第17話 甘くて濃厚なナポリタン

 12時を迎え、店内はほぼ満席の状態となる。私とユナとマリーの動きが更にせわしなくなっていく。


「こんにちはー」


 すると1人の若い男性が入店してきた。彼もまた帽子にジーンズとダンジョンの探検家のような、そんな見た目をしている。彼を唯一開いているカウンターの席へ案内すると、マリーが厨房から直にお冷を渡してくれた。


「ご注文は何になさいますか?」


 と、私が聞くと男性はナポリタンと答えた。


「あのナポリタン好きなんだよねえ」


 男性の笑顔を見て、マリーは厨房からありがとうございます。とお礼を言った。

 その間にも食堂は慌ただしく駈け廻っていく。


「真夜、から揚げ定食持ってって!」

「了解です!」

「ユナ!テーブル席のナポリタン出来たよー!」

「はいはーい」


 そしてあの男性の元にも、ナポリタンが届いた。彼はカウンター席にいたのでマリーが厨房から直に渡したのだった。


「お待たせしました。ナポリタンです」

「はーい」


 男性は銀皿に盛られたナポリタンに目を輝かせながら、お箸で麺を掴んですすっていく。


「うーん、美味しい!それに疲れが吹き飛んでく!」


 疲れが吹き飛んだのは、マリーがかけた魔術のおかげだろう。


「この濃厚で甘いケチャップソースに、ソーセージが良い味出してるんだよねえ~」


 男性は満足そうにナポリタンを食べ終える。上機嫌で会計を済ませると、冥界廊のある方角へと早足で消えていった。


「真夜、あの方ナポリタンが好きでよく注文してくれるの」


 と厨房からマリーが教えてくれた。


「何か作る時に隠し味とかしてるんですか?」

「真夜気づいた?でもそれは秘密」


 とマリーはいたずらをした子供っぽい笑みを浮かべたのだった。

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