第25話 お別れ

 修道院へは体感にして10分くらいでついた。あのスピードは時速だとどれくらいの速さだったんだろう。

 しかも修道院の正門にぴたりと停車したのである。


「ありがとうございました」


 マリーと私は馬車の主にお礼を言い、料金も支払って馬車から降りた。私より一足先にユナとシューカがケールの荷物を降ろしてくれていた。

 ちなみにこの馬車に乗って食堂まで帰るので、ちょっとだけここで待機してもらう事になる。


「すみません。この子を修道院へ預けに来ました」


 マリーが正門にいたシスターに、そう真面目に話しかける。更にはシューカが修道院宛に手紙を送っているとも明かした。シスターは担当の者に取り次ぐと言ってその場から離れると、約3分後に担当らしきシスターが小走りでやってきた。

 このシスターは、大体10代後半くらいだろうか。背が高く華奢な見た目をしている。


「彼女がケールですか?」

「お手紙お送りしましたシューカと申します。はい、そうです」

「ケールです。よろしくお願いしますー」

「じゃあ、ケール。こちらで頑張りましょう。最後に彼女達へ何か言伝があったら言ってください」


 シスターがケールに促しているのは、最後の挨拶だろうなと言うのはすぐに理解できた。ケールも察知したのか、猫背気味だった背中をすっと真っすぐにさせる。


「今までありがとうございました。お世話になりました」


 ケールがぺこりと私達に向けて長い長いお辞儀をした。私達は彼女に他向けの言葉を花束のように差出し、お別れとなった。

 私達が馬車に乗り込む時も、ケールは私達を笑顔でじっと見つめていてくれた。


(なんだか寂しいな…)


 出会いあれば別れもある。彼女の幸せを願うばかりだ。


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