父母は何やってたのかというのが具体的にわかるのは結構先になります。現時点では多分シェールを守るとかそういう奴なんだろうなと思っていてください。



《第3話》


「ちょっとシェールの情緒と行動がよくわからない……」

→一応彼は27歳となっていますが、ここまででわかるとおりまるで27歳の落ち着きは持っていません。そうかと思えば急に調理場で調理人に混じって完璧に朝食を作るなど、思いも寄らない行動を取ります。ついでに家事全般が得意というよくわからない設定が出てきました。これはシェールという存在を見ていく上では割と大事なことです。



「母親NG?」

→ティロにとっての閉所恐怖症並にシェールにとっての地雷が「母親」ということなのですが、一体何がどうすればそういうことになるのでしょう。何となく察しのついた人はいると思うのですが、これはシェールが絶対話したくないことなのでそれはそのうち……。



「補佐官」

→要は秘書です。シェールは基本的に事務能力は高く、反乱軍でも全体を見て判断をするなどしていたことから見通しを立てる能力はかなりあるようです。ただ、その能力を差し引いても上回る何らかの問題を抱えているためにオルド側は彼をリィアに押しつけました。シェールとしてはオルドに戻りたくないということでこれでいいと思われます。



「フォンティーアの読んだ手紙には何が書いてあったの?」

→セリオンからシェールの取り扱いについての注意事項、それと彼のある程度詳細な生い立ちが書いてあります。さっさとシェールの生い立ちを説明しろって話なんですが、一度始めるとかなり複雑なのでそのうち出てくる生い立ち説明回まで待っててください。生い立ちダイジェストだけで1パート超えそうなくらい複雑です。そしてその生い立ちはフォンティーアが声を上げて泣きたくなるくらいには悲惨だったようです。



《第4話》


「ええ、ティロ、休暇じゃなかったの……?」

→以降、これがこの話の根幹になってきます。ちなみにこの世界で違法薬物というのは存在しませんが、薬物に依存させて高値で取引させるという行為は存在します。取引が違法になるのも時間の問題でしょう。



「痛み止め」

→現実世界でいうとモルヒネに近い物質で、戦場でも兵士に配布されているような薬です。この世界の睡眠薬もアヘンに近い物質から作られているため、ティロは完全にそういう薬に依存していたことになります。懐旧編で全く語られない一般落ちの時代や積怨編で様子がおかしくなっている時は完全にそういう状態でした。ちなみに実際のアヘンやヘロインは身体的依存が激しく連続使用しないと身体が持たないらしいのですが、この世界の痛み止めは少しマイルドなので使用を止めても多少の焦燥感と不安くらいで済むみたいです。



「君、そういうの詳しいんだね」

→解説する人がいないと話が進まないから、というのは置いておいて、シェールもどうやらそういう薬と全く縁が無いわけではなさそうです。



「一家が失踪してトライト家の人は何も言わないの?」

→フォンティーアの憶測通り、リニア・トライトの仕出かしたことがあまりにも酷いために積極的に家族の行方を探そうという気になれていないというところがあります。積怨編で登場したトライト家本家やリニアの実家ではリニアの借金と詐欺行為を巡って、後始末に追われている上に世間体を非常に気にする両家では泥沼の争いが行われています。



「机の下の声は何?」

→普通に考えればシェールの幻聴なのですが、この声の正体がはっきりわかるのは結構先になると思います。ひとつだけ言えるのは、シェールにとってもティロの存在自体に胸糞悪いと思わせるような、何か強く心を掴まされるものがあるってことくらいです。


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