第10話 この先どうする?

「あ…」


 かすかながら、魔女の少女は声を出す事が出来た。


「声が出るようになってるみたいです…!」


 女性がすぐにマリーを呼んだ。どうやらマリーの魔術が効き始めているようだ。


「あ…ああ…」

「あなた、名前は言える?」

「えと、ケール…」

「ケールと言うのね。喉の調子は?」

「痛い…」


 どうやらケールは自身の喉が腫れて痛み、声が出なかったようだ。ごはんと味噌汁を完食したケールはまだ、おなかがすいていると言った仕草を見せる。


「おかわり食べる?それか別のごはん食べる?」

「おかわり、ほしい」

「じゃあ、もっと喉の痛みを和らげる魔術、強力なのかけてお出しするからね」


 そう言ったマリーはケールからお茶碗とお椀を受け取ると、ささっとおかわりを準備してケールに手渡す。

 ケールは食べ進めていくうちに、喉の痛みがかなり引いていったようで、口数も増した。

 彼女の喉が楽になった所で、彼女の経緯について聞く事になった。


「何かあったの?」

「お屋敷から…逃げて来た…」

「お屋敷?」

「私、そこの召使で…そしたら、間違えて冥界廊に入っちゃって…ドラゴンに追いかけられたりして…」


 彼女の話をまとめると、ケールは伯爵家の屋敷で召使として働いていたがホームシックになり逃げだしたのだという。

 しかし道に迷い、魔術も十分に学んではいなかったのも災いし、このような事態になったのだそうだ。


「そうなのね…怖かったでしょう?」

「うん、怖かった」

「大丈夫、私達がいるから怖くないわよ」


 マリーが優しくケールの頭を撫でた。ケールはここでようやく安心しきった笑みを浮かべる。


「あ、ところであなたのお名前も聞いてもいいかしら?」

「シューカです。冥界廊とその近くの森でレンジャーをしています」

「成程、わかりました」

「いきなりですけど、ケールの今後どうしますか?」


 シューカの神妙な面持ちに、全員口を真一文字に閉じたのだった。



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