積怨編あらすじと解説文

○あらすじ


 上級騎士隊筆頭のゼノスによって上級騎士へ昇進したティロだったが、持ち前の剣の腕以外は卑屈で人と最大限関わらないように過ごし、特にゼノスを困らせていた。ゼノスはティロを何とかしようとするが、査察旅行中の背任容疑をかけられ除隊することになる。最後にティロの本気を引きだそうとするがそれでもティロは心を開かず、ゼノスは失意のうちにリィア軍を去る。


 ゼノスに次いで筆頭に就任したザミテス・トライトはティロを自分の息子の剣技の師として迎え入れ、少しでも他人と関わらせようとした。トライト家に通うことになったティロの様子はどんどんおかしくなっていく。


 ある夜河原でひとりでいたティロにライラが話しかけると、ティロは災禍の際姉と逃れるところをリィア兵に捕まり、暴行を受けた挙げ句生き埋めにされたことを告白する。そしてそのリィア兵こそがザミテスであり、彼の下で生きた心地がしていないことをライラに伝える。ライラに促され、ザミテスへ復讐することをティロは決意する。


 トライト家にセドナという女中として潜り込んだライラはザミテスの娘レリミアの世話係になる。ティロは何とか上級騎士を勤めながらザミテスへ復讐をするための準備として「副業」に精を出す。


 ティロはトライト家全員を抹殺するためにレリミアを旅行に誘い出す計画を立てる。紆余曲折あったが、ティロはクライオの反リィア組織へレリミアを誘拐していくことになる。ライラはティロの亡命を手助けし、レリミアを連れてクライオへ向かうティロを無事見送る。


〇積怨編リンク

https://kakuyomu.jp/works/16817330656813658108/episodes/16817330658730570509


○キャラ動向


ティロ(21~24)

 上級騎士へ昇進したけれども、卑屈で他人を一切寄せ付けない態度にゼノスは困っていました。しかしゼノスの除隊時には非常に悲しみ、トライト家に通うようになってますます精神的に追い詰められているようです。


 そして、ついに閉所恐怖症の理由が明かされます。災禍から逃れる途中に姉と共に暴漢に襲われ、姉共々穴に埋められたのですがティロはその際まだ息があり、実質生き埋めにされたというのが彼の原体験だそうです。ライラに過去を打ち明けてからかなり饒舌になり、前髪を切られてからいろいろ開き直ったようです。そして姉の形見を肌身離さず身につけ、姉について話をすると嬉しそうになるなど彼を理解する上で「姉」は必須の存在みたいです。


 更に今章で新たに「副業」の存在が明らかになりました。ティロにはいろいろ言えないことがたくさんありすぎるのですが、実はこの「副業」もそのひとつです。この「副業」に関してはライラも明言をしていない(もちろん彼女は何をしているかを知っています)ことから、かなり言えないことらしいです。具体的に何をやっていたのかは反乱後明らかになります。



ライラ(22~25)

 本当に反リィア組織を結束し始めたティロ曰くおっかない人。そしてティロの望みを叶えるためトライト家に潜入することまでする尽くし始めます。しかしティロとの関係は相変わらずよくわかりません。少なくとも明確な恋仲ではありません。


 積怨編の後半では主に開き直ったティロを徹底的にサポートする献身さを見せていますが、その理由も特に明かされていません。強いて言うなら「可哀想だから」だそうです。そしてレリミアやトライト家に対してもあまりいい感情を抱いていないのは、彼女の育ちがそうさせるのでしょう。



ゼノス(34)

 上級騎士隊筆頭でしたが、いろいろあって辞めることになりました。ちなみにエディア攻略の際は執行部でビスキ勤務だったため、作戦には参加していません。その後エディアの復興計画で数年エディアにいて、その後上級騎士試験に一発合格、実力でガチガチの叩き上げという流れです。



ラディオ

 上級騎士筆頭補佐の叩き上げ。ゼノスが去った後の上級騎士隊を支えます。筆頭職は筆頭を中心に筆頭補佐が1人~2人いて、筆頭補佐は主に管理職の仕事をします。



ザミテス

 いよいよ登場した、今作の仇です。特に第三話だけ読むと貴族的な偏見はありつつも特に何がどう悪い人なのかわからないようになっているのですが、ティロの言うことを信じるなら、相当酷い奴です。ただ何故彼がそんなことになっているのかという話になるとまだ材料は出そろっていないので、続報を待ちましょう。



ノチア

 トライト家の長男。士官学校(15歳から4年間通うことになっている)を卒業して執行部へ配属されたばかりのひよっ子。将来は父のように上級騎士になるんだ、みたいな感じが全然感じられないどころか半ば空気みたいになっています。



リニア

 ザミテスの妻でノチアとレリミアの母。夫であるザミテスとの関係は相当冷え切っている模様。そして頻繁に外出をするのですが、別に不倫しているわけではないです。婦人会の仕事が本当に忙しいみたいです。



レリミア

 トライト家の娘。休暇編の彼女視点ではわかりませんでしたが、実際の年齢より精神的にかなり幼いようです。何故彼女がこのように振る舞うのかは、トライト家の複雑な事情によるものですがそれが判明するのはだいぶ後になります。



○内容解説


《第1話》


「ティロのめちゃくちゃブレるキャラは何?」

→ゼノスを始めリィア軍では全体的に卑屈で小さくなってるティロですが、何故かライラにだけは多少心を開いています。更に一人称もブレブレで、リィア軍内では「僕」、河原では基本「俺」ですがライラにもたまに「僕」というときがあります。これは立場や相手で変えている以上に彼が根本的に情緒不安定であることが原因です。この情緒のブレも含めてのティロなので今のところ気にしないであげてください。



