第11話 とりあえず泊まりましょう

「そうですよね…」


 一同、沈黙が流れる。私も実際ケールをどうすべきか、良い案が見つからないでいた。


(一応一晩泊めてから考えるとか…?)

「あの、良かったらケールここに泊まります…?」


 私が放ったその言葉に、私以外の全員が一斉に私の方を向いた。私の胸がどきっと跳ねる。


「よし、まずはそうしましょう」


 マリーのその言葉に、私とケールはほっと息を吐いたのだった。


「ここで泊まれるの?」

「うん、そうだよー」

「でも、その後は…?」


 シューカの言葉に、またも沈黙が流れる。確かにここで泊まるという事はその場しのぎにしかならない。


「とりあえずはレンジャーの基地に報告しときましょうか」

「でも、お屋敷にばれるんじゃない?」

「ああ、そうですよね…」

「ここで働くとなっても、ケールの顔がばれる可能性は十分にあるからね…難しい所だわ」


 頭を悩ませるが、ベストな案が浮かんで来ない。


「あの、保護してくれそうな場所と言うか、そういう施設とかは…?」


 と、聞いてみたが、ここからシスターらがいる教会まではかなり距離があるのだという。

 しかしマリーやユナ、シューカから、その案が一番良いのではないかという感想は貰ったのだった。


「教会、行く?」

「それしかないわね…」

「次の閉店日いつだっけ」

「再来週」

「それまではうちにいる?」


 と、ユナがケールに聞くと、うんと大きく頷いたのだった。


「そうね、それまではこちらにいましょう」

「わかりました。私も時折こちらへ覗きに来ます」


 シューカがそう言うと、ケールはにこっと笑ったのだった。

 こうして、しばらくの間ケールとの同居生活が始まった。ケールは私が住まう部屋の隣にある小さな空部屋に寝泊まりする事になった。

 そしてシューカもこの日は一晩泊まる事となり、ユナは近くにある自宅へと戻っていった。


「私達が働いている間、これでも読む?」


 マリーが手渡したのは魔術の教科書である。表紙は辞書っぽいが、中に書かれてある文字は思ったより大きく、小学校高学年時代の教科書を想起させる。


「読んでみる…」


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