第17話
「俺が、バカって言っているヤツの名は"
「最強って!? ムクロより強いの?」
「そうなるな。認めたくはないけど」
「認めたくない?」
フェルネスはその言葉に疑問をもった。
「認めたくないのはなんで?」
「いーやー、あいつ自由奔放すぎるんだよ! みんなに相談なく、なんの準備もせずモンスター討伐にいかされて死にかけたり、勝手にクエストを受けたりと、そんなのが最強なのが認めたくないんだよ! 正直メンバーのほとんどがあのバカを嫌ってたからな!」
「そんなに、何ですか?」
フェルネスにはムクロの口調は、イラだちとも呆れとも聞き取れた。
「全く困りの種だよ。けど······あのバカの強さは、みんなは認めてたし結局ところ討伐やクエストは成功してたしな······それに──」
『主君』
『ノワールか?』
突然、ノワールが〈念話〉を使って、ムクロに話しかけてきた。
ノワールが使ってきたのは【召喚士】のスキル。〈召喚術:念話〉は本来、術者が遠くにいる従魔モンスターに遠隔で指示をさせるスキルだが、常に〈念話〉を接続状態であれば従魔モンスター側でも会話が可能だと気付き、ムクロはすぐに連絡できるようにノワールに〈念話〉を接続状態にしていた。
『はい、ノワールです。見つけました。ゴブリンの集落を確認。数は······目視できる数でもおよそ50体』
『わかった。間違っても攻撃はするなよ』
『承知しました。でしたら、今から位置を──』
『そこは問題ない。ノワールは上空で待機、〈念話〉は一度切る』
『承知しました』
ムクロはノワールと繋がっていた〈念話〉を切った。
「ノワールから連絡がきた。ゴブリンの集落を見つけたそうだ。気を引き締めていこう!」
「フン、気を引き締めるのもなにも、ゴブリン程度あれば我が本気を出さずに一瞬で終わる」
センは余裕を見せた口調で喋りだした。
「セン様、余裕は時に命取りですよ」
「ちっ、わかってる」
シグマに指摘されたセンは少し嫌な顔をした。
「確かにセンの言い分はわかる。でもあくまで、フェルネスのレベル上げのためだからな、後は到着してからだ――〈従魔探知〉」
ムクロがスキルを唱えた瞬間。目の前に円状のレーダーのようなのが現れ、中心には点が3つと離れたところに1つの点が表示されていた。
ムクロが使用スキルは〈召喚術:従魔探知〉は簡単いえば自身の従魔モンスターの位置がわかるスキルであり、SPを消費することで探知の距離が長くなる。
ん~そこまで離れてはないか、この距離ならすぐに着くな。
「よしっ! ノワールの位置がわかった。フェルネスは振り落とされないようにつかまって」
「は、はい」
フェルネスは後ろから抱きつくようにムクロにつかまった。
「クロ、このまま真っ直ぐ頼む」
「御意」
ムクロが指示をだすと、クロはまっすぐに走りだしシグマとセンも一緒に走り出した。
──数分後。
移動をしながら〈従魔探知〉で、ノワールを位置を確認しながら数分がたっていた。
「さて、探知ではそろそろのはずなんだが──」
「主君!」
ムクロが上を見上げると、上空で黒い翼を広げて飛行しているノワールが目の前に降りてきた。
「主君。お待ちしておりました」
「待たせたね。それで動きは?」
「はい。ゴブリンの動きには変化はありませんが、どうや、集落の周りを巡回しているのが、何匹かいます」
集落の周りを巡回となると······どうやら、はずれを引いたようだ。
「おそらくだが、その集落にはゴブリンキングがいる」
「ゴブリンキングですか?」
ゴブリンキング。ゴブリンの上位種であるホブゴブリンをも凌ぎ、高い知能と戦闘能力、統率力を持つゴブリンの中でも最上位のモンスター。
「知能が低いゴブリンは集落の周りを巡回はしない。となるとより上位で知能が高いゴブリンキングいる可能性がある」
ゴブリンが下級で高くてもレベル10あたりに対して、ゴブリンキングが確か、中級でレベル15ぐらいだったはずだけど、下級と中級には大きな差がある。種類にも寄るが中級でレベル15なら、レベル20になりたてのプレイヤーが10人でかかってようやく倒せるってレベル、フェルネスには荷が重すぎたか、その時は俺が何とかすれば大丈夫か。
「少々問題が発生するかもしれないが、何とか対処しよう。とにかく行こう。ノワール、案内を頼む」
「承知しました。こちらです」
ムクロ、ノワールにゴブリンの集落を案内させた。しばらくするといくつものある横穴の周りをうろうろとしているゴブリンたちを見つけ、ムクロたちは離れてた茂みに隠れた。
ん~集落というより、巣穴だな……確かに巡回している。間違ない、ゴブリンキングがいるな。
「イカガシマスカ? 主殿」
「ん~、作戦ほどではないけど、まずセン、シグマ、ノワールがゴブリンたちを何匹か、俺たちの方に倒しながら誘導して欲しい。ただしスキルや魔法を使うのはなし、あくまでフェルネスに実戦経験とレベルアップを積ませるだからな」
「質問よろしいでしょうか?」
シグマが珍しくムクロに質問をしてきた。
「どうした?」
「
「そうかもしれないな、だからこれを使う」
ムクロは【収集の指輪】から、指輪と腕輪2つを取り出した。
「指輪と腕輪2つを使う。まず腕輪を、はいフェルネス」
ムクロは2つの腕輪をフェルネスに渡した。
「ムクロ、この腕輪は?」
「それは〈獲得経験値倍加〉を持つ【成長の腕輪】と〈必要経験値半減〉を持つ【熟練の腕輪】」
「こんなのまであるなんて、本当に凄いですね」
「へへ、驚くのはまだ早いよ。この指輪は【共有の指輪】って言ってね〈経験値共有〉を持つから、パーティーが直接戦闘に参加しなくても、経験値を獲得できる」
フェルネスはそれを聞いて、少し驚いたような顔をした。
フェルネス多分すごく驚いている。まっ当然だろうな、元々その三つのアイテムは『初心者らくらくセット』って言う課金で手に入れたものだし、しかもめっちゃ高いからしばらく生活は、節約せざるをえなかったからな。
ムクロは昔の苦い思い出がふと浮かび上がったが、すぐ気持ちが切り替わった。
「とりあえず準備をしようか」
「は、はい」
ムクロたちは戦闘の準備にとりかかるが、そこまで時間はかからなかった。
「フェルネス、準備はいい? 落ち着いて冷静に戦うことが一番大切だ」
「は、はい!」
フェルネスは覚悟を決めて手に持つ短杖に力を入れた。
「よし······セン! シグマ! ノワール! 戦闘開始!」
「おう!」「かしこまりました!」「承知しました!」
ムクロの命令と共に、セン、シグマ、ノワールが一斉に飛び出した。
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