「反リィアと革命家の違いってそんなに大切?」

→簡単に言えばどっちもテロリストなんですが、反リィアは徹底的にダイア・ラコスを倒す一点であることに対して革命家は理想の国家(これは革命思想では禁句ですが)を樹立しようとしているところが大きな違いです。つまり革命家からすれば反リィアも敵です。下手なところで「新政府を樹立しましょう!」なんて言った日には粛正とカルト教育が待っていることでしょう。



「ティロは一体何に金を使っているの?」

→いろいろ遊び歩いているんじゃないですかね。ザミテスではありませんが、どこで何をしているかわかったものではないというのは全くもってその通りです。ちなみにライラは彼が何に金をつぎ込んでいるのかは知っているようです。



「ティロは試合中本当にわざと手を抜いたの?」

→本人は否定していますが、ゼノスは相手が確実にティロより格下であることを理解しています。つまりわざと手を抜いたとしか言いようがない状況です。そもそも三徹してリィアの五指に入るゼノスと互角に戦える時点で並の上級騎士が対応できるものじゃありません。更にティロはさっさと試合を敗退してどこかへ行ったようなのですが、それえも何をしに行ったのかは今後明らかになることです。



「ティロは自分も災禍孤児って言わないの?」

→何故か災禍孤児であることを自分からは言いません。では何でライラやシェールには「自分は災禍孤児だ」と打ち明けたのでしょう。ライラはともかく、ほぼ面識のないシェールにも打ち明けるのは不自然です。ちなみに作中あるとおり、災禍孤児でキアン姓として軍務に就くのはそれほど不自然な話ではありません。更に一応災禍孤児も救済措置があったはずなんですけど、それならティロはわざわざ路上で一体何をやっていたんでしょう?



《第2話》


「ゼノスはどうして辞職させられたの? あっさり引き下がったのは何故?」

→お話の都合……もとい、ちゃんとその裏があります。ラディオとの会話からはある程度わかるようになっているのですが、そこはまだ疑惑と言うことにしておいてください。


「ティロは宿舎の裏で何をしていたの?」

→実はこれが序章に繋がります。彼は苔だの草だの生えたじめじめしている建物の裏でどうも頻繁に過ごしていたらしいことが判明します。休暇編でも建物の裏の茂みに入っていましたし、懐旧編でもやはり河原の茂みの中で寝起きしているような話がありました。つまり意図的に屋外で寝起きをすることにこだわっているようです。ゼノスは徹底的に人目を避けた結果であると思っていますが、さてどうなんでしょう?



「ゼノスの上級騎士隊からティロを引き剥がす算段とは?」

→これは反乱後に明らかになります。割と最終手段で取り返しがつかないものなので、ゼノスもかなり慎重になっていました。ティロの置かれている状況を俯瞰すると賢明な人なら何となくわかると思います。



《第3話》


「何故ティロはゼノスの剣筋を真似たの?」

→ここで彼が一体何を考えていたのかわかるのは大分先になります。第3話は全体的にザミテスがティロをどう見ていたのかという話なのですが、ティロ側の事情がわかると全ての意味が一気に変わってきます。現時点でティロはゼノスを追い落としたザミテスを恨んでいるのでは、と上級騎士内では思われています。それ以上の理由があるのですが、それはこの後です。



「レリミアはティロの何が気に入ったの?」

→ザミテスは理解できなかったようですが、レリミアは単に遊び相手が欲しかっただけのようです。この辺のレリミアについては後ほど登場します。



「トライト家の夫婦関係はこれでいいの……?」

→もちろん完全に破綻しています。現在は世間体とそれぞれの実家の資産だけで共に暮らしているようなものです。それをノチアとレリミアがわかっているのかと言えば……その辺りはザミテス視点からは明らかになるものではありません。



「何故ティロは無言で逃げたの?」

→地下が苦手といっても、誰にも何も言わずに姿を消すほど嫌なようです。そもそもどこに姿を消したのでしょうか。



「ザミテスがティロの顔を見たことがあるというのは?」

→それはやっぱり、会ったことがあるからですね。どこで会ったのかは、この後わかります。



《第4話》


「復讐の理由はわかった。しかし家族を巻き込む必要は?」

→これは本作品通しての謎になってきます。「家族含め抹殺してやる」というのはわからないでもないですが、後々ティロのやったことを知った人全員が「え、家族は関係なくない?」となります。しかし、ティロには家族も含めて抹殺する明確な深い理由があるようです。



「指輪の話、なんかおかしくない?」

→これに気がついた人、なかなか勘が鋭いです。そう、よく考えると変な部分があるんです。後ほど言及がありますので、それまで腑に落ちないままでいてください。



《第5話》


「副業って何してるの!?」

→ティロの副業に関しては今後のメインテーマになります。一体何をしているのかをこの段階で推理するのはかなり難しいのですが、一応今までの話では全く触れていないわけでもありません。副業については反乱後に明らかになります。



「この前の査察旅行って、行ったのはゼノスだけじゃなかったの?」

→リニアも同じようなことを言っていました。今回の査察旅行でも同行者が存在することから、どうやらこの前のゼノスの査察旅行にザミテスは同行していたようですね。



「されたことをやりかえす、とは……」

→そもそも、ティロがザミテスにされたことで明言しているのが「生き埋めにされたこと」だけです。他にもいろいろ酷いことをされているのですが、一体何をされたのかを話すことが出来ませんでした。大体の想像はつくと思うのですが、これは「話さない」ではなく「話せない」です。

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