第9話 閉店ギリギリ駆け込み注文と魔女の少女

 現在15時45分。16時に食堂マギアは閉店する。同じく16時に冥界廊も封鎖する為、閉店間際はあまり客は来ない。

 ちなみにマリーは厨房に立ちながら昼ご飯を食べていたようで、それゆえか休憩はあまり取らないスタイルなのだそうだ。


「そろそろ今日も終わりかー」

「真夜、そろそろ店じまいの準備しようか」


 マリーに促され、閉店と書かれた札を持ってこようとした時、扉が開く。


「すみません!まだやってますか?」


 現れたのは、1人の女性と1人の少女だった。少女はお腹に手を押さえている。


「やってますけど…」

「良かった、この子腹ペコで…何かいいものありますか?」

「えーと…」

 

 少女はみすぼらしいグレーの無地のワンピースを着ている。女性が言うには冥界廊の近くの森で行き倒れていた所を見つけたという。


「私に見せて」


 マリーが厨房からやってきて、少女の容態を確認する。


「この子、魔女ね。首に紋様がある」

「魔女…!」

「あなた、喋れる?」


 マリーが優しく少女に問うた。しかし少女は首を横に振る。


「声が出ない感じ?」


 と、マリーが尋ねると今度は首を縦に振った。


「そうか…わかった!とりあえずごはん作るからちょっと待ってて!」


 マリーが厨房へ急いで向かうと、厨房のごはんを茶碗によそい、味噌汁をお椀に次ぐ。そしてそれらに魔術をかけた。


「とりあえずお腹がびっくりしたらいけないから、まずはごはんに味噌汁をかけてちびちびと食べて」


 少女はマリーに言われた通りに食べ進める。すると目を嬉しそうに輝かせた。


「美味しい?」

「(大きく頷く)」


 そして16時が来た。ユナが閉店の看板を出し、外の照明を落とす。


「閉店でーす」

「えっもう?」


 女性が驚いた表情で、ユナの方を見た。それに気づいたマリーは、厨房から焦らなくても良いと声をかける。


「ゆっくりでいいので、大丈夫ですよ」

「だって、良かったね」


 少女はゆっくりと味を噛みしめながら、ごはんと味噌汁を味わっていく。

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